月報「わっぱ」 2021年3月(No.472)
山 名 考( 三国境の山の名前 )
皆さまご存知の通り、岐阜県は内陸県で7つの県に囲まれています。昔の国名で数えると、愛知県は尾張国と三河国に分かれていましたから、下記の8国に囲まれていました。
- 信濃国(長野県)
- 三河国(愛知県)
- 尾張国(愛知県)
- 伊勢国(三重県)
- 近江国(滋賀県)
- 越前国(福井県)
- 加賀国(石川県)
- 越中国(富山県)
また、岐阜県自体も美濃国と飛騨国に分かれていましたから、岐阜県境には三国境となるポイントが10個所あります。
北から時計回りに見ていくと以下の通りです。
- 飛騨、越中、信濃、境 三俣蓮華岳(2841m)
- 飛騨、美濃、信濃、境 三国山(1611m)
- 美濃、信濃、三河、境 三国山(1162m)
- 美濃、三河、尾張、境 三国山(701m)
- 美濃、尾張、伊勢、境 長良川
- 美濃、伊勢、近江、境 三国岳(894m)
- 美濃、近江、越前、境 三国岳(1209m)
- 美濃、飛騨、越前、境 銚子ヶ峰の北(1784m)
- 飛騨、越前、加賀、境 三ノ峰の南(2095m)
- 飛騨、加賀、越中、境 笈ヶ岳(1841m)
皆さまお気づきだと思いますが、10個所のうち半分の5個所が三国山または三国岳です。それ以外では、1は北アルプスの最深部にあり、奥山見廻りはされていましたが、一般庶民の知る山ではなかったはずです。5は川の中で名前のつけようがありません。8、9は石徹白からの白山禅定道が通っており、人の往来は激しかったようですが、目立ったピークでなく、すぐ横に三ノ峰、銚子ヶ峰という名前を持つピークがあるので、名前を付ける必要がなかったのでしょう。そして10は修行道にちなんだ立派な名前がついています。つまり、普通に命名できる三国境は全て三国山(岳)になっているのです。
同様に三国山、三国岳の名前は全国にあり、コンサイス日本山名辞典には30山載っていました。そうなると、昔の人の山の名前の付け方はいかにも安直だな、と思ってしまいますが、逆に領国境を如何に重要視したかということが伺えると思います。
(堀 義博)
*お詫びと訂正
先月(2021年3月(No.472))(上記)の「山名考(三国境の山の名前)」の中で清水克宏氏より2点について指摘がありました。私の浅学をお詫びし、以下のように訂正します。
8.美濃、飛騨、越前、境
「石徹白は1958年(昭和33年)福井県から岐阜県白鳥町に合併されたので、江戸期の三国境は大日ヶ岳で、この山の別名が三国山だったのではないかと思います。(清水氏)」 その通りです。
9. 飛騨、越前、加賀、境
清水氏によると、白山の領有権をめぐっては越前、加賀、美濃馬場で中世から江戸時代まで争われており、越前と加賀の境界は度々変遷していたとのことです。幕府の正式な国絵図(天保国絵図)では、白山の北が越前と加賀の国境となっています。現在の境界が確定したのは明治5年とのことです。境界がはっきりしませんから、名前は付けられませんね。 という事で、10個所の三国境の内あいまいだった2か所については、以上のようないきさつがあったのです。
(堀 義博)
山 名 考
山 名 考(三国境の山の名前) ご覧のページです。
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