大垣山岳協会

岳山そして、尾根歩き 山に教えを求めて 2024.03.14

岳山(関)

【 個人山行 】 岳山 ( 599m Ⅱ△ ) SM

 岐阜県七宗町の最北部にある岳山(△Ⅱ 599m)から尾根筋をぐるりと半円形に 巡り歩いてきた。地元の人も入ることの少ない明るい枯葉堆積の尾根。かつては、マツタケがたくさん取れた松山だったが、今はヒノキや雑木の濃い山林となった。さらに尾根の下部にはやたら林業作業道が増えた。ために、方向感を失い苦労した。

  • 日程:2024年3月14日(木)
  • 参加者:SM(単独)
  • 行程:14日6:50自宅発⇒尾張パークウェイ⇒国道41号⇒七宗町中心街⇒県道64号(旧飛騨街道)⇒神渕上中切⇒上八日市集落駐車地(岐阜県七宗町神渕上八日市)
    駐車地発8:35→9:00尾根上に出る→10:00岳山山頂10:30→11:25町道出合→12:40点名栃木ケ洞(505m△Ⅳ)→1:50作業道出合→2:40西洞入口→3:20点名西ケ洞(410m△Ⅳ)→3:40作業道出合→3:55町道出合→駐車地4:15
  • 地理院地図2.5万図:美濃川合

 2020年11月に関市上ノ保の低山に登った際、目指したが、時間切れで退却した岳山に再挑戦した。今回は反対側の上八日市集落から登り、さらに集落を取り囲む低い峰々筋を巡り歩こうと。集落の住人の方に登山道を聞いて八日市川の枝谷沿いの林道を歩き出す。一般的な登拝道と別れて、途中で北側の尾根に上がる。薄い踏み跡があるが、山林関係者のものだろう。ヒノキ林の中にシイカシ類の小木が混じる。林外への眺望は全く効かない。標高520m余で関市上ノ保との境界尾根を確認する。後でこの尾根を下る予定だ。さらに、倒木やアセビヤブで難儀しつつ急な尾根筋を登り切り、岳山山頂に達した。

 家1軒分ほどの平地に神社(写真①=祠の前で)があり、直ぐ裏にⅡ等三角点の白い点石が立っていた。後で伺った上八日市のKTさんの話では、祠は岳山の南麓にある奥田集落が祀る秋葉神社だった。祠前から真南方向に奥田集落地が白い帯のように伸びているのが見えた。(写真②)また、この祠から南東に小道が付いていて、50m先には上八日市集落の愛宕神社の祠があるそうだ。知っていたら是非登拝したかったのにと悔やまれる。

写真① 岳山山頂 祠の前で
写真② 奥田集落地が見える

 山頂から往路を戻り、標高80mほど下った所で真北に進む支尾根に入る。激斜面を慎重に下ると荒堀りの作業道に出た。地図にないこの手の作業道が多い。地形判断を狂わせるので要注意である。これを突っ切り下ると上八日市から関市上之保に通じる舗装町道に出た。すぐ町道の北側の山林内の沢筋に入り、枝尾根に取り付く。人工のスギ、ヒノキはなく落葉の小木が並び立つ。(写真③)地面には厚い落葉の堆積。暖かい日差しがうれしい。標高500mほどで上八日市集落をぐるりと囲む尾根に出る。尾根北側は明るい南斜面と違ってヒノキ4.50年生の人工林が密生し暗い。

写真③

 小さな丘を二つ超えて目標の点名栃木ケ洞に着いた。(写真④)小広い枯葉の原に座り、遅めの昼食を採る。次に目指すのは三角点名西ケ洞。集落を囲む尾根を南西に進み約2㎞先にある。順調に進むが踏み跡はほとんどない。茂るヒノキやシイ、カシ類の樹木で外部への見通しはほとんど効かない。地図に載る送電線を探すが見当たらない。やがて、猛烈な急斜面を下り始めた。変だなあと思いつつ進むと荒れた森林作業道に出てしまった。これが、ずっと先に出る予定の林道だと思い込んだのが間違いだった。ブルドーザーで道の整備工事をしていた森林組合の運転者に聞くと、ここは尾根の北側の作業道だと教えてくれた。つまり、南西尾根の途中で誤って北側の枝尾根を降りてしまったのだ。

写真④ 点名 栃木ケ洞

 あちこち道探しに時間をかけた末、上八日市に出る舗装林道に出た。そして、最後の目標である点名西ケ洞に向かう広い沢筋に入った。小さな小山2つを越えた後、小高い山頂の倒木の下に三角点を見つけた。(写真⑤)当初の目標を果たして、気が緩んだせいか、北に戻るべきだったのに、同じような地形の西側に下りてしまった。赤布を丁寧に付けなかった上、地形図での方位確認を怠ったのだ。50mほど降りると地図にない荒堀の古い作業道にでた。これをしばらく進むと中八日市の町道に出て、間もなく上八日市の駐車地に戻ることができた。

写真⑤ 点名 西ケ洞 三角点
写真⑥ 上八日市の集落と北側を取り巻く尾根筋(正面奥の山は栃木ケ洞)

 駐車地のすぐ近くのKTさん方を訪ねてお話を伺った。岳山山頂の愛宕神社では毎年1月20日前後の日に例祭をして村の信者たちが登拝している。子供を含めて20人以上が登った年もあったという。

 ただ、雨や雪の多い時は登らずに、集落内にある白山神明神社にある灯篭を岳山愛宕神社に見立てて拝礼している。今年も指定日が大雨と重なり、灯篭参りとなったそうだ。また、山頂には愛宕神社の西50mに岳山の南部にある奥田集落の秋葉神社の小祠もあるという。事前に知っていれば、私も参拝したかった。ただ、両集落とも若い人の数が毎年減少していて、山の神様信仰の維持が難しくなっているようだ。一方、栃木ケ洞から西洞の尾根の内側の山林は昔、松を主体とする天然林だった。60年ほど前の伊勢湾台風でほとんど倒れたが、その後再生し、マツタケの産地として栄えたが、30年前のマツクイムシによる虫害で全滅、今はマツも若干は再生したが、真っ黒い林になってしまった、との説明を頂いた。

 私は名もない道もない山野を歩くことを生き甲斐にしている。日本の国土面積の67%は厚い樹林で覆われた山林山野である。岳山山頂からの眺めを見ているとつくづくそう思う。狭苦しい平地をせわしなく車で駆け回る生活だけでは見逃してしまう大事なことがあるはずだ。広い山野にこそ本当の教訓や知恵をつかめそうに思う。

 一つ心残りがある。岳山山頂の愛宕神社のすぐ右に立つ句碑の文字である。(写真⑦)古い時代のもので劣化して読めない文字がある。「ひだ〇母の 紅葉色映ゆ 嶽の峯 山岡 正隆」と読んだが、第1句目がどうしても読み取れない。「嶽の峯」はこの岳山のことだろう。紅葉の盛りにここに登拝して歌ったのだろう。山岡正隆なる人物についても知りたい。KTさんも知らないそうだ。知る人を探したいのだが。完

写真⑦
<ルート図>

発信:3/17

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