大垣山岳協会

山中雑記 「鳳」の字の石柱

TOPICS・随想・コラム

月報「わっぱ」 2013年11月(No.384)

「鳳」の字の石柱

 夏の猛暑の名残を感じる10月3日、奥三河の宇蓮山(924m)~棚山(760m)の尾根筋を歩いた。宇蓮山から南西に棚山に延びる尾根の北西側は棚山国有林だ。尾根筋を行く登山道脇には各所に国有林の境界標(石柱)が立っていた。境界標は約40mごとに立っているが、その幾つかの隣に見慣れない白い石柱(写真、倒れていた)。計10本弱を見つけた。表面にはただ一字「鳳」の文字が刻まれていた。なんのために、どこの団体が立てたのか。

 高さ50cm、10cm角ほどで、文字は鮮明だった。鳳の字なら、一帯が属する鳳来寺町(現新城市)か、三河の古刹、鳳来寺が関係しそうだ。鳳来寺ならここに寺領があったかもしれない。

 まず、林野庁愛知森林管理所に聞くと、国有林関係ではないが、尾根の反対側は愛知県有林なので、聞いてみたらと言われた。

 そこで、愛知県有林事務所に問い合わせた。それによると、宇蓮山から棚山の尾根の南側には県が造林管理している県行造林地479㌶がある。この山林は鳳来寺の寺有林で、1923年(大正12)に県が地上権を取得して造林育成をしているのだという。水源確保などのため、健全な樹林を育てる狙いだが、利益を寺と分かち合う分収林でもあった。

 事務所の担当者は「石柱は県が地上権を得た後にその境界に建てたものだろう」という。もっと後に建てたものには「愛知県」の記載があるそうだ。鳳来寺との分収契約の期限は95年だったが、その後、契約期間を延長して2033年に満了となり鳳来寺に返す予定だ。今でも少しずつ造林しているというが、分収事業を始めて110年。山林育成の息の長さを痛感する。一度、その成果を現地で見たいと思う。

(鈴木 正昭)

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