【 個人山行 】 屏風山 ( 1354m Ⅱ△ ) 丹生 統司
嬉しいことに昨年ごろから新会員が増えて来た。昨年と今年入会組の親睦とワンランク上の山を目指す登山を目的に10月22日と29日に分けて企画した。今回は急登とヤブがテーマの屏風山である。3年ほど前の台風で荒れ放題、ワンランク上を知るに好適な山である。
- 日程:2022年10月22日(土) 曇り時々晴れ
- 参加者:L.丹生統、SL.佐藤大、内牧真、北川稔、塩川眞、成瀬弘、堀嵜尚、宮川祐、三輪唯、村田美、森川浩
- 行程:駐車地(標高470m)6:45-ゲート7:18-屏風谷出合8:40-県境尾根取付9:31-県境稜線乗越10:49-屏風山山頂12:45~13:20-屏風谷出合16:16-ゲート17:44-駐車地(標高470m)18:12
- 地理院地図 2.5万図:平家岳
予定した駐車地は未だだが、河内谷林道をこれ以上進むと4台の駐車スペースが確保できるのか運転中は不安であった。それなりの膨らみを見つけると躊躇なく車を置いた。
しかし、予定していた駐車地よりも2㎞も手前で用意した地形図の下の端っこにギリギリ残っていた。歩行中の左下に明瞭な大堰堤と堰堤湖を見て現在地を確認出来たが結局ゲートまで30分を要した。
林道歩行では「トチの葉」と「朴葉」の違い、茸では「シイタケ」と「ツキヨダケ」の見分け方などを確認して会話は弾んだ。途中で小さいが「ヤマブシタケ」を見つけた。
駐車地から屏風谷出合まで約2時間を休みなしで歩いた。入会が浅い方ばかりで遠慮が働いたと思われる。いつもの山行なら大ブーイングだったであろう。それにしても遠かった。
屏風谷出合の「大サワグルミ」の木は健在で有った。当然だが私が新人の時代からこの出合の主である。「うすずみ桜」や「縄文杉」のような銘木になって永劫残って欲しい。
直ぐに堰堤が現れる。落ち口にいたイワナが不意の訪問者に慌てて背びれを水中から出し浅瀬の水を切って走った。堰堤右岸に埋め込まれた鉄筋の階段を慎重に登る。
唯一の滝らしいF1のへつり、以前は不安定な丸木が足場に有って慎重に越えた。2019年に訪れた時には埋め込み式のピトンが4ヶ所ほど打たれてフィックスが固定されていた。それが今も有効に使われていた。
かなり以前から県境稜線乗越への取り付きにセットされている「熊追いの鐘」、叩き棒が新にセットされていた。ここで用意していた「爆竹」を鳴らそうとしたが古いのか湿気ってか途中で消えた。何度も点火してやっと鳴ったが音は迫力不足だった。
いよいよ急登の始まりである。他人のセットしたフィックスロープを両手で掴み全体重を預けない。上の支点やロープの途中がどうなっているか確認が出来ていない状態で生命を預けてはならない。必ず片手は岩や樹木などを掴む、他人の仕事を信用してはならない。
3年ほど前の台風で県境稜線乗越迄の斜面は倒木と崩壊でルートが寸断されていた。大木を跨いだり潜ったりとルートの見極めが大事である、帰りの時間短縮と安全を期する為に赤布の目印を使用した。
緊張でゆとりのない急登の中で見つけたシャクナゲの花。春咲きの花がボケて咲いたのだが緊張をほぐした癒しの一輪だった。
天然ヒノキの立派な根張りに感心した。自然の造形美に見とれたが思わず我が家の妻くんのデッカイお尻を思い出し他人と思えずカメラを向けた。
時には緊張の糸をほぐす自然美を感賞したが急登はその後も続いた。メンバーは帰りの下降を心配していたが「一度通過した所は必ず下れる」ものだと勇気づけた。
やっと県境稜線乗越に着いた。ヤレヤレだがここから稜線沿いに倒木とヤブの発達が有って越えたり潜ったりでヘロヘロになる。ヘルメットはヤブ山に有効である。
県境稜線の木々の丈はまだ高く径が1mは有りそうな根張りの天然ヒノキがそそり立っている。樹間から山頂が見えるがマダマダ随分高く遠い。
こんなデッカイ天然ヒノキが根元から折れて尾根の道を塞いでいた。枝を押して潜るより術がなく顔を引っかかれないように用心した。
天然ヒノキの大木の下を潜る。登ったり潜ったりと運動会の障害物競争だ。女性は美顔に傷を恐れて手で顔を覆っていた。
やっと笹原から顔が出て周りが見渡せるようになった。背後は左門岳から平家岳、美濃平家岳と思われる。
やっと山頂到着、万歳の発声は塩川さんにお願いした。リーダー以外全員が初めての屏風山登頂であった。万歳にも力がこもっていた。我が会指定の美濃百山C級にふさわしい難路の山で有った。
青空が覗くかと思うと雲が低く垂れ雨粒が落ちて来ぬかと心配な天候で有った。北に荒島岳が見えて雲と見間違うほど高い所に薄く双耳峰が見えていた。白山の御前峰と剣ヶ峰で有った。穂高や槍の北アは雲が邪魔をして全く見えなかった。
下山は慎重にと口酸っぱく言った。急下降ではホールドを少しでも下段に求めればスタンスが近く視界も広くなり降りやすい。木の根や樹木を掴み慎重に確実に降りて来るメンバーをみて頼もしく思った。剱岳はコロナや雨で中止となったが夏の岩講習は成果を残していた。それでも屏風谷に降り立ち危険地帯を脱してホッと一息ついた。屏風谷出合から長い林道を約2時間ヘッドランプに助けられた。おそらく大半のメンバーはライトを点灯させて歩くのは初めてであろう。大勢でしかも林道ゆえ視界が狭くとも不自由は感じなかっただろうがガラ場や沢などではそうはいかない。そんな戒めの経験を語り聞かせながら歩いたが多人数ゆえどこまで聞き届けたかは疑問である。ヘッドランプ歩行初体験だけでも良しとしよう。
今回の屏風山は昨年・今年入会組の岩登り講習会を見て参加者を募った。声掛けをした全員が「参加」の返事には正直驚いた。何人かには断られるかも?と思っていたので嬉しい誤算だ。屏風山という山を通じてワンランク上を目指す経験に挑戦したいということだと理解した。山は知識と技術と経験の積み重ねで登山者を成長させる。GPSに頼らず山登りの基本を守り目的を持って山に向かえば山頂からの景色は違って見えて来る。完
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