【冬山訓練】 西穂独標( 2,701m △なし ) 後藤 正雄
- 日程:2020年12月19日(土) ~ 20日(日)
- 参加者:L.西村洋、大谷早、吉田千、後藤正
- 行程:後述
- 地理院地図 2.5万図:笠ヶ岳、穂高岳
新型コロナウィルスの感染が広がっている。大垣でも二桁の感染者が報告された。より身近に感染の脅威にが迫ってきた。
例年の冬山訓練はテント泊にて実施している。厳冬期でのテント生活を学ぶのも訓練の一つであるが、今年はかなわない。テント内では3密は避けられないからだ。会の山行として実施するうえでメンバーの安全確保は大前提である。
様々な制限のある状況の中で、今回は西穂山荘をベースとした冬山訓練となった。小屋泊となり余裕がある訓練になるかと思いきや、天候は最悪といった状況である。そのなかでも独標に立つことができたのは、貴重な経験となった。
- 12月19日(土) 雪(強風)
- 大垣5:00=新穂高P3県営公共駐車場8:40~55-新穂高温泉駅9:05~9:30発(ロープウェイ)=鍋平高原駅9:35-しらかば平駅9:45発(ロープウェイ)=西穂高口駅10:00~10:20-西穂山荘11:55~12:55-丸山13:25~13:30-2490m地点引き返し13:50-丸山14:02-西穂山荘14:22(ロープワーク講習他)~夕食17:00~キャンドルサービス19:00~消灯21:00
今週に入り寒波がやってきた。昨年とは様変わりで、高速道路での立ち往生のニュースも流れている。北アルプスも例外でなく大雪に見舞われ、週末も雪予報である。
岐阜各務原ICから東海北陸道を北上する。郡上八幡あたりを過ぎると徐々に周囲は雪景色が濃くなっていった。小雪がちらつく中、新穂高温泉まで車を進める。駐車場が空いているか心配されたが、新穂高センターの手前、無料駐車場に停めることができた。7台程度しか駐車されておらず少し拍子抜けであった。登山靴に履き替え、ロープウェイ乗り場へ向かう。
夏の混雑したロープウェイと異なり余裕のある乗車。ここでもコロナ対策のため定員を制限しているそうだ。5分ほどで鍋平高原駅に到着し、しらかば平駅へ向かう。
新しくなった第2ロープウェイに乗り西穂高口駅へ。新しくなってから初めての乗車。残念ながら景色は見渡せず。
西穂高口駅にて軽く食事をとり西穂山荘まで出発。駅周辺の道は観光客も対象としているためか綺麗に除雪されている。
散策路から登山道に進む。先行者により踏み固められているため特段のラッセルは不要だが、少し踏み外すと新雪のなかにズボズボと。
静寂な雪道を進む。キュッキュッという新雪を踏みしめる音が心地よい。
少し薄日が差してきた。樹林帯の間から西穂高岳、ピラミッドピーク、独標が見える。
徐々に勾配がきつくなり、針葉樹林帯からハイマツ帯へとなってくると西穂山荘が見えてくる。
西穂山荘に到着。受付をすませ別館レストハウスに移動する。
食事をしながら荷物を整理し、不要なものを山荘にデポする。山荘を出るとうっすらと雲の切れ間は見えるものの、風はかなりきつい。慌てて目出帽を取り出した。
予定では、本日中に独標まで登り、明日は独標付近の岩場での訓練としている。しかし、遂行することはなかなか厳しそうだ。
先行者のトレースは吹雪にかき消されている。新雪が深いためわっぱをはいて登り始める。
ようやく丸山まで到着。我々のほかは誰もいない。
さあ、独標へ。風は強くなることはあっても止むことはない。雪は風に飛ばされており、わっぱからアイゼンに履き替える必要がある。どこか風をよけるところがないかと見渡してもなさそうだ。2490m地点まで登り引き返すことした。明日の天候回復に期待しよう。
