【 個人山行 】 井出ノ小路山(美濃百山C級) ( 1840m △なし ) 丹生 統司
今年は1963年に記録して以来2番目に早い5月の梅雨入りだそうだ。昨日までの大雨に中止の選択も有りかなと思ったが大陸から東進する高気圧が梅雨前線を南下させると素人なりに予報をして決行とした。当日の早朝、集合場所の西空には明けの明星が輝いており天気の回復を確信して大垣を出発したのであった。
- 日程:2021年5月22日(土) 曇り時々雨
- 参加者:L.丹生、SL.藤野一、小栗敦、佐藤大、清水克、田中恵、宮澤健、山本知、吉田千
- 行程:井出ノ小路林道ゲート6:30-檜・椹合体木7:30-茶屋小屋谷出合9:10-県境尾根コル12:15-井出ノ小路山13:05~40-茶屋小屋谷出合16:15-井出ノ小路林道ゲート18:40
- 地理院地図 2.5万図:加子母
大垣では青空が覗いていたが中央道に入ると雲行きが怪しくなった。付知川を遡りだすと路面が濡れてきて白須峠への県道には石がパラパラと転がっており避けて通行した。井出ノ小路林道ゲートに到達出来てやれやれ、天候の回復を信じて出発した。
林道脇にヒメシャガが薄い紫色の可愛い小花をもたげて梅雨の最中をアピールしていた。
樹齢560年の桧と椹の合体木、ヒノキとサワラの違いを確認しようと懸命に捜して見たが所詮素人の俄か勉強、確かな違いが今回も発見できなかった。
一帯は樹齢300~400年の木曽桧の備林で伊勢神宮式年遷宮や名古屋城本丸御殿などの御用材伐採跡の切り株が保存され見学コースが整備されていた。
木曽桧備林の見学コースを過ぎてヘアピンカーブを折り返すと道は荒れるに任せていた。法面の崩れや落石も放置されており賽の河原を歩いているようだった。
谷を挟んで対岸に北夕森山の急斜面にみごとな檜の森。雲が切れて薄日が差しだして天気の回復が鮮明になったと確信していた。
天狗岩も山頂部に雲はあるが天気はいい方向に向かっていると確信していたのだが・・・
茶屋小屋谷出合に着いたが堰堤の上から水があふれており昨日までの大雨の影響は簡単に消えない。普段は涸谷だが今日は谷水の濡れを覚悟しなければと思った。
谷に水は無く助かった。しかし昨日までの雨で岩は滑りやすく浮き石も多く油断は出来なかった。それでも大岩を難無く越えていく女性陣、先週の岩講習が生きた。
次々に現れる大岩、時に大きく足をあげ、開き越えていく、天気が良くて岩が乾いていたならボルダリングが楽しめたはずだ。そうこうしていたら雨が落ちて来た。
天気は回復すると信じていただけに予期せぬ雨の襲来に少々気落ちした。雨具を着けての藪漕ぎは最悪だ。谷は上部になると水が流れていた。笹は逆茂木状になって下向きに谷筋を埋めて登行を遮り急斜面では足場して踏んだ笹の軸が滑り疲れは倍加した。
点名・中ノ谷との県境尾根のコルに到達、冷たい雨で手袋はグチョグチョ、登山靴の中もグチョグチョ、手の指が悴み痛いほど寒かった。
藪は濃くて深く倒木が有ると越えるのに難儀した。雪で倒された斜面の笹が一部起き上がりきれてない所が楽そうに見えて誘われる。これに騙されると3mも進めば藪が深くなり右に左に振られ蛇行を繰り返し距離で大きく損をする。目印もあっちこっちになり下山で見失いやすく迷いやすい。尾根の峰を出来る限り外さないように歩く。峰は側面よりも笹丈が低く直線上に付けた目印は見通しが効いて発見が容易で藪漕ぎの術である。
山頂が近くなるとサワラとヒノキの林となって笹丈が低くなり歩きやすくなった。
緩やかで広い山頂台地の高みで山頂の証を目を凝らして捜すと桧の幹に括られた山名板を見つけた。山名板は雨水をたっぷり吸って黒く光っていた。寒さで悴み感覚が鈍った指で山頂の証を撫で2度目の訪問気分を味わった。期待していた天候は回復せず、小雨と冷たい風が吹き抜ける寒い山頂だった。
