大垣山岳協会

白い密林と華の山・霊仙山 2022.01.15

霊仙山

【 個人山行 】 霊仙山 ( 1083.5m Ⅱ△ ) 丹生 統司

 山はその時々によって表情を変える。何度登っても一度として同じ情景はなく、その度ごとに新しい発見に感動する。山の女神の胸に抱かれたような素晴らしい山行を紹介しよう。

<ルート図>
  • 日程:2022年1月15日(土) 晴れ
  • 参加者:L.丹生統、大谷早、佐藤大、田中恵、廣瀬美、堀嵜尚、村田美、吉田千
  • 行程:養鱒所駐車地7:30-榑ヶ畑登山口8:55-汗拭き峠9:30-お猿岩11:20-霊仙山頂12:10(樹林で50分休憩)-榑ヶ畑登山口14:33-養鱒所駐車地15:40
  • 地理院地図 2.5万図:彦根東部・霊仙山

 昨日までの降雪で集合場所の関ケ原は道路が凍結しており全員が揃うまで心配でならなかった。しかし案ずるより・・・我が会の女性は全てにしっかりしていた。醒ヶ井養鱒場の駐車場は除雪されており係員に誘導されて駐車した。代金は¥600、除雪の労働を考えれば良心的な値段だろう。ここからワカンを履いて出発した。

 やっと榑ヶ畑登山口に到着、約1時間半の単調な林道歩きを終えようやく登山が始まった。

 昨年末から正月にかけては数年に一度の積雪とか、一昨日から昨日にかけても列島は寒波の襲来を受けて霊仙山は豊富な雪量に恵まれていた。

 先行者のトレースが有り忠実に辿った。多くの若者に抜かれその度に踏み跡は広く固くなり歩きやすくなった。人に遭遇することが稀な奥美濃のヤブ山では経験できない現象だ。

 5合目に到着すると北西方向が開けて長浜市内と琵琶湖が一望出来た。ここから夏道は南へトラバースして標高差165mを九十九折に登ってお猿岩の7合目に出る。

 5合目から先行者のトレースを追うと夏道へ続いていたので別れて西斜面を標高差165m直登した。これには3ツの理由がある。1ツには、夏道は樹木のない急傾斜の南斜面に九十九折にルートが設けられており降雪直後は雪崩の危険がある。

 2ツには、雪山のラッセルは直登が基本、雪崩を避けるためにトラバースを避けるとともにラッセルという重労働の距離を一歩でも少なくする。

 3ツには、ラッセル経験のない冬山初心者への体験と急傾斜地の高度感への慣れの学習である。帰りはこの斜面を真っ直ぐ下降する。

 標高930mのお猿岩は雪の下だった。これから一旦、北へ向かう沢を跨いで山頂へ続く写真背後の西尾根に取り付く、これが霊仙山に向かう最短ルートであるが積雪期限定コースで有る。夏道に比較しておおよそ3分の1の距離で済む。なにより雪山でラッセル痕を残す行為に喜びを感じる。高みから振り返るトレースは芸術的でちょっとした快感を覚える。

 跨いだ沢は急傾斜の支谷がなく雪崩の起きる確率は低いが山登りに絶対は存在しない。沢の横断は立ち止まらず速やかに行い尾根末端の樹木の少ない斜面に取り付いた。

 昨日までの降雪と冷え込みと霊仙山特有の琵琶湖からの湿った強風の造形芸術を心行くまで堪能しよう。この自然庭園を8人で贅沢に独占鑑賞するのである。

 満開の白い華をご覧あれ、なんと贅沢なお華見山行だろう。これは自分達のトレースを残したラッセルへのご褒美なのであり、この楽しさを覚えると冬山が止められない。

 仲間の感激の声が漏れ聞こえて来る、リーダー冥利に尽きる瞬間である。そして白い密林のトンネルを抜けた次の景色の向こうに期待し胸が躍る。

 白い密林の先の雪原に雪の華でたわわに枝垂れたマユミの木が1本、自然の造形師の芸術に思わず立ち止まり鑑賞した。

 樹々が絶えて雪原となった。山頂まであと一息自分達の足跡をあの高み迄繋ぐのだ。山頂には反対の夏道から登った人影が見えた。

 山頂近くにクレーターか火口湖と見間違うようなドリーネがあって、その東の遠くに中央アルプスが見えた。さらに北へ御嶽山と乗鞍岳が残念だが穂高は雲に遮られていた。

 山頂到着、Ⅱ等三角点、点名・霊仙山の石柱はビッシリとエビの尻尾で覆われていた。

 北に伊吹山が広い山頂台地に雪を載せ、左奥に金糞岳が、更にその左奥には横山岳が見えた。山頂で誰かに金糞岳を見て山名を尋ねられ横山岳と答えたが間違いで訂正してお詫びする。伊吹山の左奥の白い大きな山塊は金糞岳です。

 北から南に風が強く吹き抜けて防風ヤッケなしでは長居は出来ない。伊吹山をバックに集合写真を撮ったつもりが肝心の伊吹が隠れていた。寒さでゆとりがなかったようだ。

 逃げるように山頂を後にした。風が避けられる樹林帯まで下り昼食休憩をすることにした。

 山の女神の機嫌よろしく素晴らしい景色に遭遇して大満足の一日であった。雪山のルート選定の基礎も理解していただいたようでいい一日となった。が晴れの日が少なくガスや吹雪に震える日が多いのも冬山であることを忘れてはならない。完

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