月報「わっぱ」 2014年4月(No.389)
雨乞い堂
今年1月下旬に岐阜県白川町にある白酉山(1088m)に登った。雪を被ったヒノキ林内の丸い丘の上に「白鳥山頂上 白鳥権現」の道標があり、その隅に小さな木製の祠(写真①)。笹の枝に渡したしめ縄が新鮮だった。
この祠について大垣山岳協会現会長の高木泰夫氏が25年前に登った際の山行記録(「美濃の山3」)で触れている。祠には「東部三組の村民が雨乞いを願い、お陰で降雨あり田植えができた。御礼に本堂を建設す。昭和四年七月」と記す札があったそうだ。しかし、それを私は確認しないまま下山した。帰宅後、地元の白川町中新田の林業家、Fさんにうかがうと、札は祠の中に立てかけてあるという。
Fさんは、かつて父親から中新田、奥新田、増淵の人々が干ばつの夏に山頂で雨乞いし、お礼に祠を建てたことを聞いた。当時は白鳥権現と刻まれた石柱があっただけだったが、30年ほど前に現在の祠を建造した。Fさんは山頂を含む山林約15㌶を所有しているが、権現さんの境内として山頂部の60坪ほどを、管理する東黒川自治協議会に寄付したという。毎年続いた雨乞い儀礼は戦後数年後に消滅した。
しかし、今でも毎年11月には関係者が登山して祠に参拝している。地域住民の安全や田畑の豊作を祈願するという。85年前に始まった雨乞い儀礼の精神はまだ健在だ。山間地の人々の心意気に感銘した。いつか秋の登拝に同行したいと願っている。
(鈴木 正昭)
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