大垣山岳協会

山の生き物 思わぬ脅威 ②

TOPICS・随想・コラム

月報「わっぱ」 2016年9月(No.418)

山の生き物 思わぬ脅威 ② ハチアナフィラキシー ㊦

 ハチ毒アナフィラキシー(AF)症の内、死につながる最重症のAFショックにかかり、私は辛うじて快復したが、全国ではこのショックで毎年20人ほどが亡くなっている。知人にも深刻な被害を経験した人がいた。

 当会のISさんは2002年10月、当会県境縦走中、椹谷山南方の尾根でクロスズメバチに刺された。全身に発赤、まもなく意識不明となるが、1時間余意識を取り戻した。頑強剛健でならした氏は翌日には山行に復した。また、SSさんは、千回沢山からの下山中の沢でオオスズメバチに刺された。意識混濁のうちに車に這い戻ったという。ハチに刺さされAF症を起こす抗体を持つ人は全体の5%~10%だとされる。

 AF症を発症したら、すぐ専門病院で治療を受けないと危険だ。よって登山中に刺されると悲劇となる。刺されないための対策はまず、長袖、厚手の手袋、深めの帽子。皮膚の露出を避けることだ。抗体保有が分かった人は医師から携帯自己注射装置、エピペン(アドレナリン液)を処方してもらい、緊急時に注射する。刺し口を水で洗う、ハチ毒液を吸い取る装置も持ちたい。

 なぜ、外部からの害毒を撃退するための免疫抗体が逆に身体を傷つけるのか。医学上の謎だが、「衛生仮説」という推論がある。乳幼児期に細菌やウイルスの多い、汚れた環境で育った人ほどAF症を含むアレルギー症になりにくいという研究が出ている。まだ、矛盾点が多いようだが、腑に落ちる学説だと思う。やたら手洗い、無菌化を子に求める最近の親たち。反って抵抗力の弱い身体になりそうな予感を持っていた。だが、私の幼児期、清潔な生活を過ごした覚えはない。ちょっと変ではある。

(鈴木 正昭)


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