大垣山岳協会

白山美濃禅定道 石徹白から室堂往復 2019.04.27-30

白山

【 個人山行 】 白山美濃禅定道 丹生 統司

  • 日程:2019年4月27日~30日
  • 行程:後述
  • 参加者:L. 丹生統、清水克、後藤正

 白山は何度か訪れているが40年以上もご無沙汰している。若い駆け出し時代に春山合宿で白山集中登山が実行されたが私は三方崩山からであった。石徹白からの美濃禅定道のリーダーは尊敬すべき方でその下で薫陶を受けたかったがメンバーに漏れて悔しい思いをした記憶がある。その後、会の春合宿は岩登りが主体となり白山から心は離れ夏に大倉尾根の日帰りで何度か訪れた程度である。

老いて雪景色を楽しむ山行が主体となると近年の降雪量不足は白山への憧憬を深めた。若い時に行けなかった美濃禅定道を思い立ち昨季計画したが季節外れの猛吹雪に別山を越えたチブリ尾根の分岐で追い返された。古希を迎えた今季はラストチャンスと言い聞かせゴールデンウイークの前半に昨年メンバーを募ってリベンジをしてきた。そして昨年の撤退が正鵠を得た判断だったと改めて認識できた山行でもあった。以下写真報告である 。

<ルート図>

白山美濃禅定道報告往路

<1日目>
4月27日(土)曇り後雪  登山口6:30 大杉6:40 神鳩宮避難小屋9:00 銚子ヶ峰10:34 一の峰11:50 二の峰12:20 三の峰避難小屋13:45

これから往復38㎞の3泊4日の旅の始まり、温度は低く小雪が舞い始めた。今日は三の峰避難小屋迄。

やはり大杉、幹回り13mと1800年の歴史を感じさせる。上在所の中居神社のモノより3倍はあろう。神鳩宮避難小屋、昨年は丸太の腰掛けが出ていたが雪に埋もれていた。ここから本格的な雪山登山でベタベタの降雪で雨具を着けて出発した。三日目の夜は此処まで帰って来て宿泊出来れば大成功だが。

銚子ヶ峰山頂、昨年は標柱や方位盤、三角点が出ていたが今季は足下の雪の中で残雪量が圧倒的に多い。

三の峰の登りは急傾斜で昨年出ていた岩は雪で覆われおり直登後は左側の藪の際を目当てに登った。天候も昨年を思わせる降雪だが風は弱く視界も昨年と比べればよく見える。今日の宿泊地三の峰避難小屋、直ぐに酒盛りが始まったが私は缶ビール1本、ウィスキー350㎖しか持ち込まず3泊持つのか心配である。今夜のカッちゃんシェフのメニューは肉たっぷりの「すき焼き」各自も「つまみ類は」豊富で酒が進むごとに会話も弾んだ。ウィスキーは底が見えるほどに減り久方ぶりにK2の秘話も語った。盛り上がって歌を披露すると約束したが眠ってしまい反故にした次回こそ。

<2日目>
4月28日(日)晴れ  三の峰避難小屋7:06 別山9:37 チブリ尾根分岐10:09 南竜ケ馬場13:17 室堂15:30~16:46 御前峰17:02

昨年は猛吹雪の中を出立したが今日の天気は上々、一年間の思いが通じた様だ。本日は別山、大屏風を越えて南竜ヶ馬場を経て室堂の避難小屋までの行程である。これから向かう別山は昨日の雪で一層白く、その奥に白山の連邦群が北に連なって見えた。

別山の肩が落ちた北にこれから向かう白山連峰群、一番手前の御前峰の下あたりが宿泊地室堂平だ。

昨年は猛吹雪の中を盲目状態で石川県側の藪や樹木を当てに登った。視界良好のありがたさを実感した。

振り返れば三の峰の後方に赤兎と大長山、その後方に経ヶ岳。銀杏峯・部子山、その左は荒島岳、更に後方に能郷白山が見え屏風山は黒いピラミッドに見えた。

別山山頂到着、昨年は吹雪の中で写真撮影も難儀したが今日は白山が近くに見えて楽勝に見えた。この頃はまだゆとりがあったが、トレースのない尾根はルートを捜しながらで近くに見えても遠かった。

