大垣山岳協会

高社山再登、暗闇林と砕石帯を考える 2023.07.15

高社山

【 個人山行 】 高社山たかやしろやま ( 416m Ⅲ△ ) SM

  • 日程:2023年7月15日(土)
  • 参加者:SM(単独)
  • 行程:出発地(国道19号内津峠から約600m東の路上)9:30→9:55中央高速下ガード→博国滝ケ洞採石場10:10→滝ケ洞林道→10:55池原神社→11:40高社山秋葉神社コース入口→11:55秋葉神社→12:40高社山山頂(416m Ⅲ△)1:10→南西尾根降下→1:30沢出合→1:40堰堤出合→廃林道→2:20県道16号横断→2:50中央高速ガード→3:00国道19号ガード→3:10内津神社→3:40西尾(春日井市)
  • 地理院地図 2.5万図:小泉

 梅雨明け間近でまずまずの天気予報なので最近はまっている多治見・高社山山系に足が向いた。妻の運転で国道19号の側道に入り車を降りて歩き出す。前回6月23日に高社山に登った際、下山時にここを通過した。途中でに出合った巨大な砕石場を見ておきたい気もあった。林道滝ケ洞線に入り中央高速をくぐるとすぐに西部劇の舞台のような灰色の斜面で囲まれたくぼ地状の砕石現場が現れた(写真①)。重機が数台見えたが、土曜日とあってか、誰もいなかった。入口に立つ看板には「博国砕石・滝ケ洞採取場」「開発行為の期間 1988~2027年」とあった。この巨大な窪地は約35年ほどかけて砂利砕石を掘り出した跡なのだろう。道路やビル、住宅建設、土木工事用の資材。私たちの生活基盤を支えた跡ともいえる。

写真① 砕石現場

 砕石場の最高部に延びる作業道に入らせてもらって、さらに崖斜面を上がると広い廃林道にでた。暗い荒れた道を進むとすぐ、滝ケ洞林道と再会した。林道は舗装されているが、暗い樹林の中で通る車も人も皆無。大原町の集落地に着き、山際にある池原(ちはら)神社に参拝した。手洗いで噴き出る汗をぬぐってから県道16号脇の住宅街を抜け、高社山系の東を北上する道路を進む。

 秋葉神社コースの小さな道標を見つけて林内に延びる登山道に入る。すぐにヒノキの人工林の様相に目を奪われる(写真②)。胸高直径20㎝以下の細い木がつんつんと並ぶ。樹間は1.5mほど。木々が重なりすぐ先が見通せない。高さ20m程の樹冠の下にはヒサカキなどの常緑低木の幼木が地表を覆っている。間伐手入れなしの人工ヒノキ林の典型だろう。その間を道はくねりながら上る。間もなく、道脇に秋葉神社の小祠がひっそり立つ(写真③)。

写真② ヒノキの人工林
写真③ 秋葉神社の小祠

 手を合わせてすぐ、尾根道を登る。人工林は消えて広葉樹や松の中程度の木の中に低層の照葉樹が混じる雑木林となった。細い樹幹や葉枝が重なり、眺望は全く効かない。ただ、1カ所だけ南にある巨大な砕石場の淵を通る地点で真下に採掘現場が見えた(写真④)。やがて前回山行で歩いた道に出合い、大きな山名標柱が立つ高社山山頂に着いた。

写真④ 真下に採掘現場

 心配した雨は降らずに済んだが、蒸し暑く小虫が飛び交い落ち着けない。遅めの昼食をとり、山頂から南西に登る尾根を下り始めた。以前から狙っていたコース。ネットに1件記録が出ていた。薄い踏み跡はすぐ消えたが尾根筋は松などの小木が多く明快だった。前方に我が地元の弥勒山系の山嶺が浮かんでいるのが見えた(写真⑤)。標高約120mを下りて薄暗い谷筋にでた。博物館明治村脇の入鹿池を経て名古屋市で新川に合流する五条川の最源流であることは後で知った。谷幅は30mほどと広いが、水流は細い。冷たい流れで汗を取り、生き返る。僅かだが古い赤布があった。緩やかな谷筋を下る。すぐに古びたコンクリ堰堤が現れる。ここから本流と別れて南西に延びる枝沢沿いの廃林道に入る。幅は広くて車か通れたようだ。路面はでこぼこ、両側から樹木が邪魔する。人の歩いた形跡は見当たらない。ひとしきりで前回山行時に歩いた砕石帯の最上部の作業道に出た。すぐに採石場域外の廃道に出てから、大沢町の砕石関係企業が点在する地帯を南下して、春日井市内津に帰着した。

写真⑤ 弥勒山系の山嶺

 高社山麓歩きの中で、二つの光景が記憶の奥に焼き付いた。一つは巨大な赤茶けた採石場の跡、もう一つは密集して昼なお暗いヒノキ人工林だ。今回初めて目にした滝ケ洞採石場の広大かつ深さの巨大さに驚いた。考えてみると、国道19号周辺には他にも採石場を日頃見ていたのだ。春日井市の内津神社のすぐ東側に、また多治見市に入ると19号の両側にも広大な砕石場が広がっている。

 高度経済成長に伴い、道路、土木、建設基盤の高度化に不可欠な砕石資源。それを生産する現場である採石場は日常生活の中で見ているのだが、気づかないでいた。砕石事業の大切さを分かるのだが、地球自然への負荷を軽減する手立て、対策はどうなっているのだろうか。山に登ると知らないことが次々現れる。

 ヒノキ人工林の荒廃と雑木林の放置林という「山林ほったらかし」現象をここでも見てしまった。高社山山系は古来から大原、根本、小木などの村民の里山として、農業資材や薪炭材の採取の重要な山だったと思われる。山の利用価値が消滅し、放置されたままの姿。山頂付近の雑木林も小中木が乱立、薄暗い山肌が続いていた。かつては、濃尾平野が眺望できたそうだが、今は何も見えなくなった。この点は登山者には困った事態である。遠くの眺望が効くと、地図上の位置を捉えやすい。見えないと方角を誤る危険性が強まる。私は最近、何度もその好例を体現してしまった。完

五条川源流部の廃林道
<ルート図>


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