大垣山岳協会

冬山訓練2023(アイゼン+耐風)・西穂高独標 2023.12.23-24

西穂高岳

【 雪上講習 】 西穂高岳 独標 ( 2701m △なし )  NT

 当初御嶽山で計画されていた雪上訓練であるがロープウェイが冬季営業を停止しており西穂高独標へ切り替えた。近頃は山岳会の退潮からか滑落停止訓練をやっている光景を見ることがなくなった。御嶽山一ノ池、二ノ池斜面の堅雪でピッケルワークや滑落停止を予定したのだが残念である。西穂高はそういった訓練には不向きだが岩稜帯の通過や岩場の登下降でアイゼンワーク、岩場のピッケルワークの実践習得に向いた山である。強風下の中で独標を往復した報告である。

<ルート図>
  • 日程:2023年12月23日~24日
  • 参加者:L.NT、ST、SM、TM、NY、MY、YC
  • 行程:後述
  • 地理院地図 2.5万図:笠ヶ岳・穂高岳

12月23日(土) 曇り時々雪

  • 西穂高口10:00-西穂山荘11:45

 出発前日の飛騨地区は降雪が有って東海北陸道、白鳥~飛騨清見間は除雪の為閉鎖されていた。だが天気は回復傾向で有り予報を信じて大垣を出た。道中雪は有ったが心配した駐車場は指導センター下が無料開放されていた。ロープウェイも定刻通り運転されており、標高2156mの西穂高口を一歩出ると新雪を纏ったオオシラビソに歓迎をされた。

 1時間45分を費やし西穂山荘へ着いた。雪洞の入り口かと思いきや山荘の出入り口である。

 山荘の外は小雪が舞っている程度だが気温は低かった。受付を済ませ売店でラーメンを注文した。待ち時間に誰かが日本酒を出した、すると高木正さんが奥様の手作り料理を出して、どうぞ!一斉に箸が延びて消えていった。

 ガラス越しに見えるオオシラビソは雪ですっぽり覆われガスで景色は見えず寒かった。登山靴を脱いで指定の部屋へ、相部屋と思われたが7人で貸し切りであった。この時点で直ぐに意気投合し本日の訓練は止めとなって懇親会となった。ワインが空になっていく。

 山荘では12月23日(土)にクリスマスイブの催しをやっており食事は特別メニューが準備されワインと食後にケーキのサービスが有った。ワインはもう少し欲しかったが・・・

 食事の後には豪華景品のビンゴゲームやキャンドルサービスなども有って結構盛り上がったようだ。お年寄りはゲームよりも睡眠、惰眠を優先して高イビキでした。(YC提供)

12月24日(日) 晴れ

  • 西穂山荘6:49-丸山7:22-独標8:50-丸山9:45-西穂山荘10:07~10:44-西穂高口11:58

 西穂山荘日の出前の景色である。上高地梓川対岸の六百山と霞沢岳が目の前にある。写真左奥が八ヶ岳でその右から日が昇りそうである。

 今朝の山荘発表の天気予報では風速18mとのことだが山荘前は東斜面のせいかそれは感じない。冬山で有るので多少の強風は覚悟していた。(TM提供)

 山荘を出ると一気に高度を稼ぐ、まだ身体が温まっておらず辛い。稜線へ上がると風が出て来た、やはり山荘の予報は的中した。ハイ松が飛騨側からの風に叩かれエビの尻尾を発達させてサンゴのようだ。焼岳と乗鞍岳の景色を眺め立ち休憩を入れた。(MY提供)

 丸山到着、風は強かったが此処まで危険な箇所はない。先ず笠ヶ岳をバックに集合写真。

 これから向かう独標へ続く稜線は飛騨側の小鍋谷から吹き上げる風が雪煙を捲き上げて上高地側へ飛ばしている。かなり強そう、久方ぶりに目出し帽を被り完全装備で出発した。

 独標が近くなるとルートはほとんどが飛騨側を捲いており斜面の傾斜も増して足元の岩が大きくなって来る。向かう独標の上は凄い人で大混雑のようだ。(MY提供)

 独標への最後の岩場は岳沢カモシカ沢側へ鎖がセットされていた。その岩場で左足のアイゼンが外れブラブラ、締め付けバンドが靴に効いて脱落での紛失は免れた。肝心な所で危ない、岩棚で装着したが狭い場所でザックを背負ったままでは旨くゆかずST君の助けを借りた。ワンタッチアイゼンは装着は楽だが登攀には問題がありそうだ。(MY提供)

 岩を這い上ると大勢の人が、撮影ポイントは賑わい吊尾根をバックにポーズを決めていた。

 標柱の周りが空いたので先ずは我が会の仲間達の集合写真を笠ヶ岳をバックに撮った。コルでは風の吹き抜けが強かったが独標の上は風が柔らかくやさしかった。

 独標から西穂、奥穂高への稜線である。西穂高の山頂は手前から3番目のピークであろう。その奥が間ノ岳、天狗ノ頭と続きコブ尾根の頭、ジャンダルムの飛騨尾根が一部見えて奥穂山頂は隠れて見えない。西穂高迄にピラミッドやチャンピオンと言ったピークがあるようだがいつからだろう。我々が若い時代には聞いたことがなく近年の名付けであろう。

 冬季穂高の360°の展望は素晴らしくいつまでも居座り続けたいが独標を目指す登山者が白い稜線に点々と続いている。夏の槍ヶ岳穂先の下降と同じで降り時を見誤ってはならない。短い滞在で名残惜しいが景色を脳裏に焼き付け、頃合いを見計らい下山を開始した。

 独標の岩場を降りきると危険個所は去ってホッと一安心、広い尾根を浮石に注意して丸山まで引き返すと風も幾分和らいだようだった。緊張から解き放たれて笠や乗鞍、西穂、明神岳をバックに長めの撮影タイムとなった。

 山荘へ引き返すと帰り支度と食事を含めて長めの休憩をした。冬山講習は岩稜帯のアイゼン歩行と独標登高でピッケルのピックを使用した実践訓練となった。また顔面を叩く強風と指先が痛くなる厳寒も経験した。だが吹雪になるとこんなものではない。群青色の空の下を何事もなく下山出来るのは幸せで「穂高よさらば」を口遊みたくなった。

 下山中もすれ違う登山者は多く夏冬関係なく賑わっているように思えた。手っ取り早く写真のような北ア穂高厳寒の山に触れられる数少ないスポットだからなのだろう。

 西穂高口駅舎展望台へ初めて上がり観光客と一緒に穂高飛騨側の展望を満喫した。ゴンドラの窓越しに西穂高西尾根、涸沢岳西尾根、中崎尾根、抜戸南尾根と飛騨側の冬季ルートを感慨を込め目で追った。2023年も残り少なくなった、新しい年も盛り沢山の山行が目白押しである。「ハイキングからヒマラヤまで」初心を忘れず安全登山を肝に銘じた。完


コメント