奥三方岳、三方崩山の東に御岳山から乗鞍、穂高から北アルプスが白い帯となって北に連なっていた。特徴的な薬師岳や立山と並んで剱岳のピラミダルな山容が確認できた。昨年この標柱まで辿り着いたが風雪に敗退を余儀なくされ避難小屋に逃げ帰った。石川側から吹きぬける強風がザックの肩ヒモをあおり、それが頬を何度も打ったあの痛みは今も忘れない。感慨が蘇った。

御舎利山でチブリ尾根から登って来た人と予期せぬ遭遇にビックリ、室堂周辺以外では今山行中初めて人に会った。御舎利山からは大屏風と呼ばれる難路、昨年の猛吹雪、視界不良の中では目標物の樹木もなく片側はスッパリと切れ落ちており撤退は懸命だった。

下は清水克ちゃん撮影で私のお気に入り1枚、提供をお願いした。先頭は私、次は後藤正くん。

尾根の上に虹「彩雲」という現象、我々を祝福しているかのようで奇麗だった。ついている感がした。

2276mPから70mの下降、これも視界が良好だからルート選択が容易だが昨年の状態ならアウトだった。雪庇は大体落ちていたが所々に油断できないのが残っていた。さすが豪雪地帯、美濃とは比較にならぬ。

怖いもの見たさにもっと近づき撮影したいが「寄らば落ちるぞ」雪庇の踏み抜きは多い、遠巻きに通過。

どうやら雪庇帯はこれで終わったようで後方を振り返る。しかし復路にもう一度、天候を祈るしかない。油坂の頭2256mから夏道は南竜ヶ馬場に向けて谷へ下るが下部100mの傾斜が強い。ここはⅢ等三角点・山馬谷2244mの頭(写真の右橋山)から南竜ヶ馬場に降りるが懸命と判断して尾根を北進した。

山馬谷山頂近くで眼下の赤い屋根の南竜山荘方向からの足跡を見つけた。駆け下れば南竜ヶ馬場だ。南竜ヶ馬場の避難小屋は雪が吹き込んでおり使用されていなかった。スキーヤーらしき人影を上から見たのだが足跡のみで人には会えなかった。室堂へはこの山荘裏の尾根を直登することに決めていた。

山馬谷の頭から見て最短で室堂平に着くと判断選択した直登尾根だったが、大倉尾根との合流が近くなってハイ松帯に遮られた。ハイ松の幹をアイゼンで踏んで踏み抜き防止を図り藪漕ぎして谷筋の雪原に逃げた。大倉尾根から室堂へ続く雪原まで来るとヘトヘトで座り込み別山を振り返った。

室堂では除雪の真最中、営業は5月1日からと知っていたが清水克ちゃんを交渉委員に指名してビールの購入交渉をしたがNOだった。荷揚げはされていたのだが商売気がない。

避難小屋には結構な人が居た。我々は場所の確保をすると長めの休憩後にカメラのみ持って空身で御前峰を目指した。雪は緩んでいたし危険個所もないのでアイゼン、ピッケルは置いてストックで行った。

室堂の南に別山が雄大で今日の長い行程を改めて振り返り振り返りしながら御前峰の高見を目指した。遠くに日本海を眺めると海面が太陽を反射して光っていた。今日は彩雲も見たしいい日だった。

重荷に喘いで完登した美濃禅定道、思い入れのある山頂だが写真撮影を終えると私と後藤正君はさっさと下山。清水克ちゃんは山座同定に居残り暫く降りてこなかった。毎度彼の勉強熱心さに敬服する。

2階の一角を占有して飲みながら食当、本日夜のメニューは「カレーライス」と「キュウリとチキンサラダ」。本日は沢山の方たちと同居だが他のグループと親しく会話をしたりすることはなかった。勝手に空いたスペースを占有した一画で控えめにカップの酒を傾け美濃禅定道往路完登の乾杯をした。

天候に恵まれて美濃禅定道往路は終えた。素晴らしい景色を3人で独占し大満足の往路だった。復路も晴天であって欲しいが下り坂の予報を入手した。太陽は出ずともせめて昨年のような視界不良は勘弁してほしい。晴天を祈り早めにシュラフに潜った。

