大垣山岳協会

続 私の書棚・山書紹介①

TOPICS・随想・コラム

月報「わっぱ」 2024年3月(No.508)

深田久彌 山の文学全集 (1)
著者 深田久彌  発行所 朝日新聞社

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 昨年、NT理事長が執筆したシリーズの続編として、私も少し紹介しようと思いますので、しばらくお付き合い願います。

 昭和49年の年始め、表記の全集が出版されることを朝日新聞の広告で知り、是非購入しようと思った。ところが、大垣中の本屋に聞いても、どこも取り扱っていない。あちこち探した結果、今はないが、岐阜の神田町通りにあった大衆書房という小さな本屋が取り扱っているのを知った。同年の3月から毎月発売日に岐阜へ出かけ、13ヶ月かけて全12巻と別巻「写真集 ヒマラヤの高峰」を買い揃えた。
その中身だが、当然氏の代表作である「日本百名山」は掲載されている(第Ⅴ巻)し、それ以外に膨大な量の山の紀行文や山に関する随筆などが掲載されている。それを読むと戦前から昭和40年代の登山の様子や山岳界の様子がよく分かる。

 ただ、岐阜県の山に関する記事は意外に少ない。氏の故郷の山である白山周辺や北アルプスへは頻繁に足を運んでおり、百名山に含まれる恵那山や伊吹山は当然登っているが、それ以外の我々の言う奥美濃の山はほとんど登っていない。能郷白山や大日ヶ岳の紀行もない。やはり東京中心の登山のようで、その点今西錦司達の関西派とは登山の傾向が違うような気がする。岐阜県の岳人として少し寂して気持ちである。

 それはさておき、氏のライフワークはヒマラヤ登攀史と中央アジア探検史の調査研究であった。海外からの原書を含め膨大な量の書籍や資料を蒐集している。各国の山岳雑誌なども定期購読しており、ちゃんと原語で読んでいたのかなぁと感心している。

 そしてその内容を氏の文章で分かりやすくまとめているのである。これが実に面白い。正に冒険談、探検談の臨場感溢れる解説で、胸をときめかせながら先へ先へと引き込まれてしまう。

 8ページ末尾(※)に記載した通り、先月は後半の3山行が雨で中止となった。それで紙面に余裕が出来たので、前ページの続きとして来月以降掲載予定のことを少し記してみる。

 深田のヒマラヤ研究の成果は「ヒマラヤの高嶺」というタイトルで全3巻(Ⅶ、Ⅷ、Ⅸ巻)に掲載されている。雑誌『岳人』等に長年掲載したものをまとめたもので、全部で140座の山の初登頂までのドラマが克明に記載されている。当然8000m峰14座は最初に掲載されており、他にも東は大雪山脈から西はパミール高原までの主要な山は全て含まれている。まさに世界各国の山岳界が初登頂を競ったヒマラヤ黄金時代の記録である。

 ちなみにヒマラヤには8000m峰14座のほか7000m峰は無数にあるが、それ以外に世界には7000mを超える山はなく、最高は南米大陸にあるアコンカグア(6959m)である。

※管理者注:月報「わっぱ」 2024年3月(No.508)8ページ 会員向けお断り


続 私の書棚・山書紹介①
深田久彌 山の文学全集 (1)  著者 深田久彌  発行所 朝日新聞社

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