月報「わっぱ」 2013年8月(No.381)
ブナを食う毛虫
7月7日の五蛇池山への登山中、一帯のブナの樹林が茶色のベールをかぶっていることに気づいた。大谷川筋の標高700mから上の両岸斜面に緑のない冬枯れ姿の林が広がっていた。まだ、緑の芽吹き前なのかな。でもそんな馬鹿なことはないよね、と語り合う。ブナの大木の幹には茶色の毛虫がずらりと行列。低木の葉は食い散らされ、細い枝だけの姿となり、所々に黒色のサナギが付着していた。標高1010mの五蛇池峠に着くと周囲のブナ林は緑の葉をたっぷり付けていた。結局、あの毛虫がブナの葉を食い散らしたのだ、と仲間たちと結論付けた。
帰宅してから、同行した丹生さんが電話でマイマイガの幼虫による食害だ、とネット検索の結果を教えてくれた。私も調べてみると、マイマイガはドクガ科のガで、幼虫は針葉樹、広葉樹、草本などなんでも食べる広食性で知られる。里や田畑でイネ、果樹、垣根を食い荒らすおなじみの害虫だが、時折広範囲にわたり大発生する。1971年には関西府県で、08年に岩手県で、大発生した。
地元の岐阜県揖斐川町坂内振興事務所に聞いてみた。ミヤマ谷分岐以北の五蛇池山南面はすべて町有林だが、発生の情報はまだ知らないという。一方、岐阜県森林研究所の話では、岐阜県では各務原市の瞑想の森一帯で樹木が丸坊主になる被害が出ているという。また、静岡、山梨、富山、奈良県でも発生情報がある。今年は大発生の年かもしれない。
マイマイガの大発生は昔から繰り返される自然・林野の営みであり、異常視する必要はないようだ。発生は2,3年続くが、やがて土中のカビやウイルスの天敵に阻まれ消滅するという。葉を食われたブナが枯死することはないそうだ。自然生態の奥深い秘かなヒダに触れたような気がした。
(鈴木 正昭)
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