白山美濃禅定道報告復路

<3日目>
4月29日(月)晴れのち曇りその後雨  室堂避難小屋6:27 南竜ヶ馬場7:05 山馬谷頭2244m7:53 チブリ尾根分岐10:28 別山10:42 三の峰避難小屋12:28~13:30 二の峰14:06 一の峰14:40 銚子ヶ峰15:55 神鳩ノ宮避難小屋16:48

 小屋の中は2時頃から炊事や出立の準備でガサゴソ音がしていた。我々は4時起床で6時発の予定だったが30分遅れて小屋を後にした。ルートは弥陀ヶ原を通って南竜ヶ馬場に降りると決めていた。踏み跡は多くスキーヤーのシュプールもありそれを単純に追った。気がかりは三の峰から雲が湧いて別山の山頂方向から東に流れていた。明らかに天候は下り坂で強風が心配だ。

途中で大勢の踏み跡から外れ南竜ヶ馬場に向けて直接斜面を降りた。また3人だけの旅の始まりだった。南竜ヶ馬場から再び山馬谷2244mの県境稜線目指して登った。昨日の踏み跡が残っておりそれを追った。

別山の山頂にも雲が達して風は相当強そうだ。しかし視界が良好で昨日の足跡も明瞭でペースは上々だ。

振り返れば白山が雲に包まれつつあった。天気は下り坂、長居は無用で早く別山を越えるが懸命だ。

明瞭な踏み跡はありがたい、安全を確保し時間短縮にも非常に貢献した。雪庇の個所も難なく通過した。別山を通過し三の峰を下ると一昨夜世話になった避難小屋である。ここで1時間の大休憩をとり栄養補給、その後強行軍だが神鳩宮避難小屋まで下ることにした。天気は下り坂であり視界が効くうちに神鳩宮避難小屋まで下降して安全をより確かにしたかった。

避難小屋直下の斜面は慎重に下降した。夏道は全て雪の下で右に藪を見て傾斜の緩い箇所選び下降した。二の峰の三角点周りにはテープや赤布が巻かれてあって三角点の位置は特定しやすそうだが、それを掘り出す気力はとうに萎えていた。一の峰の通過も順調に終えた。

一の峰、二の峰、三の峰と別山。室堂から順調に超えて銚子ヶ峰の山頂まで帰って来た。小屋は近い。

銚子ヶ峰を少し下った笹原でアイゼンは脱いだ。母子岩の斜面は踵を効かせ小屋まで一気に駆け下った。

小屋着は17時前、この時間なら今夜は我々だけだろう。外は雪から雨に変わってきており無理をして足を延ばした甲斐があった。今夜のメニューは「豚角煮入りラーメン」「キュウリとトマトのサラダ」酒の肴は「土手煮」である。最後の晩餐だが小生の酒は底をつきカッちゃんとジョンナムくんを当てに。

<4日目>
4月30日(火)雨  神鳩ノ宮避難小屋8:39 大杉10:11 登山口10:25

 昨夜は一晩中雨音が絶えなかった。7時までユックリ天候の回復を待って寝袋の中でまどろみ昨日の強行軍の成果を実感した。雨粒が小さくなった頃合いを見計らって雨具とワカンを着けて下山した。おたけり坂に差し掛かるところでワカンをとった。大杉からの階段は滑らぬように慎重に下った。登山口で三泊四日の山行を共にした仲間と健闘を称えあった。

上在所の中居神社まで帰って来ると桜が満開で水芭蕉も咲き誇っていた。大杉に囲まれた祠に安全に登山を終えて感謝の手を合わせた。

 昨年来の宿題が片付きホット一息、登山余名幾ばくも無い年齢になると一年ごとに体力の低下を心配せねばならない。若い時代、登山は「青春の1ページ」と思っていたが古希を迎えてなお宿泊装備を担ぎ雪山を彷徨している。いい仲間と会に恵まれたから続けられた。山に登る手段だけでザイルを結ぶことはしない。繰り返すが今度もいい仲間といい登山が出来て感謝している。

ルート図

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