月報「わっぱ」 2012年4月(No.365)
山書巡歴 ① 登山と読書
今回からしばらく山岳書の紹介をしようと思って、その準備を始めた。そうこうしているうちに、日本山岳会の月報『山』で大森久雄さんが「肉体労働ではない山登り」を提案されていた。一読してこれを先に紹介しておかねばならないと思い、急きょ変更することにした。まずはご意見を伺おう。
「本を読んでもらうにはどうすればいいのか。山に限らず図書の世界では永遠の課題だが、馬を水辺につれてゆくことはできても水を飲ませることはできない。それと同じで、図書の案内・紹介をしても、本に興味を持たず、本のない人生、本のない山登りでなんらの痛痒を感じない方には意味をなさない」。すなわち、山登りはそこに精神の働き、裏付けがなければただの肉体労働である。「山登りを単なる肉体労働で終わらせないためには、書くことであり読むことである」とサン・テクジュペリは述べている。以上が筆者の提案の大意だが、ご理解いただけたものと思うがどうだろう。
(Y・T)
- 大森久雄 日本山岳会会員 『新日本山岳誌』副編集長 『本のある旅』ほか著書多数
- サン・テクジュペリ 仏の小説家にして冒険家。『人間の土地』『星の王子さま』ほか著書多数。第一次大戦中に飛行機事故で戦死。
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