大垣山岳協会

山書巡歴 ⑦ ブータンという国と山と

TOPICS・随想・コラム

月報「わっぱ」 2012年10月(No.371)

山書巡歴 ⑦ ブータンという国と山と

 ブータンはヒマラヤ山脈の東端に位置する人口70万人、面積は九州ほどの小国である。一昨年若いワンチュク国王夫妻が来日されて、その典雅な挙措、慈愛に満ちた眼差しにすっかり魅せられて急激に近しい存在となった。

 この国はGNPに変わるGNH(国民総幸福量)の向上を国策としている世界唯一の国であることも大いにひかれるところだ。物質的な豊かさだけでなく、精神的な豊かさの向上を目指している。2005年の調査では国民の97%が「幸せ」と答えている。この愛すべき小国がこのままでいて欲しいと願い、温かく見守りたいものだ。

 さて、ヒマラヤの一端にあるだけに7000m峰が林立している。従前、最高峰はクーラ・カンリ(7544m)とされていた。しかし、1958年に中尾佐助大阪府立大教授らがブータンを探検調査した結果(『秘境ブータン』中尾著 1959年毎日新聞社刊)、チベット領にあることが分かり、その南峰ともいうべきガンケール・プンズム(7541m)が最高峰であることが分かった。この山には、尾形好雄らの日本ヒマラヤ協会隊が1985年に挑戦したが果たせぬうちに、87年ブータン政府は宗教上の理由などから、この山の永久登山禁止を決めた。故に、今も世界の未踏峰の最高峰であり続けている。

 ブータン2位の山はチョモラーリ(7315m)で、英国人により、1937年に登頂された。余談だが、登頂者、S.チャップマンは第2次大戦のマレー戦線で日本軍の捕虜となった。だが、その後脱走に成功した。

(高木 泰)

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