大垣山岳協会

山 名 考( 宗教(仏教)にちなんだ山名Ⅲ )

TOPICS・随想・コラム

月報「わっぱ」 2022年4月(No.485)

山 名 考 ( 宗教(仏教)にちなんだ山名Ⅲ )

 日蓮宗のお題目は「南無妙法蓮華経」ですから、「妙法」も「蓮華」も仏教用語です。「妙法」は県内では谷汲の妙法ヶ岳(667m)と白山山系の妙法山(1776m)がありますが、全国ではほかに2山だけです。「蓮華」は北アルプスで三俣蓮華岳(2841m)と後立山に蓮華岳(2799m)、小蓮華岳(2763m)があります。又、白馬岳(2932m)は「大蓮華岳」とも呼ばれています。ほかにはあまりなく、蓮華は高貴なものですから白く輝く高い山に名付けられたのだろうと思います。

 「経」の付く山は福井の経ヶ岳(1625m)や三重の経が峰(819m)など全国で12山ありますが、経典が埋められたことから名付けられている場合が多いようです。

 一方、浄土真宗のお題目は「南無阿弥陀仏」です。春日の槍ヶ先の北に六字ヶ峰(964m)がありますが、この六字とは南無阿弥陀仏のことです。

 お寺の山門の両側に立っている仁王様は金剛力士と呼ばれます。奈良の金剛山(1125m)や富山の金剛堂山(1638m)はそこから来ており、他に全国で9山あります。

 明治に入り分離されましたが、江戸時代まで1000年以上、日本では神仏混淆(習合)の状態が続きました。七福神の一つ毘沙門天は仏教の守護神帝釈天を守る四天王の一人の多聞天のことで、同じく七福神の一つ布袋尊は弥勒菩薩の化身とされます。

 それらにちなんだ名前では、七福神の恵比寿天は乗鞍岳の一峰、恵比寿岳(2831m)。毘沙門天は白鳥の毘沙門岳(1385m)のほか全国で4山。大黒天は山県市の大黒山(524m)のほか全国で13山。弁財天は弁天山が全国で3山。帝釈天は栃木福島県境の帝釈山脈の主峰帝釈山(2060m)など全国で3山。

 このように見ていくと、全国的にも少ない弥勒、明王、如来、妙法、恵比寿、毘沙門などの付いた山が岐阜県にあります。山岳宗教に縁の薄い岐阜県ですが、仏教にちなんだ名前の山が意外に多いように思われます。

(続く)

(堀 義博)


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