大垣山岳協会

滝波山~平家岳~左門岳県境縦走 2026.03.14~16

平家岳

【個人山行】滝波山(1,413m 三等△)~平家岳(1,442m 二等△)~左門岳(1,224m 三等△)県境縦走 SK

 大垣山岳協会では、1997年から5年の歳月と延べ900余人を動員して岐阜県の県境800㎞を踏破している。その間、登山道や一般道があったのは約200㎞で、あとはほとんど人跡稀で濃密なヤブに覆われた山岳地だった。そこをヤブ漕ぎや残雪期でたどり、『未踏の岐阜県800キロを歩く』(2003年 岐阜新聞社刊)として刊行している。
 「あとがきに」には、このような取り組みの思想的背景には、会の独特の個性、パイオニアスピリットの具現化を会是とし、顧問をされていた今西錦司氏の「アルプスよりは奥美濃を」という教示を具現化する会員の情熱があったと記される。
 その取り組みを直接知るわけではないが、憧れがあり、奥美濃部分(滋賀・福井県境部分)を単独行でたどることを、自分なりのパイオニアスピリットの具現化とし、何年かかけて取り組んでいる。

 今冬は、地球温暖化などで雪が乏しく、チャレンジする機会が得られそうもないとあきらめかけていた。しかし、3月10日、11日、山岳専門の気象予報士・猪熊隆之さんが「空の百名山」の選定調査に来られたのをご案内するため、能郷白山と冠山に登ったところ、県境稜線だけは何とか雪が繋がっていることが確認できた。しかも天気予報では、5日間ほど安定した天候が見込まれている。
 これは行くしかない!と、滝波山~平家岳~左門岳の区間を、14日~16日単独テント泊で縦走することにした。
 前日の13日、滝波山登山口となる関市洞戸の滝波谷の林道を偵察、県境まで雪がほとんどないことを確認し、林道をたどれるところまでたどった方がよさそうと判断。そして、左門岳下山口となる本巣市上大須ダム奥にマウンテンバイクを駐輪しておいた。県境稜線で登山者に出会う可能性は低い。コンディション次第で中間の平家岳から洞戸に降りるエスケープルートを想定。標高が低い部分は、ヤブ漕ぎになる可能性も高いので、装備はコンパクトにし、ヘルメットを持参することにした。

<ルート図>
  • 日程:2026年3月14日(土)~16日(月) 天候:快晴
  • 参加者:SK(単独行)
  • 行程:(―:車、=:MTB、…:徒歩)
    14日(土) 快晴 自宅4:30―板取谷林道通行止め手前(駐車)7:20…936mポイントの分岐点8:45…林道出合9:45…稜線11:00…滝波山山頂12:00…最低鞍部(約1,120m)14:00…美濃平家山頂16:25…1,413mピーク(37号鉄塔)17:00(テント泊)
    15日(土) 快晴  鉄塔7:15…井岸山8:55…平家岳山頂9:20…1,224mポイント(Ⅲ△「五現川」)14:15…1,038m最低鞍部17:00…1,204mポイント手前ピーク17:30(テント泊)
    16日(火) 快晴  幕営地6:50…(ジャケット探索往復)…幕営地8:00…県境尾根分岐9:50…左門岳山頂10:20…沢11:55…815m地点12:30…沢分岐13:20…丸木橋13:45…MTB駐輪地点14:05=樽見駅15:15ー自宅16:40
  • 地理院地図2.5万図:門原、平家岳

 そんな事前準備のもと、3月14日(土)7:20 滝波谷の林道の通行止め地点(矢印)まで、車で入り、登山開始。
 よく整備された林道を、936mポイントの分岐点まで入る。雪はまったくと言っていいほどない。
 8:45 植林の中の、踏み跡もあまり明確でない斜面に取り付くと、途中から、尾根らしくなる。標高約200m分の斜面を登るのに約1時間。やはり、テントなど背負っているとピッチが上がらない。
 9:45 踊り場のような平らな場所に出て、2万5千図にはない林道が上がってきていている。踊り場から、ふたたび広くあいまいな斜面を登っていく。
 11:00 滝波山から南に派生する尾根上に出る。尾根上は雪が残るので、山頂めざしてひたすら登るのみ。

 12:00 滝波山山頂に到達。行く手に御嶽などが眺められる。山頂の少し北から県境稜線に入る。いよいよ今回の本番部分。

 稜線のあちこちで、視界が広がる。白山が近い。

 そして、左から剱岳・立山・薬師岳・笠ヶ岳、鷲ヶ岳を手前に挟んで、穂高連峰、焼岳、乗鞍岳、御嶽、木曽山脈、赤石山脈と展開。これだけの山が一望できるポイントに出会えるのも、残雪期の県境縦走の醍醐味。

