月報「わっぱ」 2012年9月(No.370)
【 個人山行 】 点名・河岐 ( 716.60m Ⅱ△ ) 鈴木 正昭
- 日程:2012年8月24日(金)
- 参加者:鈴木正(単独)
- 行程:春日井=国道41号=大洞谷分岐(約160m)7:05-7m滝8:20-作業小屋跡9:45-8m枯れ滝10:10-林道跡出合10:50-河岐三角点11:20~12:10-401m地点13:40-14:25駐車地=大山白山神社駐車場15:05-白山(862.2mⅢ△[金山])15:25-神社駐車場15:35=春日井
- 地理院地図 2.5万図:河岐
この所のくそ暑さを吹き飛ばすには手頃な沢登りで水浴びだ。自宅から割に近い飛騨川南部の地形図を探すと、岐阜県白川町と八百津町の境界を流れる大洞谷が目に入った。ゆるやかな水流の線が延び、その最奥に河岐の三角点があった。
快晴、猛暑の予報が出た日の朝、国道41号脇の空き地に駐車して、橋のたもとから谷の大洞谷右岸に分け入る。暗い樹林の中に林道が延びていて50m先にコンクリート堰堤。これを越してから入渓。林道はここで途絶えたが、この先約500mの間に3つの堰堤があった。
堰堤群を越すとあとは人工物皆無、テープ類なしの里山地帯にしては清らかな沢が続く。谷幅が広がり、広葉樹二次林の中の明るい沢筋。朝日が東から差し込み水面を輝かせる。面白い形の巨石が点在し、小さなトロも次々現れた。河床の岩が黒から褐色に変わり、にぎやかな色彩を見せる。時折現れるナメ床の水流の多い所を選んで登る。「なめ」と言っても、岩石の節理が露出し、スリップしにくい。近年大規模な出水があり、表土が流出して岩盤が剥き出しになったのであろう。小さなナメ滝ではシャワークライムを楽しんだ。涼しい水と風がほてる身体を包む。標高350m付近で7m滝(写真①)。右岸高巻きでは頼りの木が少なくて、怖かった。
谷が北西に曲がる450m付近で異様な光景に立ち止まった。左岸の台地に幽霊屋敷のような木造廃屋があった。恐る恐る玄関の前に立った。戸は外れ、荒れ果てた内部が丸見え。ひと揺れで、倒壊しそう。中央にグリ石を敷いた通路があり、両側に床がある作業宿泊小屋だったようだ。奥行き10間、間口4間ほどと大きかった。裏手に回ると、文字のかすれた火の用心注意の看板を見つけた。「○○製紙会社」とあったが、会社名は読み取れなかった。この一帯は5,60年生のヒノキの人工林。造林作業当時使ったに違いない。
小屋から昔の林道跡のような道筋が谷に沿って登っていた。当時はここまで、車で入れたのだろう。再び谷筋に戻り、標高500m付近で枯れ滝が立ちはだかった。もう水は消え、滝ではないが、切り立った谷を巨大な卵型の岩がふさいでいて、正面突破は無理。左岸高巻きには苦労した。
やがて、谷の地形は消え小さなカールに達した。方向を定めてかなりの急斜面を登る。やぶが少ないので助かる。すぐ、林道跡のような広い踏み跡。これを100mほど西に進み、現れた尾根をたどる。若干の倒木帯を越えると、西から来る登山道に合流。頂上は200mほど先にあった。
西側ヒノキ林、東側二次林の小さな山頂では三角点の脇に、仏教系宗教団体の教えを説いた看板があった。以前、岐阜県内で一騒ぎを起こした団体のものかもしれない。騒ぎは収まり静けさを取り戻した山は今ほっとしているようだ。
沢靴を脱ぎ、軽登山靴に履き替えると、沢靴とウレタンスパッツに数匹の小さなヤマビルが休憩中。首に巻いていたぬれタオルには赤い血の斑点がいっぱい。慌てて裸になり点検。首筋やふくらはぎなど数カ所に彼らの吸血口の跡。やれやれ。ヒル避けスプレーを忘れてきたことを悔やむ。
下山は北西に延びる尾根を目指す。道は200mほどで消えた。660m辺りで下る尾根を間違え、登り返す。樹林厚く、遠方への展望はゼロ。おまけに小さな分岐尾根が多く、コース取りが難しい。尾根筋はコナラやアカマツの大木、広葉樹の若木との混交林。変化に富んだ林相に感心しながら進んだ。直下に飛騨川の水面が見える地点から南西の急斜面を木にぶら下がりながら急降下。大洞谷入り口2,30m先の林道に出た。
往路、道草が多すぎ、余計な時間を取ってしまい、頂上まで4時間余を要した。後で知ったが、東側から林道経由で登ると山頂まで30分で登れるらしい。かつてのやぶ山も近ごろ林道の延長により、短時間で登れる山と化した所が多いが、ここもその一つなのか。
ただ、大洞谷は峻厳な滝や岩壁はないけれど、変化に富み手つかずの秀麗な沢コースとして貴重な存在だろう。
低山里山の中でも、探せばこんな別天地に出会うことができる。ヒルはいても我慢するが、人の手の夾雑物が入らぬように願いたい。
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