月報「わっぱ」 2012年11月(No.372)
山書巡歴 ⑧ 自然・登山・探検 今西錦司書簡集
日本山岳会岐阜支部は先頃、創立40周年を記念して上記の書を刊行した。その業に当たった小西利雄氏ら数人は本会会員または会友であり、親しみのある一冊として紹介したい。
今西先生はいうまでもなく、日本の霊長類学、動物社会学、そして登山、探検のパイオニアであり、巨峰であった。
先生との交流は1960年の高賀山から始まった。日頃から京都北山、鈴鹿が終わったものは奥美濃を志すべきだ」と語っていた。それから何度も山行にご一緒したが、山のみならず宿での酒宴も楽しかった。談論風発。興が乗れば夜半まで続いたものだ。
本書はそうした人々との交流の様子を集録したもので、提供者は藤井茂雄、伊藤潤治、恩田善雄、高木泰夫、増永迪男、小西利雄、高木碕男の各氏である。既に先生が亡くなられて20年を経ている。書簡を受領した本人が鬼籍にあることもあるだろうから、散逸した書簡もあろう。だが、よくもこれだけ集められたものである。今後の今西錦司研究に大いに役立てて欲しいものだ。
内容は先生自筆の書簡のコピーとその活字化したものが並列されている。まるで、自分に頂戴したような錯覚を覚え、あたかも先生が脇に座っておられるような気分になる。その多くは登山の打ち合わせに終始しているが、それでよいのだ。すなわち先生との接点はここに尽きているから。
(高木 泰)
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