 行く手に、1,450mの美濃平家、その右に1,441mの平家岳が見えてきた。いったん、1,100mくらいまで下ってからの登り返しとなる。
 14:00 最低鞍部を通過。さすがにこのあたりでは稜線の雪庇が切れるが、ヤブはチシマザサではなく、丈が低めのスズタケで、風上側(日本海側)斜面にも雪が残るので、さほど苦労なく進むことができた。

 400mほど登り返し、ようやく美濃平家のピークが近づいてきた。その奥に2つの鉄塔が並ぶ。今日はあのあたりまで行きたいもの。

 16:25 美濃平家山頂に到着。山名板はないけれど、赤いテープが結び付けられていた。
 17:00 何とか計画通り37号鉄塔のある、1,413mピークに到着。けっこう風が強く、テントの外ではガスボンベが使えず、テントがはためくので、中でも使いづらく、結局雪を溶かして水を確保することは断念。ポットに持ってきた1Lの湯を半分使い、フリーズドライのドライカレーと豚汁を作りそそくさ食べ、風にあおられるテントを押さえながら18:30には就寝。
 
15日(日)
 昨晩は風が強く、鉄塔の脚部に細引きで縛っておいたおかけで何とか吹き飛ばされずに済んだ。荷物をコンパクトにするため、スリーシーズンのシュラフとシュラフカバーだったので、けっこう寒かった。テントから外に出ると、あたりは樹氷に覆われ、きらめいている。7:15 出発。
 今日は平家岳を経由し、なるべく左門岳までたどり着きたい。ただ、最低鞍部が1,038mで、雪が残っているかどうかで所要時間は大幅に変わりそう。
 まずは、平家岳に向け、200mあまり大下りする。夏はジグザクに送電線巡視路をたどるが、積雪期は稜線を一気に下る。遠くに青い作業小屋の屋根が見える。

下った後の登り返し。いつのものか、わかんの足跡が残り、それをたどると独りという気がしない。
 8:55 いつの間にか平家岳手前の井岸山の上に立っていた。作業小屋のある小平地も、いったん大きく迂回してこの山に立つ夏道も通らないまま直登したことになる。
 ここからは夏道と同じで、いったん井岸山から下り、平家岳山頂に登り返す。日本海側と反対の斜面はまったく雪がない。荷物をデポし、風が強いので、ハードシェルジャケットを着こむ。

 9:20 平家岳山頂に立つ。360度の展望が得られ、まずは南西方向=奥美濃の山々を眺める。
 平家岳は、奥美濃の山でも東寄りで、能郷白山が真ん中あたり、そこから伊吹山など西側の県境まで山々が重畳する。ここに見えるのはすべて美濃の山。そして、そこにほとんど人は住んでいない。
 「飛山濃水(飛騨は山の国・美濃は水の国)」という言葉があり、美濃には山なんてほとんどないと思っておられる方も多いが、そういう方にこそ、この光景を見ていただきたいもの。
 今日たどる県境稜線は、いったん南に向かった後、北・南と2度ほどジグザグに方向を変えるので、見かけより距離がある。

 県境稜線に戻り、ザックを背負いなおして、左門岳をめざす。
 途中、12:00頃稜線が広く平坦になったので、40分ほどかけ、昼食をとりがてら、雪を溶かしてポット一杯分のお湯を確保。夕暮れのテントでやるよりも、作業はしやすいし、大休止もできた。

 左門岳が近づいて見えるけれど、くせものが、これから鞍部に向けて下降する稜線に雪が期待できなさそうなこと。13:30頃からヤブが登場。
 この区間は、チシマザサではなく、背の低いスズタケで、しかも微かに人というよりシカの踏み跡がたどれるので、あまりピッチを落とさないで進むことができた。

 1,200mくらいまで登り返すと雪の稜線となるが、再び1,038mポイントまで下降し、再度1,204mまで登り返すその区間は、やっぱり、まったくヤブの稜線だった。チシマザサどころか、灌木にびっしり覆われ、顔にビシビシ当たって痛い。

 17:30 地形図の、1,204mポイントに今宵のテントを張ろうかと思ったが、そこまで行き着けず、ヤブ漕ぎの終わった最初の小ピークにたどり着くのが精いっぱい。
 そして、テントを張って、はっと気が付くと、ザックの上蓋の下に入れておいた、ハードシェルジャケットがない! 途中ヒノキの根元の下をくぐるところで、ピッケルが引っかかってしまったので、その折に落としてしまったのかもしれない。明日もう一回ヤブ漕ぎやり直しか(がっかり)。
 
