大垣山岳協会

取立山 2012.05.27

取立山

月報「わっぱ」 2012年6月(No.367)

【 月例山行・市民登山 】 取立山 ( 1307.2m △Ⅲ ) 鈴木 正昭

日程:2012年5月27日(日)
参加者:犬飼進、佐竹良、小倉幹、安藤正、近藤初、吉田英、藤井利、久世勝、鈴木正、古林定、中田英、説田敏、竹森せ、後藤友、藤井真、桐山美、馬場昭、霜田光、伊藤喜、小林和、藤森ふ、大原和、田中善、山本美、福元茂、長野邦、後藤正、和田ゆ、山田哲、島岡映、小川弥、杉野一
行程:大垣(大垣市総合体育館駐車場)5:30=関ヶ原IC=福井北IC=国道416号=国道157号=東山いこいの森=林道終点駐車場8:35~50-大滝9:15-コツブリ山10:40-ミズバショウ群生地10:50~11:10-取立山11:30~12:30-駐車場13:35~14:00=大垣
地理院地図 2.5万図:北谷

 残雪期の山中で偶然ミズバショウの花に出合ったことが何度かあったが、今回はそのお花見を主目標にした取立山(福井県勝山市)山行に参加した。

 「夏の思いで・江間章子作詞」の歌詞によると、ミズバショウは「夢見て咲いている水のほとり」「夢見て匂っている…」らしいが、ほんとうだろうか。

 群生地をあわただしく通過したことが多かったが、今度はその清楚な容姿と香りを静かに味わってみよう。市民参加者22人を含めた総勢54人の一行はマイクロバス2台で駐車場に着くと、既にたくさんの車がズラリ。薄い雲が広がるが、ほぼ快晴。5つの斑に別れ、ゆるいトラバース道を歩き始めた。

 大滝からやや急な谷沿いの道を登り、なだらかな尾根上の広い登山道を進む。見晴らしのよいコツブリ山頂にはたくさんの人が休んでいた。山頂から下って、わずかに石川県側に入った沢の源流部がミズバショウ群生地だった。ササやぶに囲まれた約5000㎡に2000株がゆるい清流の中に伸びていた。まだ、開花の初期のようで、仏炎苞と言われる花の白さは輝くように高純度だった。苞を出していない株も多かった。周りにはトラロープが張り巡らされている。写真撮影の好ポイントにはわが一行も含めて大勢の人が陣取っていた。盛況の博物館内のように、一カ所で腰を落ち着ける雰囲気ではない。

 匂いについては、特別なにも感じることはできなかった。というより、周りの混雑で嗅覚も働かなかったようだ。この群生地は関西や東海地方からの登山者が押し寄せる有名なところだ。混雑は予想できた。ならば、土日を避けるなり、時間をずらすなどすればよかったが、とにかく想定外で、そこまで思いつかなかった。

 ミズバショウについて、後で調べると二つの点に興味を持った。「夢見て咲いている」うちはいいが、花が終わると茶色に汚れてだらりと垂れ下がり、葉は1㍍にも伸びてやがてだらしなく倒れ込む。北海道ではこの様相からミズバショウを「ベコノシタ」(牛の舌)と呼ぶ。なるほどと思う。能郷白山近くの姥ケ岳山麓で見たのが、まさにその姿だった。若い花の季節は美しく、やがて老い衰えしぼむのは万物共通の理だろう。ミズバショウのきれいな花の時しか知らない人は、物事の一面しか知らないということだ。

 一方、匂いについて、「夢見て」匂うような「よい匂い」説には疑問があるようだ。ブログには「線香の香りのようだ」とも「炊きたてご飯に香水をぶっかけたような香り」といった記事があった。同じサトイモ科のザゼンソウの花の悪臭はよく知られている。しかし、アメリカミズバショウはかなりの悪臭を放つというから、日本のミズバショウは近縁のザセンソウと同じく個性的な匂いを持つのであろう。その匂いをいつか、静寂な群生地を訪れ確かめたいものだ。

 群生地を早々と引き上げて、ごったがえす取立山三角点脇で長い昼食休憩。座る空間を確保するのに苦労するほどの人だった。遠足の保育園児たちや若い人が結構いたことは、登山の未来にとってうれしく思った。

 昼食を終わり、登山者をかき分け最高点に立つと、残雪でまだら模様姿の白山主峰が黄砂現象による霞みの向こうに浮かんでいた。

<ルート図>

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