大垣山岳協会

山中雑記 丸山とコウハセ宿

TOPICS・随想・コラム

月報「わっぱ」 201年月(No.390)

丸山とコウハセ宿 鈴木 正昭

 私は4月末、白山山系石徹白(いとしろ)の丸山(1786m)に登った。昔の白山登拝古道(美濃禅定道)だった登山道の神鳩(かんばと)避難小屋の上で東尾根に入り、広い雪原の南端にある頂上に達した。丸山は当会選定の美濃百山C級40山の中で未踏だった最後の山だ。加えて、この山のすぐ南麓には、白山修験道の行者道「鳩居(はとい)十宿」のうちの「コウハセ宿」があったという宗教民俗的興味の深い山でもあった。

 鳩居十宿を知ったのは石徹白出身の上村俊邦氏の著書「白山修験の行者道(99年刊)」を読んでからだ。それによると、白山修験では美濃からの入峰を鳩居といった。修験者が行をする所を「宿」といい、基点の長滝寺(白鳥長滝)から神鳩小屋のある神鳩宿までの間に10の宿があった。そのコースは一般信者向けの美濃禅定道とは違って、凹凸の激しい尾根道続きの激やぶの道だった。信仰の衰退とともに明治以降、道と宿は消えた。

 古文書にある10の宿のうち、祠などが現存する2宿の他は、所在位置は不明だった。上村さんら研究者は1992年以降、激やぶの尾根筋を踏査した結果、多和宿と中州ノ宿の2宿の跡を発見した。他の6宿は位置不明。上村さんらが特に力を入れたのは神鳩宿に一番近いコウハセ宿の踏査だ。丸山と芦倉山の間の鞍部を数回探査したが、未発見のままだ。

 丸山山頂部の南端から眼下に芦倉山から天狗山、大日ヶ岳に至る鳩居十宿道の尾根筋が見えた。あと150m程下れば、上村さんらが踏査していない平坦部を見ることができる。だが、尾根の一部にササやぶ露出帯があり、戻るのに相当な時間を要する。あきらめて引き返した。仮に下っても、まだ1mほどある雪で発見は無理だっただろう。

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