 16日(月)、県境縦走3日目にして最終日。
 昨夜は微かに雪が舞った。樹林帯の中なので風は気にならなかったが、やはり寒かった。
 6:50 気は重いけれが、どこかで引っ掛けたハードシェルジャケットを探しに、昨日のヤブに再び突入。今日は、ヤブ漕ぎの秘密兵器・ヘルメットを被ったし、往きは下りなので、サクサク進むことができる。
 昨日ピッケルをひっかけたヒノキの根元の穴まで20分でたどり着くが、ジャケットは見当たらなかった。念のため、あと10分ほど下るが、この辺が限界と、引き返すことにする。

 8:00にテントを張った場所に戻り、左門岳へと向かう。この先の稜線は、標高1,150m以上を細かくアップダウンしていく。今日も白山が神々しく眺められた。

 最後に、たどってきた滝波山、平家岳方向を振り返る。あと数日後の雨で、稜線の雪もなくなることだろう。

 左門岳への登りの稜線は、雪がところどころ切れているけれど、灌木はなく普通のヤブ漕ぎなので安心(感覚麻痺してます)。
 そして、西側に連なる、N理事長が左門岳から往復しておられる記録にワクワクさせられた屏風山が気になってならない。無雪期でも厳しいこの山周辺の県境稜線をたどれる日は来るのだろうか。

 9:50 左門岳の北で、今回たどってきた県境稜線とはお別れとなる。
 10:20 左門岳山頂に立つ。梢の高みに山名板があった。さて、あとは下山あるのみ。

 左門岳は、道迷い遭難が起きやすい曖昧な地形の山。誤って南東の尾根に入り、東側の川浦谷に入り込むとリカバリーが極めて困難となる。まず、だらっと曖昧な地形の山頂から、南西の尾根に入るのがポイント。そしてこの尾根も直進しすぎず、うまく根尾東谷川へ降りていくのが、もう一つのポイント。
 途中までプラスチックの階段が雪から露出し、赤テープもある。しかしあいまいな地形に、残雪、植林したまま放置されたスギの倒木で、ルートは見出しがたくなる。今回は下りのみ利用なので、踏み跡もない。見晴らしがきかず、小規模な尾根、小規模な谷に分かれており、南西側の尾根に入ってはいけないとの頭があるので、どうしても東寄りになってしまう。

 結局、安全パイをとって、地形図の歩道のマークのある先端あたりに降りた。11:55。

 地形図でいうと、本来オレンジのルートを取るべきところを手前の、歩道の印の先端部で沢に降りた格好。ただここまで、1Lのポカリスエットと、1Lのテルモスの湯(途中1回補給)だけで過ごしてきたので、しっかり水が補給できてひと安心。
 ちなみに、このあたり、歩道の印はあっても、沢があるばかりで、道なんかありません。

 12:30 815mポイントあたりまで下ると、尾根の先端に赤テープがあり、取り付き点がはっきり分かる。ただし、登りで使わず、迷いやすい下りだけでは、よりルートファインディングは難しいと改めて実感した。そのすぐ下に、取り付き目印のヘルメット(二代目)がある。このヘルメットを取り付けたのが自分なのだが。いやはや。

 815mから下、地形図では一本線の実線になっているので、国土地理院の地図記号では幅1~3mの「軽車道」ということになるけど、道の残骸がところどころあるだけ。
 ルート取りでポイントになるのは、沢が二又になっているところで、モノレールが東の沢側に付いているのでそっちに入りそうになる。実際には、西の沢側に入るのだが、地図のように戻るような方向に大きくカーブしながら沢の上手に登っていく。
 この部分は、下りだと分かりやすいが、登りだと分かりにくい。13:20 通過。

 13:45 沢の入口の丸木橋に出る。ただし、ほとんど朽ちかけているので、渡渉した方が安全でしょう。

 ようやく林道らしくなった道を下り、14:05 マウンテンバイクを駐輪しておいた地点に出る。
 ここから、樽見駅までは、約20㎞。ほとんどが下りだが、少しでも登りだと、重い荷を背負っているので漕ぎ上がれず、その区間は歩いた。
 15:15 樽見駅に到着。何とか無事3日間の県境稜線縦走を終え、ずっしりした疲労感と充実感をともに味わった。 以上

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