山荘に戻り一息をつく。テント泊と違い水を作ることも食事の準備も必要ない。時間を持て余してしまう。西穂山荘の方が上映会を実施するというので、さっそく見に行くこととした。西穂高岳の四季折々の動画やスライドショーを堪能し、部屋に戻る。そこで見たものといえば、西村リーダーによるロープワーク講座だ。いつもだと宴会が始まるところだが、今回は一味ちがうぞ。
夕食は、ハンバーグにチキン、ロールキャベツ。大変おいしくいただく。また、クリスマスウィークということでキャンドルサービスもあり楽しいひと時をすごす。21時消灯。就寝。
- 12月20日(日) 雪(強風)
- 起床5:30~朝食6:00~西穂山荘7:50-丸山8:20-独標9:25~9:50-丸山10:25-西穂山荘10:38~11:35-西穂高口駅12:33~12:45発(ロープウェイ)=しらかば平駅12:55-鍋平高原駅13:05発=新穂高温泉駅-駐車場13:18~13:30=ひらゆの森(入浴)=大垣17:50
昨日の夕食時に、昨晩から今日にかけて寒波が来襲すると聞いていた。山荘付近でマイナス20度の予想気温だ。寒くて眠れるか心配していたが山荘内は暖かく快適に朝を迎えることができた。
朝食時に本日の天気予報のお知らせがあった。昨晩の予想よりは風力は弱いがそれでも17m/秒。稜線に出るとさらにきつくなる。体感温度はマイナス37度だ。冷え~ッ。独標までたどり着けるかどうか弱気の心も芽生える。ただ、天候が回復傾向にあるので、下界では晴れ。ロープウェイも運休はないだろうとのこと。風が弱まることを期待しつつ準備を整える。目出帽に加えゴールグルも装着し完全装備。
登りはじめて少し進むと1名のアイゼンが緩んでいることに気づく。登山靴とアイゼンがしっくりと合っていないようだ。独標はアイゼンなしでは登れない。天候も考慮しやむなく小屋にて待機ということになった。3名にて独標を目指す。
丸山を越え、高度を上げていく。左側から叩きつける小雪混じりの風が半端ない。のんびりと写真を撮っている余裕などまったくない。
独標の影がうっすらと見えてきた。これから岩稜帯になっていく。風に吹き飛ばされないよう気を引き締めて進む。
あともう少し。岩と氷を踏みながら登る。アイゼンワークが試される。
頂上直下。ルートが少しわかりづらい。
独標に到達!
登ったら下りる。下りるのにも一苦労。我々が下りようとしたときに、2つのパーティが登ってきた。最初はガイドパーティであり安心してみていたが、次に登ってきたパーティは、初心者の方もいるようでおぼつかない足取りで登ってくる。見ているこちらがハラハラする。
一難去ってまた一難。岩稜帯を下り丸山まで戻る途中ガスにまかれホワイトアウトの状況。トレースも風に消されなくなっている。わずかな痕跡を頼りに先へ進む。
ようやく山荘に戻ってきた。白湯を一口、生き返る。行動食をつまみながら下山の準備。
山荘から西穂高口駅へ向かう。樹林帯に入ると風もほとんどなくなり。ルンルンの雪道くだり。
第2ロープウェイ乗車。待合場には十数名いたと思うが、2階には我がパーティのみ。貸し切りである。
第1ロープウェイもコロナ対策で我々の直前で締切。我々4名のためだけに臨時便を出していただけた。これもまた貸し切りとなりガイドのお嬢さんと世間話をしながら下りていく。
下山後、体を温めようと温泉を探しているとコロナの影響であろうか、日帰り入浴を見合わせている旅館が目に入る。たまにはどこか別なところでと思いながらもいつもの「ひらゆの森」にて体を暖め帰路についた。
今回の冬山訓練は、コロナの影響もあり小屋泊となったが、その状況を生かした室内での講習も実施するなど有意義なものとなった。また、悪天候により冬季岩稜帯の歩行訓練も十分に実施できたとは言えないものの、猛吹雪の中で独標まで到達できたということは貴重な体験ができたのではないだろうか。
地理院地図 12/19(土)、12/20(日)
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