【 個人山行 】 小津権現山 ( 1158m Ⅱ△ ) 丹生 統司
冬季の小津権現山にはこれまで6度トレースを残している。藤波谷からの北尾根が3度、小津集落からの南尾根が2度、横山ダムからの西尾根が直近の2018年であるが晴天に恵まれたことが一度もない。2018年の西尾根は6時間を超えるラッセルで山頂到着は2時15分、ガスで展望は利かず帰りは地吹雪に叩かれ消えかかったラッセル痕を辿って這う這うの体で逃げ帰った。当然最後はランプの世話になって長いルートを実感していた。年末から正月の降雪が落ち着いたのを見計らい今度こそ、冬の山頂の展望を欲しいままにと挑んだ。
- 日程:2022年1月10日(月) 快晴
- 参加者:丹生統(単独)
- 行程:ふじはし観音駐車地6:55-29番鉄塔7:33-横山ダム送受信施設8:30-1月8日到達点9:00-999m峰9:45-1081m峰10:43-権現山山頂11:25~12:45-横山ダム送受信施設14:35-ふじはし観音駐車地15:30
- 地理院地図 2.5万図:美濃広瀬・樽見
実は1月8日に一度挑んだのであるが「ワカン」を忘れツボ足で奮闘したが標高840mでギブアップした。その時に「ふじはし観音」から尾根に道があることを知った。因みに2018年は尾根右側斜面の巡視路を利用したが急登で危険は感じなかったがしんどい思いをした。
鉄塔に着くと天狗山がモルゲンロートに染まり輝いていた。今日は雲一つない絶好の登山日和の確約をいただいたと安堵した。
標高670mに立つ横山ダムの送受信施設、此処までは巡視道が整備されているようだ。8日はこの施設手前から吹き溜まりとなっておりツボ足にはきつかった。
標高840m、8日の到達点に着いた。今日はワカンのお陰で快調に来られた。ここからが本番である。雪面の状態は一昨日より締まってよい、小動物の足跡に誘導されて踏み出した。
中央が山頂で右の峰は小津ルート南尾根の前山である。西尾根は総じて北側に樹木が密生して視界を邪魔しているが南側は開けて貝月山や鍋倉山が見えていた。
標高999mの峰に着き我が足跡を振り返った。実はこの峰を888mと思い込み勘違いしていた。一昨日の到達点から50mばかりの標高差で一気に登りきるつもりが中々峰に着かない。おかしい、おかしいと自問していたが、峰に着いて地形図をよくよく見れば999が888に見えていた。老眼のせいだった。
風の芸術の風紋が綺麗だ、風に叩かれて雪面は締まっており歩きやすかった。小動物の足跡が可愛くて一人歩きを忘れさせてくれて心が和んだ。
尾根には結構大きなブナが残されており、荒れた幹肌が老古木の雰囲気を作っていた。
ブナの古木に残された熊の爪痕。この頃はブナを見ると爪痕を捜す癖がついてしまった。
1081mの前山から山頂へ続く尾根、近年は降雪量が少なく発達した大雪庇を見ることが少なくなった。以前の雪が多かった頃ならこの南側には大雪庇が張り出していただろう。
山頂斜面へ続くブナの林、小津権現山は登る尾根によってこうも景色が違うのかと思った。
ブナが風雪に叩かれて幹肌が爆ぜるように荒れている、古木の雰囲気が実にいい。
北側の樹林が途切れると奥美濃の大パノラマが展開した。左から天狗山、三周ヶ岳、蕎麦粒山、小ソムギ、美濃又丸山、笹ヶ峰、ミノマタ、金草岳、少し離れて冠山、また離れて若丸山である。
南側には鍋倉山と貝月山の間に伊吹山が見えていた。貝月山と一部が重なって右にブンゲンが見えて稜線が金草岳へ続いている。
辿って来た西尾根を振り返った。背後に金糞岳の北尾根が長い裾野を坂内集落へ延ばして山塊を大きく見せている。その右は横山岳と土蔵岳が見えて三国岳へ続いていた。
このブナの並木を辿れば山頂のはずである。その先の景色が早く見たくて気が焦る。ワカンの歩幅を少しでも広く大股で最後の力を出して雪面を跨ぐように歩を進めた。
もう山頂が近いのだが樹間から北の山が臨まれると景色に釣られて、つい立ち止まりシャッターを押してしまう。能郷白山とその右奥に白山が一際白い、右手前は花房山。
山頂到着、頂には複数の足跡が有りスキーのシュプールが花房山へ向かって斜面に残されていた。トレースは小津集落、南尾根から登って来ていた、おそらく昨日のものだろう。
南尾根、小津ルートを見下ろす。南尾根の右手前から飯盛山その奥がムネ山、更に奥に霞んで池田山。南尾根左は点名・樒平と点名・東津汲と塔ノ倉であろう。その南に濃尾平野が、伊勢湾は霞んでいた。当日、北の方角は空気が澄んでいたが南の方はモヤがかかっていた。
遠く東に御嶽山が見えて、その北に乗鞍岳、更に北に奥穂高と前穂高の吊り尾根が確認出来てキレットから南岳や大喰岳が白い山塊となっていた。残念だが槍ヶ岳は穂先が黒いため青空と重なって確認出来なかった。手前の花房山の二重山稜がカルデラのような特異な山容で鎮座し小津三山盟主の矜持を漂わせていた。
更に北に目を転じると白山が別山や三ノ峰、銚子ヶ峰、三方崩山を従えて石徹白の山々と白い帯で連なっていた。その手前の山塊は磯倉と前山を抱いた能郷白山である。
中央右の蕎麦粒山から北に小ソムギ、そこから稜線は東に向きを変えて五蛇池山に、ここで更に南に向きを変えて黒津山、中央の天狗山へと続き、その尾根は西に向きを変えて坂内道の駅に落ちて消える。この周回をソバズル達と行った2013年3月の日々が懐かしく思い出された。
充実した一日を提供してくれた素晴らしいフィールドの景色にいつまでも酔っていたい。快晴の山頂の南斜面は北風を遮り約1時間の滞在時間が短く感じた。しかし冬の日溜りで太陽を一杯に浴びて次の山への充電は完了した。新たな山へのプランに胸をときめかせて先ずは家庭に帰ろう。完
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