月報「わっぱ」 2021年8月(No.477)
【 夏山山行 】
爺ヶ岳 ( 2669.9m Ⅲ△ )、鹿島槍ヶ岳 ( 2889.2m Ⅱ△ )、五龍岳 ( 2814m △なし )
山本 千登勢
- 日程:2021年7月23日(金)~ 25日(日)
- 参加者:CL.中田英、SL.丹生統、大谷早、小栗敦、佐藤大、清水克、山本知、吉田千
- 行程:
7月23日(金)(晴れ)三城交番西駐車場2:30=安曇野IC5:30=扇沢駐車場6:15-扇沢登山口6:50-種池小屋10:30-爺ヶ岳中峰12:05-冷池山荘13:40
7月24日(土)(晴れ)起床3:30~冷池山荘出発4:30-布引山5:40-鹿島槍ヶ岳南峰6:50-北峰7:40-キレット小屋8:45-五竜岳14:00-五竜山荘15:15
7月25日(日)(晴れ)起床4:30-五竜山荘出発5:55-白岳6:05-大遠見山7:35-地蔵の頭9:45-白馬五竜アルプス平10:00=大垣17:00 - 地理院地図 2.5万図:黒部湖(高山5-2)、十字峡(同5-1)、神城(同1-3)
●7月23日(金)(晴れ)
三城交番西駐車場2:30=安曇野IC5:30=扇沢駐車場6:15-扇沢登山口6:50-種池小屋10:30-爺ヶ岳中峰12:05-冷池山荘13:40
東京オリンピック開幕の連休、北アルプス後立山連峰の夏山縦走です。車の回送サービスの関係で夜中の2時30分に出発、扇沢駐車場に着くと早朝にも関わらず満車状態です。
扇沢登山口で受付をして柏原新道から入山。モミジ坂と呼ばれる広葉樹林帯の中を九十九折に登ると蒸し暑く額から汗が滴り落ちます。リーダーの淡々とした足取りだけを見つめ必死について行きますが、後方からは余裕の話し声が。対岸には赤沢岳、スバリ岳、針ノ木岳の山々が見えます。山小屋へ荷物を運ぶヘリコプターが何度も往復するのを見て「北アルプスに来たんだ!」と実感。
整備された登山道では山岳警備隊の方がスッコプで雪渓に階段を作っていました。登山道を2日に1回整備しているようです。
鉄砲坂の急坂を上がると、突然開けコバイケイソウの群落が目に飛び込んできました。チングルマ・シナノキンバイ・ミヤマキンポウゲ・イワカガミ・ハクサンフウロ等々を見ながら種池小屋で休憩です。
種池小屋から爺ヶ岳へ稜線を歩いている時ハイマツの中からライチョウの親子を見つけます。初めて見たので大感激!元気が出ます。
爺ヶ岳は南峰、中峰、北峰と三つの頭を持つ山です。南峰の山腹に現れる「種まき爺さん」の雪形が名前の由来です。女性メンバーと丹生さんは南峰を巻いて通過しました。男性陣より南峰に希少な旧農商務省山林局の三角点があったと聞き、丹生さんは悔しがっていました。ザレ場で高山植物の女王コマクサを見つけ、思わず写真撮影会。可憐な花の下の根は1m以上にもなるそうです。可愛いだけじゃなく根性のある花です。
爺ヶ岳中峰山頂で三角点を見つけ感謝を込めて頭を撫でます。山頂からは雲が切れて剱岳、立山が姿を見せます。2018年、剱岳北方稜線の山行を丹生さんが、懐かしそうに説明されました。当時、私は入会したばかりで、剱岳山行記録を読み雪渓のトラバースや水平道の写真を見て「命知らずの人達だ!場違いなところに入ってしまった!」と思っていました。今回その時のメンバーが4人もいます。
爺ヶ岳を後に赤い屋根の冷池山荘まで大下りです。冷池山荘に到着と同時に雨が振り出してきました。今回の山行はついてると確信しました。
●7月24日(土)(晴れ)
起床3:30~冷池山荘出発4:30-布引山5:40-鹿島槍ヶ岳南峰6:50-北峰7:40-キレット小屋8:45-五竜岳14:00-五竜山荘15:15
天候が心配でしたが晴れています。行動の早いメンバーは予定より早く出発です。今日の長い行程を考え予備の水6Lを、中田さん、佐藤さん、吉田さんが各2L持ってくれています。コバイケイソウとチングルマ、イワカガミ、ミヤマキンポウゲの咲く登山道を進むと、眼下に雲海が広がり朝日が顔を出します。手を合わせ今日の無事を祈りました。
