大垣山岳協会

ヤブ山周回・蕎麦粒山 2021.09.16

蕎麦粒山
蕎麦粒~小ソムギ間の鞍部のブナ林とヤブ

【 個人山行 】 蕎麦粒山 ( 1296.6m Ⅱ△ ) 丹生 統司

 蕎麦粒山へ最初に開かれた登路は大谷川源流域より小ソムギの肩へ突き上げる尾根であった。県民スポーツ山岳部門がここで行われ参加した記憶がある、30年ほど昔のことだ。最近使われていないこの尾根道を確かめたくなった。蕎麦粒山から下山は西尾根経由ジャンクションを経て大谷川西又谷出合の駐車地へ周回する計画である。(写真は蕎麦粒~小ソムギ間の鞍部のブナ林とヤブである)

<ルート図>
  • 日程:2021年9月16日(木) 曇り
  • 参加者:単独
  • 行程:大谷川西又谷出合ゲート6:50-ミヤマ谷8:40-小ソムギ南尾根取付き9:30-小ソムギ肩ジャンクション12:10-蕎麦粒山14:40~15:05-西尾根ジャンクション16:50-大谷川西又谷出合ゲート18:10
  • 地理院地図 2.5万図:美濃広瀬

 台風14号で明日から又雨との予報で束の間の晴れをついての計画である。大谷川の堰堤工事は数年前から続けられており随分長い。指定の駐車地に停めて出発した。

 大谷川沿いの廃林道は草木が伸び放題でナタで邪魔な蔓を切りながら進んだ。顔面は蜘蛛の巣に用心し足元はヒルに注意した。休憩時に点検するとスパッツにウジャウジャ12匹退治した。ミヤマ谷を過ぎて山道から谷に降りるとトチやサワグルミの巨木林が美しい。

 蕎麦粒山の標識を見つけて取り付きを目で追ったが分からず少し下って空谷から取り付いた。直ぐに岩場となって危うい恰好で木の根や幹を掴んでひたすら上を目指した。

 岩場の急登を数ヶ所越えた。シャクナゲが岩に根を張ってホールドやスタンスを提供してくれるのは有難いがこのジャングルを抜けるのに見極めと体力を必要とした。

 標高800m辺りで旧登山道の踏み跡に合流した。踏み跡があると歩きやすく案外早く登れそうな予感がしていたが直ぐに倒木が現れ越すのに難儀をした。

 尾根が細くて回りが見通せる所で一休みした。小ソムギから急傾斜で落ちたV字の底が五蛇池峠で五蛇池山は雲の中、大谷川は五蛇池峠の斜面に消えていた。

 ナナカマドの実が赤くなり秋が近くに来ていることを感じた。しかし、これも藪を構成する一木で、シャクナゲ、ツゲ、ソヨゴ、ユズリハが踏み跡を覆って邪魔をした。旧道の踏み跡を発見した時は12時過ぎに山頂などと案外楽に登れると確信したが甘かった。

 踏み跡の上に覆った藪を掻き分け時に潜って進む、藪漕ぎに疲れていた中で初めて目印を発見した。これまで境界杭は幾つか見たが登山目的の目印は初めてで勇気をもらった。

 ムキタケだろうかヒラタケだろうか、キノコを割いてみたが黒いシミがなくツキヨダケではないと思われた。藪漕ぎでへたばっており採取する気分は起きなかった。

 シャクナゲのトンネルは四つん這いで潜った。ザックや肩ヒモが枝に引っ掛り辛い。踏み跡を見つけた時は12時半に蕎麦粒山頂と読んだが甘かったようだ。しかし小ソムギのジャンクションまで行けば踏み跡は明瞭で藪の丈が低くなり解放されると確信していた。

 岩が出て明るくなり樹木の丈が低くなってジャンクションが近いと予測された。先行きが見通せて希望が湧いたが台風の影響か雲が低く天気は今一、対岸の五蛇池山は雲の中である。ミヤマ谷から湿気を含む風が吹き上げ気持ちいい。

