【 個人山行 】
コザト( 830m )、霊仙( 1094m )、谷山( 993m ) 滋賀県多賀町、米原市
NT
写真は4月7日の鍋尻山での1枚である。稜線の南に登高意欲をそそられる円錐の山を見て仲間内で話題となった。地形図で確認すると標高829.8m山名は「コザト」と教えられた。密かにヤブが芽吹く前に登ろうと決めたが偶然同じことを考える女史が二人いた。
- 日程:2024年4月11日(木) 晴れ
- 参加者:NT、SE、HT
- 行程:五僧峠7:22-白谷出合取付7:48-リョウシ9:15-コザト10:02-霊仙山12:27-経塚山12:46-避難小屋12:53~13:13-谷山13:39-五僧峠17:27
- 地理院地図2.5万図:彦根東部、霊仙山
五僧峠の膨らみに駐車すると石仏に今日の無事をお願いした。此処から滋賀県側へ徒歩で下り権現谷と白谷を分ける尾根から霊仙山へ登り県境尾根を使い此処へ戻る予定である。
保月への分岐を過ぎて白谷が近くなった頃に背後から車の音、道脇に寄ってやり過ごそうと振り向くと我が会のSE、HT女史であった。7日に実施された会の鍋尻山行に都合悪く参加出来なかった彼女らは一週早く鍋尻山頂へ立ち周辺状況を把握していた。二人は「コザト」の事もご存じで次回の山行を決めて取付きも確認して帰っていたそうだ。地形図のみを頼りの出たとこ勝負の小生とは違う。コザト登山後は白谷側へ下降すると言い霊仙山から五僧峠への周回の誘いに返事は無かった。取り敢えずコザト迄は一緒に行くことにした。
白谷の流れが真下に見える急登を150m、先に進む二人の足取りが軽く早くついて行けない、大汗を掻いて追いかけた。這い上がったカルスト地形の岩尾根は華道で使う剣山の針の上のようで歩き辛い、右に左に歩きやすい所を見極めて進むが遅々としてノロかった。
岩場が途切れるとフクジュソウの群生地となって緑の絨毯状態だ。疲れなど何処かへ消えてしまったが既に花期を終えており残念だ。その他にカタクリとヒトリシズカは花をつけていたがヤマシャク、エビネはこれから花期を迎える準備中であった。
剣山のような石灰岩突起の先に霊仙山頂が遠く格好良く見えている。あの山頂まで「道づれ」を提案したが霊仙は気落ちするほど遥かに遠く返事を渋るのがわからぬでもない。
足元の悪いカルスト地形の岩尾根にブツブツ文句を言いつつも辿り着いたリョウシ山頂。
マユミの木に山名板が括られていたが三角点が無くて少し淋しい山頂だった。
リョウシを過ぎると尾根は一変して穏やかな人工林となり右に90度折れて東のコザトへ向きを変えた。自由に何処でも歩ける嬉しさで歩行ペースは上がった。
リョウシから45分ほどでコザト着、彼女達の計画では100mほど引き返し南へ落ちる急な尾根から白谷林道へ下るという。地形図を見ると林道への降り口にゲジゲジマークがある。林道法面は崖になっている場合が多いが彼女たちは下降路の情報を得ているようで自分達だけでやり遂げたい気持ちも尊重しなければとも思った。
だが時間は10時になったばかりであり霊仙山へ一緒にと「道づれ」を柔らかく再提案した。目指す霊仙山が随分大きく近くなって下降路に使用する谷山と県境尾根も見えている。
途中には白谷へ下りる林道が尾根を横断している。林道到達が12時を過ぎていたらそのまま一緒に白谷へ下降しよう。再提案にやっとうなずきのOKこれで道づれ山行が決まった。
尾根は目印も多く踏み跡もしっかりしていた。アセビが花盛りで尾根歩きを堪能しているといきなり横断する林道へ出た。コザトから45分ほどで少し早い気がしたが地形図に記載された行者の谷と白谷を結ぶ林道と信じた。此処で安心して軽めの食事休憩をした。
鍋尻山で見た光景と同じで竜巻にでも遭遇したかのように立木がへし折れて枯れていた。
嘗ての北ア上高地の大正池は湖面の立ち枯れ木が名物であった。現代はその面影もないが立ち枯れ木と霊仙山を見て50年前の上高地の景色を思い出した。
ところが直ぐにまた尾根を跨ぐヘアピンの林道が現れ面食らった。地形図をじっくり眺めて周りの地形と照合するとこちらが正解で先ほどの林道は地形図に記載されていない新道だ。先ほどの休憩時間が損をしたようで腹立たしかった。