布引山の山頂で昨晩山小屋で受け取った朝食のちらし寿司を広げます。昨日の疲れと緊張で食欲は無いですが、食べないと体がもたないと無理して頬張りました。
鹿島槍ヶ岳は南峰と北峰(2842m)からなる双耳峰で日本百名山、花の百名山に選定されています。主峰の南峰に到着すると既に大勢の人で混雑しています。三角点を探すと、人の間に小さく角は欠けて周囲をコンクリートで固められていました。苦しそう。
絶好の天気で空は青く立山、薬師岳、黒部五郎岳、槍ヶ岳、穂高岳が見えます。大下りした後登り返して北峰に登頂。その先、いよいよ日本三大キレットの1つ八峰キレットです。鉄梯子を下りると鎖場です。「ここはキッレト、バランス確保」の注意板に緊張が走ります。リーダーから「掴めるものは何でも掴んで」と言われましたが、美濃の藪山ようにはいきません。岩稜帯の枝が抜けないか確認しながら掴みます。キッレトの細い登山道を一歩、一歩、岩登り講習で習った三点確保をしながら岩壁をへつるように進みます。講習のお陰で高度感の怖さはないけれどハーネスをしていないので気が抜けません。少し広い岩場に立ち止まると私のザックに後ろから降りてきた人のザックが当たり前に押し出されます。「間隔を開けて」とリーダーの声が掛かります。
真下にキレット小屋が見えます。両側が切れ落ちた鞍部で、よくもこんな凄いところに建っているものだと感心します。小屋は営業しています。二度と来られないだろうと思い記念にバッジ@700を購入しました。
小屋を出てすぐ鎖場、梯子が続き、岩場のアップダウンから急登です。土はあるのだろうかと思う岩の裂け目にイワギキョウの凛とした青紫の花を見つけ背筋が伸びます。
岩場からザレ場の登りに変わるとはるか彼方に五龍岳が見えます。体力を消耗して下を向いて歩く私達。清水さんからウルップソウの話を聞きます。発見地の千島列島のウルップ島からとった名で、環境省の準絶滅危惧種の貴重な花を教えていただきました。見つけたときは思わず声が出て写真に納めます。
五龍の登りも岩場です。疲れた足を一歩一歩と確認するように前に出しますが、なかなか進みません。五竜山荘への分岐から5分程の高みに旧字体の「五龍岳」の山名柱がありました。振り返れば鹿島槍ヶ岳と超えてきた峰々が遠くに見えます。
今晩宿泊の五竜山荘の受付を3時に済ませるため中田リーダーと佐藤さんが先行下山します。ザレ場に岩場もあり山小屋は見えますが道のりは長いです。3時15分に到着すると中田リーダーが出迎えてくれました。吉田さんは最後までみんなの予備の水を2Lもっての山行です。申し訳ないと謝ると、笑って「訓練だから大丈夫」と頼もしいです。
●7月25日(日)(晴れ)
起床4:30-五竜山荘出発5:55-白岳6:05-大遠見山7:35-地蔵の頭9:45-白馬五竜アルプス平10:00=大垣17:00
五竜山荘から白岳へは40m程登ると山頂。五竜岳の岩肌とシラタケ沢の雪渓を見て、奥に鹿島槍ヶ岳の双耳峰を眺めます。下りは岩場が朝露で滑りやすく気をつけながら降りますが、これで岩場ともお別れかと思うと淋しい。
西遠見山、大遠見山ではガスって何も見えません。中遠見山とアップダウンが続きますが、みんな転がるように早い。途中、野生のブルーベリーを一粒口に入れると酸っぱさと渋さが口に広がります。地蔵の頭で休憩すると人で一杯です。ハングライダーが気持ちよさそうに風をつかまえ飛んでいるのを見ながら、白馬五竜植物園の高山植物の中を通ります。白馬五竜アルプス平駅では、それぞれが生ビールや真っ赤な冷えたスイカジュースを飲みながら労をねぎらい談笑です。
私にとって緊張した長い長い3日間でした。リーダーはじめ皆さんに連れていってもらった山行でした。感謝しかありません。これからもっと知識と技術を培っていきたいと思います。有難うございました。
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