 小ソムギの肩、標高1170mジャンクションに着いた。この岩に立つと蕎麦粒山や小ソムギ、五蛇池山が見渡せるはずだが生憎のガスで隠されていた。周りの灌木の丈が幾分低く感じた。此処まで来れば山頂は近い、13時頃には蕎麦粒の山頂と言い聞かせた。

 蕎麦粒山から小ソムギは積雪期に2度通過しているが様相は全く違った。踏み跡を辿れば1時間も有れば着くと思ったが、その踏み跡もジャンクションからの下りで見失った。根曲がり竹が下るにつれ高く太くなり背丈を越えて頑強に抵抗した。

 蕎麦粒山へ続く鞍部は長かった。尾根が細くなると獣が保全した旧道が現れてやれやれと思う間なく20mも進むと又根曲がりと株立ちの灌木の藪、行く手を遮られ手を焼いてヘトヘトとなった。

 最低鞍部付近のブナ林である。根曲がり竹の抵抗は激しく親指大の太さの竹を分けるのは肩が凝ってだるくなった。ジャンクションを出る時の目標13時はとうに過ぎて14時にしたがそれも叶わなくなり時間がどんどん経過していった。

 西に向かっていた尾根が南に方向を変えると山頂への急登が始まり踏み跡が明瞭になった。根曲がり竹がいつの間にか消えて歩きやすくなり背丈より低くなった灌木を分けて山頂に立った。三角点標石は洗剤で洗ったように綺麗だったが文字面左角が欠かされていた。

 この三角点標石の頭をなでるのは何度目だろう。近年積雪が少なく狭い山頂は冬でも三角点の発見は容易だからこの頃毎年拝んでいる。小ソムギ肩のジャンクションから2時間半を要して辿り着いた感慨も有ってか今日は標石の頭を叩くように数度撫でた。

 天気が良ければ穂高や白山、南は伊吹山まで360度展望が得られるはずだが台風の影響か能郷白山や対岸の五蛇池山さえも雲の中に隠した。それでも苦労して越えて来た小ソムギからの稜線がガスの中に浮かんでいた。ナナカマドの葉や実が色付き始め秋の始まりを感じさせる山頂だった。

 初めて蕎麦粒山に登ったのは20代の中頃だった。当時奥美濃の山の登路といえば蕎麦粒山に限らず谷を登るしかなく、その時はミヤマ谷からであった。ミヤマ谷の遡行は難易度的には困難な箇所はなくザイルは使用しなかった。が、谷筋が消えてからが大変でシャクナゲの激藪を泳ぐような格好で突破し山頂に立った。20代の盛りで馬力には相当自信を持っていたが難儀をした記憶が残る。ハイ松の藪漕ぎと同程度にシャクナゲが手強いことを学習した。下降は山頂から大谷川へ落ちる南尾根を下れるところまで下り、岩場を赤石谷に向かって懸垂下降をした。この時、赤布に会名とメンバー名を記入して三角点傍の木の枝に括り残していたが、ある時京都の誰かが見つけ「大垣の誰それが・・・」ある書籍の蕎麦粒山紹介の記事に出ていると後日誰かに聞いた。書籍名は忘れてしまった。

 今日、下山路に使用した西尾根は勝手知った道と思っていたが笹丈が伸びて油断すると踏み跡を外しそうな個所も有った。年々藪が濃さを増して夏は敬遠されて積雪期限定の山に還りつつあると感じた。

 標高1000mのジャンクションからは笹竹も低くなり歩きやすくなった。落ち葉に隠れた木の根や石に注意して夕暮れと競争で斜面の道を駆け下った。大谷川はいつも通りの深さでスパッツをつけたまま早足で渡渉した。夕暮れ前に車についてやれやれ終わった。完

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