大垣山岳協会

山書巡歴 ② 山でクマに会う方法

TOPICS・随想・コラム

月報「わっぱ」 2012年5月(No.366)

山書巡歴 ② 山でクマに会う方法

山でクマに会う方法 米田一彦著 ヤマケイ文庫

 4月といえば、山でクマが蠢動を開始する時期である。これに合わせて今回はクマに関するこの本を紹介したい。

 もう10年も前になるが、吉村昭氏の『羆嵐』を取り上げた。時は大正3年、北海道の天塩山地から西流する六線沢の開拓地で起きた事件である。まず、小屋にいた母子がヒグマに食い殺された。その通夜の席に再び暴れ込んだが、人が多く騒いだので退散した。ところが、その帰り道で別の家に侵入して、一家4人を殺害した。大惨劇である。ついに軍隊まで出動することになったが、彼らの放った鉄砲は一発も当たらず、銀四郎という風変わりな老猟師が仕留めてこの事件は終わった。

 著者の米田さんは本の中で「クマは本来、憶病で慎重な動物」だとしているが、どんなものだろう。確かに内地産のツキノワグマはヒグマに比べれば温和しいかもしれないが、用心することに越したことはない。まずは敬して遠ざけるべきである。あるいはクマの沢山いそうなところへは近づかないことだ。氏によれば7月頃にはクマはシシウドを盛んに食べる。従って、これがたくさん生えているようなところでは十分注意を払うべきであることをこの本に教えられた。

(Y・T)

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