大垣山岳協会

大乱木・上谷 2021.03.18

点名・上谷

 下呂市金山の近郊山域にある標記2つの3等三角点に登ってきた。2点を結ぶやや長い尾根筋をたどり通した。樹林のトンネルの中ばかり。周囲への見通しはほとんどゼロ。地図とコンパスをにらめっこしながらの4時間半。結構な時間を要した。ある登山の先達は、道のない所を歩くには直観に頼るしかない、という。私にはそのような天性の直観力はない。地道に時間を投入するほかない。お陰で、楽しく有益な一時を得ました。

【 個人山行 】 点名 大乱木おおらんぎ ( 773m △Ⅲ )、点名 上谷かみたに ( 564m △Ⅲ )  鈴木 正昭

  • 日程:2021年3月18日(木)
  • 参加者:単独
  • 行程:自宅6:30⇒国道19号⇒尾張パークウェイ⇒国道41号⇒金山・下妙見町交差点⇒県道86号⇒馬瀬川渡橋⇒左岸市道⇒植谷林道⇒8:30林道脇駐車地(標高約300m)
    駐車地8:50→中電KYB金山線巡視路→9:40点名上谷10:00→10:15送電鉄塔→11:30・546m点→12:20・726m点通過→12:35作業道脇谷3号横断→1:15大乱木1:55→2:15作業道脇谷線→2:45植谷林道合流→3:45駐車地
  • 地理院地図 2.5万図:焼石

 飛騨川は下呂市金山町中心部で上流に馬瀬川第二ダムや岩屋ダムを抱く支流の馬瀬川を派生する。その2つの川の間に広がる山域に入る機会を狙っていた。特に北奧にある大乱木の不思議で奇妙な名前はなぜ付いたのだろうか。登って調べようかなと。

 青空が広がる好天の朝、零下2度ほどの薄暗い林脇から中電鉄塔の巡視路を登り始める。この巡視路の存在は全く予想していなかった。地理院地図にも載っていない。かなりの急斜面にプラ階段が続いていて、なんなく点名上谷に登りついた。この巡視路がないと、倍近くの時間を要しただろう。ヒノキ林の間の山頂空地を覆う低いアセビやシキミの木枝の間に点石が控えていた(写真①)。記念写真を撮ってから、30mほど戻り、北東に延びる尾根に入り次の目標の大乱木まで3.5km弱の尾根筋歩きを始める。すぐに開けた小さな鞍部に中電鉄塔が現れ、その奧に行く先の尾根筋が見えた。右手東方奥に白い峰、小秀山辺りだろうか。

写真① 点名 上谷

 鉄塔の先から終始樹林のトンネルの中を進む。周りの眺望は全くない。テープ類もない。見えるのは針葉樹林だけとなるが、木々たちの優美で逞しい姿に見とれながら進む(写真②)。木肌の荒れた老木はゴヨウマツ(ヒメコマツ)であろうか。その奧にはコメツガ、さらに縦に長い亀裂が入ったコウヤマキの老木たち。ヒノキも混じるが天然木らしい。足元はそれらの落ち葉が堆積したふわふわマット敷き。よく見えないが、辺りの左右斜面は猛烈な急斜面であり、人工林は見当たらない。人の手の届かない険しい尾根筋だからこそ樹種たちの生存競争での実力が正確に現れた樹相だろう。あるいはうまく棲み分けた。その結果を目にしているのだ。

写真②

 しかし、気楽には歩けない。辺りの尾根筋は標高540mから600mまで何度も小さく上り下りする。しかも、小さく右に左に曲がる。頻繁に立ち止まり、地図とコンパスを凝視する。でないと左右の谷に下りそうになる。思ったより時間を食ってしまった。標高600mからは緩い登りが続き、東側からヒノキの人工林が迫ってきた。726m点で左折するのだが、小さくトラバースした。そこにヒノキの間伐倒木が行く手を塞いでいた。何度も跨ぎ乗り越えるのに、足筋肉が責め苦を強いられる。西側の谷の下から大規模な真新しい間伐の跡が上がってきていた。うっとり尾根歩きの夢心地が吹っ飛んだ。

 ヒノキ林の中を80mほど下り鞍部に下ると、びっくりたまげた光景。素掘りの荒げた作業道が西側の谷から延びてきていたのだ。実は計画作りの段階で谷の下から鞍部の200mほど下まで通じている脇谷作業道(地理院地図に記載)がひょっとすると延長されている可能性を“危惧”していた。予感は的中しまった。

 鞍部(峠)で作業道を横切り尾根に復帰。古いテープ類が散見されるので登る人の気配を感じる。小さなピーク3つ目の手前に朽ち果てて立つ枯れ木2本(写真③)。高さ20mほどの大木。そのすぐ先の直径約5mの小さな山頂に大乱木の三角点と大きな御料局三角点(写真④=カメラを載せた手前の石が現行点石)が並んでいた。

写真③
写真④

 「大乱木」の点名は直前の枯れ立ち大木2本と関係があるのかどうか。枯れ木を乱木と言ったのか。三角点が選点された明治38年(1905)、この2本はまだ壮齢だった。それが乱暴乱雑な容姿だったのか。ちょっと粗雑な見方かな。

 下山を開始してすぐ、北東の木立の間の小さな隙間に御岳の雪嶺を見つけた(写真⑤)。天空の彼方から我を見守っていただいているような有り難い気持ちに満たされた。標高645mの鞍部から脇谷作業道を下る。新設区間は2年前に出来て、峠から尾根の東側を巻き上がっているようだ。道は素掘りのままで、のり面上部から落ちた岩石が路上にあふれていて車は通れない(写真⑥)。崩壊前に間伐作業を終えたのか。後はどうするのだろう。往路時の途中で出合った間伐あるいは出材作業はこの林道を利用したものと推測する。だが、ヒノキ材は材木市場に出しても利益を得ることは困難だと、関係者からよく聞く。ヒノキ人工林における林道土木工事の公費無駄遣い問題をよく聞く。ここがその一例でないように願いたいものだ。

写真⑤
写真⑥

 植谷林道に出てヒノキ林を左右に見て1時間後に駐車地に戻った。完

<ルート図>

発信:3/23

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