【 個人山行 】 小津権現山( 1157,7m Ⅱ等△ 美濃百山B級 ) 揖斐川町久瀬小津
NT
先月末に花房山へ南面小津側から登ったが根雪は無く10㎝ほどの新雪を踏んで山頂に立った。その後、2度ほど降雪が有り我が家から見る伊吹山も雪化粧したが春の淡雪、直ぐに谷に白く幾筋か残すのみとなった。小津権現山を未知の尾根から周回する計画を立てたが伊吹山を眺めて雪は有っても知れていると思った。ワカン、ストックを車に置いて夏靴に簡易スパッツで挑んだが想定以上の残雪に苦戦を強いられた報告である。
- 日程:2024年3月14日 曇り一時霰
- 参加者:NT(単独)
- 行程:登山口駐車地6:00-集落獣害柵取付7:21-点名・北杉谷8:19-1050m峰11:05-小津権現山12:39~13:18-高屋山14:42-登山口駐車地15:43
- 地理院地図2.5万図:谷汲、樽見、美濃広瀬
林道に散らばる小石を避けて杉谷林道の登山口駐車場へ車をデポして小津集落へ徒歩で引き返した。高地川に架かる橋を跨いでこれから登る尾根を写真に収めた。
集落裏の道が分からず諦めて「点名・北杉谷」点の記の埋設ルートを参考に獣害柵を抜けた。
畑の細道からもう一ツ獣害柵を潜り斜面へ取り付いた。やがて落ち葉で埋まった道跡らしき窪みに出会ったが既に廃道で倒木が多かった。雪は全く無く冬靴を置いて来たことが正解だと納得した。靴は腐葉土と雪解けで水分の多い泥でドロドロに汚れた。
標高494.09mの点名・北杉谷Ⅳ等三角点は腐葉土で埋まっていた。捨てられていた古い腐食した白い木製柱を見つけたので付近を捜すと周辺の石と異質の石を見つけた。これが保護石で腐葉土を取り除くと金属を埋め込んだコンクリート製のⅣ等三角点が現れた。
雪がチラホラ出て来たと思ったら俄かに雲が湧き出て青空が消えていく、今日は快晴を期待して暖かい南面の尾根をルートにしたが裏切りにあったような気分となった。岩が出て来たが時間ロスを最小にする為にルート取りを慎重にした。
石灰岩カルスト地形の岩場は鋸刃状の尖った石が多くルートの判断を誤ると行き詰る。足元を観察していてシカの踏跡を発見した。経験から獣の足跡を辿ると正解が多いことを学んでいる。今回も彼等の跡を追って楽が出来た。
杉谷を挟んで対岸に高屋山から小津権現迄のルートが見える。雪が多いように見えるが北斜面だからであろう。自分のいる尾根の雪はチラホラで全く気にしていなかった。
此処の岩場が最も大きく高低差も有って抜けるのに時間を要した。雪の斜面にシカの足跡が岩場の弱点を目指して案内をしてくれた。しかし、もっとも斜度がきつくなった付近の岩では足跡が消えて傾斜が落ちるとまた彼らの踏み跡に戻るのだった。
標高が800mを過ぎると俄かに雪が切れ目なく続くようになって来たが15㎝ほどで浅く歩行に支障はなかった。モレ谷の北に花房山が見えて来たので主稜線が近いと自身を励ました。稜線には縦走路が有りヤブの斜面から解放されれば歩きやすくなるはずである。
権現山から花房山への主稜線が近くなるにつけ雪が深くなっていくのを実感していた。1050mの峰に出た途端に北に聳える花房山の二重山稜の山頂に魅了されシャッターを押した。花房山へ続く最低鞍部を見下ろし10年ほど前の権現、花房冬山縦走を思い出していた。
1050m峰から権現山へ向かっては緩やかに20m下って1068mの峰に向かって登り直す。西の山頂を目指し足に力を入れて踏み出した途端に膝頭まで埋まった。ザラメ状の重い雪は中途半端に柔らかく踏み抜きが多くなって稜線に出れば楽になるとの判断は甘かった。
ワカンを車に置いて来たのが大失敗でストックも必携だった。汚れ防止程度の布の簡易スパッツはめくれて夏靴に容赦なく水分の多い春のザラメ雪が入った。10分も歩くと靴の中はぐちゃぐちゃになって冷たく小津権現の山頂が遥かに遠く感じた。
陽当たりの条件が整った斜面と東向きの緩やかな尾根では雪融けが全く異なることは経験から予知出来た。山を舐めたつもりはなかったが今季の異常な雪不足状態が油断となってしまった。少しでも負荷を少なくするため体力温存でシカの踏み跡を追った。
1050m峰から緩やかに長い1068mへの通過は辛く苦しい時間であったが尾根が針葉樹の林に覆われた辺りは積雪が浅くなり助けられた。小津権現山頂へは急な雪斜面となっており最後の力を振り絞った。杖にしていた棒を横にして雪の斜面を抑えてツボ足を蹴り込み高度を稼いだ。手袋が水を含み氷のように冷たくなって指はカチカチに硬くなった。
権現山まで行けば人がおり山頂祠付近の雪は登山者で踏み固められていると思っていた。だが人はおろか足跡も無く、この数日人が訪れた気配は全くなかった。寒く寂しい一人ぼっちの山頂だった。祠を撮影すると先ずダウンを着て手袋を交換し暖を取った。
風を避けて南を向いてザックに腰を下ろし暖かい飲み物を戴きながら苦戦して辿って来た稜線と尾根を見降ろした。その先に西台山とタンポ、北の雷倉へ続く稜線を眺めた。
濃尾平野は乳白色のガスに邪魔されて見えない。暖かい飲み物と着込んだダウン、交換した手袋の効果なのか冬山に比べれば指の感覚の戻りは早かった。
長くはない山頂滞在時間で有ったが一瞬薄日が射して花房山に陽が当たった。その左後方に山頂部を雲に隠した能郷白山が広い裾野をガスの中から徐々に現し始めた。
山頂直下の急斜面はスリップに注意して下った。最低鞍部からのフィックスの有る急な壁は問題なかったがその上のソヨゴ帯が僅かな距離だが冠雪して倒れルートを塞いでいた。重い雪を掻き落として通過した。1040mの峰に立ってヤレヤレ小津権現を振り返った。
高屋山への下山途中でスーシュー他の足跡を見つけた。おそらく1040m峰から鞍部へ下るルートを見つけられなかったと思われた。高度を下げる毎に雪は浅くなり高屋山を100mも下ると雪は無くなり夏と変わらない。稜線では思わぬ苦戦をしたが良い一日だった。完
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