大垣山岳協会

台風7号の爪痕を越えて・タンポ 2023.08.27

タンポ

【 月例山行 】 タンポ ( 丹保、点名・月夜谷山 1065.7m Ⅰ等△ 美濃百山C級 ) 揖斐川町小瀬 NT

 当会指定の美濃百山C級・タンポを高地谷から登った報告である。林道歩行が長くゆるゆる登山で行きますと林旬Lは出発にあたって述べられた。ところが15から16日に通過した台風7号の爪痕は意外に深く、山の斜面を削り谷の押し出しの土砂はたっぷりと水を含み大量のヒルの巣窟となって記憶に残る山行となった。

<ルート図>
  • 日程:2023年8月27日(日) 晴れ
  • 参加者:L.HT、AM、OS、OM、KM、KM、SE、NT、FT、MY、MK、MM
  • 行程:駐車地7:04-白倉谷出合7:15-崩壊地8:14-雷倉分岐10:03-山道取付10:35-タンポ山頂11:06~45-駐車地14:28
  • 地理院地図 2.5万図:樽見

 白倉谷出合手前500m付近で谷からの押し出しが有り乗用車では越えられなかった。準備中に板取西ヶ洞から白倉谷へ転戦したH組が到着した。彼等より一足早くスタート。

 点の記では俗称タンポとカタカナ書きだが地元では丹保と漢字で書き呼んでいるようだ。

 大きな押し出しで林道は土砂の下、台風7号は思わぬ深い爪痕を残していた。そして土砂は大量に水気を含んでおり足元をよく見るとヒルが鎌首をアンテナのごとく前後左右に振っているではないか、それも1匹や2匹ではなく慌てて足早に通り過ぎた。

 道も乾いたところが現れず安心して休める場所が見つからなかった。そうこうしているとズボンに血がにじんでいるのを見つけた。献血者第1号である。

 振り返るとHL以下の沢組が追いついて来た。「沢を止めたのか」と尋ねると水量が多く入渓場所を変更したようだ。林道が本谷を跨ぐ此処が彼等の入渓地となった。

 道は谷から離れて西へ向きを変えると北の方向に山が見えた。もっと開けると三座同定は容易なのだがA4サイズのコピー地形図しか持ち合わせていない。おそらく花房山から雷倉へ続く稜線と思われた。

 此処まで順調に来たのだが前方がえらく騒々しい。傍まで来て唖然、斜面が大規模に崩壊して林道は見えず谷迄斜面となっている。何処から、どうやって取り付けばと一瞬戸惑った。

 山頂尾根の藪が濃かった場合を想定し鋸を持参していたのが功を奏した。邪魔な木を切って崩壊した斜面を登り不安定な浮石は谷に落としてルートを確保した。

 林道への降り口の足場が遠くてロープが有れば安全に下れる。だが、今日は林道歩きが主なので持参していない。下へ声を掛けるとFさんが持っておりこれを固定して全員が通過した。およそ30分のロスをしたが単調な林道歩きが刺激のある山登りとなった。

 その後も爪痕は所々に有ったが歩行に大きな支障をきたすほどでは無かった。

 高度は稼いでもこのように湿気の多い場所ではまだまだヒルが隙を伺っており油断が出来なかった。ストックを伝って登って来たのか休憩中に掌を開くと吸血鬼が「ごちそう様」とばかりにたらふく吸血して丸々に太って居座っていた。

 雷倉との分岐で小休「雷倉まで4㎞、丹保まで1㎞」の標識が有った。Sさんは胃袋を3分の1にカットしたとかで小まめな栄養補給が必要だ。ポッコリ腹が随分とスマートになって軽くなった分、スピードが増して以前より断然強くなって絶えず先頭を歩いていた。

 北西の方向に花房山から雷倉へ続く山並みが見えて奥に双耳峰の金草岳と南壁を擁したピラミダルな冠山、少し離れて三角錐の若丸山が白い夏雲を背に浮かんでいた。地道も乾いておりヒルの心配はもう無用で安心してザックを降ろせる絶好の休憩ポイントである。

 林道が大きく弧を描いて南へ向かって僅かであるが下りだした。ヘアピンが西へ向きを変える所に赤布の目印と切り株の上にケルンが積まれていた。此処からタンポへ向かう尾根の斜面へ取り付いた。ヒノキの植林帯は手入れされて下草もなく歩きやすかった。

 尾根へ上がり進むと東の根尾側は人工林、西の小津側はリョウブなどの疎林となっていた。尾根上の境界付近は伐採された木が足元に有って歩き辛かった。今年の1月に小津から小山経由で訪れたが雪の下になっていたのだろう気が付かなかった。

 点名・月夜谷山。岐阜県に17点有るⅠ等三角点のうち先週の御前山に続き2週連続での踏破である。表土が流れて歯槽膿漏状態の石柱をよく見るが埋設時の状態を保っていた。

 山頂は平らでメンバーの休憩には充分な広さで有った。通り過ぎて南を望むと濃尾平野が一望出来た。西や北、東方向は雲が邪魔をして白山や穂高、御嶽山は見えなかったがタンポの上には青空があった。

 直射日光を避けて小津側の疎林の中で休憩すると月尾谷から涼気を伴った風が吹き上げて夏山を忘れるほど心地よかった。楽しい語らいの昼食休憩であったが空を見上げると俄かに雲が湧き青空は消えている、雷雲の予感がした。この頃は大気が不安定で雷雨が多い。リーダーは休憩を15分早く切り上げると撤退指示を出した。将棋では「王の早逃げ八手の得」という格言がある。全員一目散に退却した。駐車地に着き靴を脱ぐと何人かは此処までヒルを連れて来ており又ひと騒動であった。着替えを終えて出発するとポツポツ落ちてきて車中で遠雷を聞いた。

 今山行では想定していない土砂崩れの現場に遭遇した。登山とは自身の技術や知識を駆使して障害を越えることと認識している。それが及ばねば潔く撤退する、その見極めも登山技術であると信じている。今回、林道歩きが主でありシュリンゲやカラビナ、補助ザイルを持参していなかった。幸いにメンバーの一人が持っており助かった。やはり、どんな山であれ雨具やランプ、地図磁石、ツウェルトと同じく技術を駆使できる装備は必携である。完

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