木曽の奥深い山、藪漕ぎで汗ビショになって立つ山頂のイメージだった。冷えた缶ビールをザックに忍ばせていたが素人の天気予報は大外れでビールはそのまま持ち帰った。
井出ノ小路山に三角点がないのは寂しく残念である。藪山の広い山頂での三角点標石捜索は宝探しのような趣がある。競争意識が生まれ誰よりも早く見つけたい心理が働いて藪の中に精神を集中させる。笹の枯葉と三角点の標石が同色で発見に手間取ることも度々、こういう時は大概に保護石を先に見つけて花崗岩の三角点標石を見つける運びとなる。藪の中で見つけると思わず大声が出る「有ったぞー」。
我が会の会員が調査に3年を費やした汗の記録集『美濃の三角点全点踏査の記録(1)』20万図「飯田」「豊橋」編を発刊、発売中である。
現在はダム湖の出現で調査が非常に難しくなった陸の孤島「旧徳山村」や激藪の「石徹白」を含む第2巻「20万図・岐阜編」を編集中である。全て手作りでここにも会員の汗が浸み込んでいる。カルコスで販売していただいているが当会事務局にも在庫はある。大垣山岳協会の新たな歴史の始まりをぜひ手元に置いて頂きたい。完
月報「わっぱ」 No.475 2021年6月15日
<わっぱ> 【 個人山行 】 井出ノ小路山 ( 1840m △なし ) 丹生 統司
- 日程:2021年5月 22日(土)(曇り時々雨)
- 参加者:CL.丹生統、SL.藤野一、小栗敦、佐藤大、清水克、田中恵、宮澤健、山本知、吉田千
- 行程: 井出ノ小路林道ゲート6:30-茶屋小屋沢出合9:10-県境稜線コル12:15-井出ノ小路山13:05~13:40-茶屋小屋沢出合16:15-林道ゲート18:40
- 地理院地図 2.5万図: 加子母(飯田10-2)
大雨の翌日だけど天気は回復するだろうという素人判断で決行したが、途中から雨も降り出し寒く厳しい山行になった。付知川に沿って遡る県道は路面が濡れており石がパラパラと転がっていた。それを避けて進み、井出ノ小路林道ゲートに無事到達出来てやれやれ。
歩き出して暫く進んだ一帯は樹齢300~400年の木曽桧の備林で、伊勢神宮式年遷宮や名古屋城本丸御殿などの御用材伐採跡の切り株が保存され見学コースが整備されていた。ところが見学コースを過ぎてヘアピンカーブを折り返すと道は荒れるに任せていた。法面の崩れや落石も放置されており賽の河原を歩いているようだった。
茶屋小屋谷出合に着くと堰堤の上から水があふれていたが、それを越えると谷に水は無く助かった。しかし昨日までの雨で岩は滑りやすく浮き石も多く油断は出来なかった。それでも大岩を難無く越えていく女性陣、先週の岩登り講習が生きた。
そうこうしていたら雨が落ちて来た。雨具を着けての薮漕ぎは最悪だ。谷は上部になると水が流れていた。笹は逆茂木状になって下向きに谷筋を埋めて登行を遮り、急斜面では足場として踏んだ笹の軸が滑り、疲れは倍加した。
ようやく県境稜線のコルに到達、左に向かう。稜線の薮は濃くて深く倒木が有ると越えるのに難儀した。けれど出来る限り稜線の峰を外さないように歩く。峰は側面よりも笹丈が低く直線上に付けた目印は見通しが効いて発見が容易、薮漕ぎの術である。山頂が近くなるとサワラとヒノキの林となって笹丈が低くなり歩き易くなった。
緩やかで広い山頂台地で目を凝らして捜すと桧の幹に括られた山名板を見つけた。山名板は雨水をたっぷり吸って黒く光っていた。冷たい雨で手袋はグチョグチョ、登山靴の中もグチョグチョ。寒さで悴み感覚が鈍った指で山頂の証を撫で、2度目の訪問気分を味わった。
*井出ノ小路山のルート図は「美濃の三角点全点踏査の記録(Ⅰ)」38ページを参照してください。
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