霊仙山最高点の南斜面へ取り付く前に栄養補給の休憩をしたが此処で2人組に抜かされた。一般登山道ではない山中で、土日以外の日に人に会うとは思わなかったので少し驚いた。斜面を見渡すとアッチもコッチもヤマシャクが丸い花芽をつけて群落を作っていた。未だ地面に顔を出して日が浅く赤くやわらかな茎と葉がいじらしかった。
空に向かって急なカルスト地形の岩場を登った。浮石は案外少なく安心して掴め足場に出来た。この頃体力の低下が著しく鉄女に下から煽られるが何度か立ち止まって息を整えた。
斜面から飛び出た所は霊仙山最高点の東250mほどの所で有った。石灰岩の針の山は歩き辛く早々にマユミの林へ逃げた。林の中はコバイケイソウの群落で青い新芽をタケノコのように出していた。
霊仙山最高点は風が強く撮影を終わると上着を着なければ寒いほどであった。北の三角点の有る山頂や尾根には人が大勢いた。此方にも何人かは向かって来ている。体力温存と時間の節約で三角点の有る山頂は割愛、最短で経塚山経由で避難小屋へ行くことにした。
向かう経塚山の尾根を右に辿った中央の高みに避難小屋が確認出来る。その尾根が東へ落ちたコルの先に県境の谷山が人工林の山頂部を黒く見せている。中央奥の大きな山体は伊吹山で裾野を西へ辿ると長浜市街でその先に琵琶湖の湖面が見えていた。
経塚山から300mほどで避難小屋だ、丹生川源流の漆ヶ滝が崩壊し通行禁止になって訪れたことはなかった。中には今畑登山口から来たという男女が4人いた。S女史に促され室内の霊仙山概念図を見ると「谷山は登山道が崩壊の為死亡事故有り通行禁止」と手書きされている。地形図を見れば50mほど急で等高線は混んでいるが全く思いもしない事態だ。
目指す「谷山」は目の前で左の疎林の尾根は米原市柏原へ続く、右の人工林の尾根を辿った先が五僧峠で有る。緩やかなこの尾根の先の何処が崩壊して通行不能なのだろう。とにかく現場を見て判断しようと決めた。自分の技術が通用しなければ潔く引き返そう。
小屋の注意書きに脅されたせいで斜面を通過するとその先がまた気になって落ち着けない。問題個所も無く鞍部へ着くと看板が有る。それによれば50年前に漆ヶ滝コースと言った所が現代では「谷山谷」と言い通行止め、「谷山谷」を「谷山」と勘違いしていたのだ。
霊仙山最高点東のマユミ林の中でもコバイケイソウの芽出しを見たが谷山の北斜面の群落はもっと大きかった。コバイケイソウは2~3年おきにしか花をつけないようだがこれだけの群落なら夏には白い花で斜面を飾ると思われた。
霊仙から見た谷山の山頂は三角形であったが見た目よりも広かった。本日最後の三角点(点名・谷山Ⅲ等△993m)山頂には幾つか山名板が有ったがその一ツに五僧峠まで3時間と書かれていた。現在13時39分、五僧峠着5時を目標に早々に出立した。
向かう南に烏帽子岳と藤原岳が見えて左下の藪谷を隔てソノドヲが大きく存在感がある。
針葉樹の林床は単調だが歩きやすく県境尾根を南へ向かってひたすら歩いた。だが行けど行けどもソノドヲが隣に見えて景色が変わらなかった。
県境尾根が標高を下げて来ると針葉樹と雑木林が交互になってアセビ類が見通しを悪くした。するとピンク目印が5m間隔ほどの近距離となって「赤子の手を引くような過剰な親切」に五感の退化を気にした。白谷を隔て今朝方登ったコザトと奥の霊仙山を感慨で眺めた。
峠まで最後の障壁は150m下って100mの登り返しである。既に目標の五僧峠着時間の5時になろうとしていた。前を行く鉄女二人に離されていく、彼女たちが簡単に跨いだロープを足が上がらずに越えられない。足元の悪い最後の急登をヘロヘロで登った。
美しい落葉樹の広い斜面は落ち葉を蹴散らして下ると人工林となって五僧峠の車道が真下に見えた。峠の霊仙山登山口の看板を見て長いルートの終わりを噛みしめた。
2022年11月18日に五僧峠から谷山を往復したが出立が9時38分と遅かったせいで下山が夕暮れと競争となり走りに走って2時間56分で下った。今回は3時間48分も、彼女達だけなら3時間で下れただろう「道づれ登山」は迷惑でなかったかと気にかかる。完
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