大垣山岳協会

高岡山・点名祖父利(そぶり)巡登 2021.01.26

点名・祖父利

 下呂市金山町と関市上之保の市境界尾根上にある高岡山(603m△なし)と点名祖父利(518.3m△Ⅲ)をがさごそ巡り歩いてきた。低山ばかりだが、急峻な枯葉敷き斜面や岩稜尾根帯もあり胸躍るひと時を得た。ただ、ほぼ全山がヒノキ人工林内で周りの地形が隠れている。そこで絶え間ない方位や高度把握による正確な地形判断が欠かせない。大きなミスはなく順調な行程だった。それは直近の無様な迷走のお陰だった。

【 個人山行 】 高岡山 (603m △なし)、点名 祖父利そぶり (518.3m △Ⅲ) 鈴木 正昭

  • 日程:2021年1月26日(火)
  • 参加者:単独
  • 行程:自宅6:30⇒尾張パークウエイ⇒国道41号⇒井尻(下呂市金山町)⇒県道58号(関金山線)⇒袋坂⇒県道294号⇒8:10少合峠手前駐車地(下呂市金山町菅田笹洞)
    駐車地8:30→8:35市境尾根取付き→9:35高岡山→9:55点名大地ヶ洞(588.8m△Ⅳ)→10:40馬越峠→11:15林道横断→岩稜尾根→12:00・580m台形上山稜→12:50戸石峠→1:10点名祖父利→1:20戸石峠1:50→1:55祖父利林道出合→2:20 YS家訪問→2:40旧白山神社登拝道入り口→3:05前山集落→県道58号→県道294号→3:30駐車地
  • 地理院地図 2.5万図:美濃川合

 郡上市金山から関市上之保に抜ける県道294号の少合峠から北に延びる小さな尾根を登り始める。薄いが踏み跡や古いテープ類もある。最後に30度ほどの急斜面を越すと、東西に長い高岡山山頂部に達した。すぐにアセビの木の幹に文字が辛うじて読める古い山名板を見つけた(写真①)。

写真①

 そこから50mほど西へ進むと大地ヶ洞の点石。一休みしてから、いよいよ難関の北尾根下りだ。実は5日前の21日にここでお粗末な失態を侵したのだ。下り初めてすぐに西に分岐する尾根に入り込み迷走、2時間15分もうろついたあげく点名大地ヶ洞に戻ってしまった。リングワンデルング(周回迷走)と言える。どうして、あんなことに。放置しておくと失態を繰り返すという強迫観念にとらわれ再訪を決めた。

 一帯は見渡すかぎりヒノキ人工林の大木が密集している。尾根などの地形が見渡せないことがミスを呼ぶ。方位形と地図を丁寧に見ながら北方向を外さずに急な斜面を下る。もう一つ、頼りになるのは旧上之保村(現関市上之保)の青色の杭(上部には図根多角の表記)(写真②)。歩く尾根筋はすべて市境であり、この杭は50mほど間隔で見られた。各所で青杭にお世話になった。ほぼミスなく、標高410mのコルに着く。

写真②

 後で地元の人に聞くと、ここは馬越峠と呼ばれ、西側の菅田笹洞からの歩道が上之保少合に通じていたという。石のお地蔵さまが台石の上にすっくと立っていた。「宝暦十一年・笹洞」の文字が読めた。ふっくらとして柔和な顔つき。手を合わせる衆生を包み込む温かさを感じた(写真③)。

写真③

 この後は順調に市境尾根を進んだ。これも笹洞集落から上之保少合に繋がる現役の砂利道林道を横切って、約170m登る急登尾根に取り付く。上部の岩稜帯(写真④)では丁寧に足場を選び標高580mの台形上の山頂に着いた。以降の尾根筋は時折ヒノキ林が消えて広葉樹の小木やぶが出て苦労する。だが、尾根の遠景が見えて迷う心配もなく、戸石峠(笹洞の人の話)に着いた。

写真④

 点名祖父利は峠から40mほど上がった狭い尾根上のこぶにあった(写真⑤)。厚いヒノキ林の下、眺望は全くのゼロ。風が吹き始めて空に雲が広がる。すぐ、峠に戻って腰を下ろして昼休み。戸石峠は昔、笹洞地区から上之保の杉ヶ洞、杉ヶ野に行く生活歩道だった。その後、峠から200mほど下った所から笹洞まで祖父利林道が通じた。今は林道終点から峠まで歩道がついているが、上之保側の歩道の状態については知らない。峠から林道に出て昔の棚田跡を見ながらを下った先の木工作業場に居合わせたYSさんに道や山について伺った。

写真⑤ 点名祖父利 三角点

 氏は長年林業や狩猟を続けてきた林野の専門家だ。歩いた一帯の山林は菅田生産森林組合の所有林で総面積約200ha。ほとんどヒノキ林だが、出材人件費の高騰や安価な外材に押されて、市場に出すことが難しい。ヒノキは高品質の一部は出材しているが、消費者に軽視される傾向にあり苦戦している、という。歩いた経路に「菅山」と記載した白い看板がたくさんあった。昔は一帯の山をそう呼んだのかと思ったが、「菅田森林組合」の境界標として立てたものとYSさんの説明。別れを告げて、前山地区から笹洞白山神社への登拝歩道が昔、高岡山東麓の山中に通じていたと聞いたのでそれを通って駐車地に戻りたいと言うと、氏は登拝道入り口まで軽四で送ってくれた。各所にお地蔵さまが立つ古い歩道を歩いて、前山の白山神社大鳥居に着いた。複雑なコースをミスなく完登できたことは今後の行動に大きな支えとなりそうだ。また、消えゆく古い峠の姿、さらに人工林山野の苦しい現実の一端を目にすることができた貴重な山行であった。

 人間はしばしば、自分に都合の悪い事実やデータを自分の安楽安逸に合わせて曲解する。先日の経路ミスの最大の原因は方位事実を無視したわが頭脳認識力。つまり、高岡山の西麓に降りてしまったのに、馬越峠付近にいるだろうと誤認した。引き返す際に前方に見える高い尾根が高岡山であるのに、北方の580m峰と勘違いした。方位確認はしたが、誤差の範囲だとかごまかして判断。そのまま進み高岡山山頂部に戻ってしまった。

 歳を重ね頭脳の性能ダウンは当然の帰結だろう。普段の行動ではそんな不合理な判断をすることは考えられない?。そうではなくて、普段でも起こりうる事態と考えたい。何事も科学的事実(あるいは確定的な事実)に色をつけずに冷静に認識判断することを基本行動としよう。 完

<ルート図>

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