2024年5月某日、峠の駐車場は既に満車状態、登山道が整備された人気の尾根のようだ。出発準備に入ろうとしていると又1台上がって来た。車から下りて来た顔を見てビックリ、当会のTS女史と元会員のGとNである。久方ぶりに懐かしい顔に出会って一緒に登ることにした。それにしても先日の「コザト~霊仙山周回」といいサプライズ登山が続いている。
樹々の新芽が萌えて眩しい、肺の奥底まで萌黄色に染まりそうな5月の晴天であったが未だ風は冷たく緑のトンネルを早く抜けたかった。
先ずはチゴユリの花の出迎えを受けた。
やがて傾斜が増してくるとカルスト地形となって石灰岩に沿うようにヒトリシズカが咲いていた。
ハクサンハタザオと言うようで彼女らに教えていただいて本日の収穫となった。
峠から約1時間で白い石灰岩が散らばる台地に着いた。シカに食まれて伸びきれない草地の台地にはシカの糞がばらまかれたように残され青空にカエデの新芽が映えていた。
ここはS前理事長のお別れ会を行った所で「いつかある日」を合唱し見送った。本日、彼女らとの遭遇は彼の導きなのかもしれない。北に能郷白山が見える。彼女たちは北に向かって手を合わせた。
カルスト地形の山にはトリカブトが多い。トリカブトの猛毒は誰でも知っているが花は標高が増すごとに青さが増してその綺麗さの虜になる。花期は8月頃、大群落を横目に見ながら木洩れ日の林を進んだ。
何度も来ている尾根なのだが池が有るのを初めて知った。シカ害によって周りの小低木が枯れて見通しが利くようになり発見が容易になったのだろう。
今日の主目的はエビネランの花観賞である。エビネは石灰岩カルスト地形の斜面に多い。冬季の尾根や斜面に緑が少ない時期に青物が有れば大概エビネかオモトである。
此の株はガク片が濃い茶色で花は薄ピンクであった。地エビネにはこの種が多い。
エビネの花を見つけスマートフォンを構えるカメラウーマンたち。
遅咲きのイチリンソウ、群生しているのをよく見るが既に花期を終えて一輪のみ残っていた。
石灰岩の岩がむき出しで陽当たりの良い南向きの斜面に腰を下ろして昼食休憩とした。幾組かの登山者が追い越して行った。エビネなどの花で人気の尾根となったのだろうか。
能郷白山が黒い山体を横たえてその右背後に白山がこの季節にしては少ない雪を抱いている。柔らかい5月の陽射しを浴びて久方ぶりの再会に話が弾むと休憩が長くなった。思わぬ長居にこの先の高み迄足を延ばすつもりであったが行く気が失せた。高みは今日の登山者の盛況具合なら腰を下ろす場所が制限されるだろう。いつでも行ける山だ、次回に残して下山することにした。
山で偶然知り合いに会うことは珍しいことではなく幾度かある。若い頃には前穂高東壁や錫杖岳前衛フェースの壁の中で懐かしい顔に出会ってザイルを結んだことも有る。
平成4年8月のある日、奥美濃の人も通わぬ、とある谷で釣り糸を垂らしていた。竿先のアタリ求め集中している時に背後から急に声を掛けられ獣にでも遭遇したかのように心臓がドッキリした。振りむくと当会の馴染みの顔であった。その頃の小生は仕事にかまけて籍や役職はそのままに久しく山から遠ざかっていた。SYやOMさんに続いて現れたTY先生には「天網恢恢疎にして漏らさず」と言われた。勿論、納竿を命じられ藪漕ぎの先頭に立って一緒に山頂に立った。32年前の懐かしい思い出話である。完
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