月報「わっぱ」 2013年10月(No.383)
沢靴フェルトの張替法
沢登りでは沢靴の選択は重要な課題だ。沢靴にはソール(底)の違いで大まかに2種類ある。ゴム底とフェルトだ。それぞれに長短あって、ゴム底は抜群のグリップ力を発揮するが、ぬめりやコケにはめっぽう弱い。奥美濃の沢には向かないようで、僕はフェルトの靴しか使ったことがない。
フェルトの短所はその摩耗の早さだ。毎週のように沢に入る私はシーズン中に一度は張り替えを迫られる。張り替えは販売店またはメーカーに依頼するか、自分でするかの選択になる。前者の場合、料金が6~8000円で時間もかかる。自力でやれば、安価で早い。
張り替え用フェルトは、釣具店に行けば渓流靴用のものが並んでいるが、一説には沢登り用より滑りやすいらしい。沢登り用はメーカーから四角い板状で販売されている。しかし店頭ではあまり見かけない。そこでネット販売を利用。価格は1800~2000円前後だ。
古いフェルトを剥がす作業がなかなか難しい。力任せにペンチで剥がそうとしても剥がれない。そこでカッターナイフで少しずつ切れ目を入れながら剥がす。結構な時間がかかる上、土台のゴムを削ってしまい、仕上がりはデコボコになることもある。
そこで今回試してみたのが熱湯に浸けて剥がす手法。知り合いのブログにあった紹介記事を参考にした。タライに靴を置き靴底がうまるくらいに熱湯を注ぐ。5分程度待ってからフェルトの端をプライヤーではさみ引っ張る。すると、ペリペリとスムーズに剥がれた。一分以内に剥がし終えた。仕上がりもきれいだ(写真 左側、右は剥がしたフェルト)。おそらく高温にする事により接着剤の結びつきが弱くなるのだろう。
次にフェルト板に靴底を押し付け白鉛筆で型取りしてから、カッターナイフで若干大きめに切り出す。接着剤は専用品が販売されているが高価だ。ホームセンターで売っている合成ゴム・皮革・金属用の接着剤を代用。今まで剥がれたことはない(ただし全ての種類を試したわけではない)。
接着剤をフェルトと靴底の両方に塗る。一度塗りでは接着剤が吸われてしまうので、十分乾かしてからもう一度塗る。この際、縁から1cm程度の幅でぐるりと厚めに塗布すると効果的だ。この後、10~15分程度乾かして靴底に張り合わせ、木槌でフェルトを叩いて空気を抜き密着させる。靴の前方を軽く押さえるように重しを載せて24時間。靴底からはみ出たフェルトをカッターで削って完成。
沢屋はみなフェルト張り替えに苦労しながら各自が最良の技法を考え出す。これも登山活動の重要な行程であり、楽しく面白いものでもある。そうして張り替えたフェルト靴は誇り、あるいは自慢であり、注目してもらうと嬉しいものだ。
(平木 勤)
コメント