大垣山岳協会

山書巡歴 ⑩ 再びブータンという国と山と

TOPICS・随想・コラム

月報「わっぱ」 2013年1月(No.374)

山書巡歴 ⑩ 再びブータンという国と山と 高木 泰夫

 本誌371号でブータンを紹介したが、紙幅の都合で書き残した部分があり、それを改めて述べたい。

 一つは未登の山についてである。この国の最高峰であり、未登の山であるガンケール・プンズム(7541m)については述べたが、それ以外にも数多くの未登の山が同国にあることだ。手元にある『世界山岳地図集成』のブータン・ヒマラヤ篇によると、同国北西部には7200m前後の高峰が蝟集しているとある。初登頂時代が終わった今日では、まさに垂涎の地といってよい。今日はブータン全域で登山が禁止されているが、いつか解禁されるだろう。その日をみんなで待とうではないか。

 二つ目は中尾佐助大阪府立大教授の名著『秘境ブータン』についてだ。先日、書店で同書の岩波現代文庫版を見つけ、買ってきた。前回のブータン紹介の際は、畏友小西行雄さんからお借りして間に合わせたが、これで晴れて自分の本で読み果たすことができた。

 その中で珍しい記述があったので紹介したい。日本国内どこにでもあるミズゴケをここで発見している。氏によると、ブータンを囲む中国、アフガニスタン、インド、ビルマなどでは見当たらないそうだ。逆に言えば、日本とブータンは植物分類上緊密な間柄と言えそうだ。それは、同国の正式服装である「ゴ」が日本の着物の裾をはしょったような格好で、類似点を持つこととつながるように思える。

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