大垣山岳協会

春の嵐に敗退、美濃百山C級・若丸山 2024.03.02

若丸山

【 個人山行 】 若丸山( 1285.73m Ⅱ等△ ) 揖斐郡揖斐川町櫨原扇谷奥山 NT

 冠山トンネルの開通で積雪期の徳山ダム湖以北の山々が近くなった。シタ谷左岸の国道417号からヒン谷を渡渉せず直接坊主尾根へ上がる新ルートが紹介され冠山や若丸山が賑わしいようだ。だがGPS片手に他人の軌跡やトレースを追う登山に抵抗が有り敢えてこれまで登路としていた若丸山南尾根から挑んだ。ところが前夜からの降雪に阻まれ日没と駆けっこするように敗退した報告となった。

<ルート図>
  • 日程:2024年3月2日(土) 雪時々薄日
  • 参加者:L.NT、KT、KM、ST、SD、SM、NY、体験参加1名
  • 行程:塚駐車場7:05-標高880mJP 9:27-1072mP 11:42-最高到達点標高1175m 12:50-標高880mJP 15:22-塚駐車場17:00
  • 地理院地図2.5万図:冠山

 若丸山は此処数年の雪不足で訪れていなかったが3月の初めなら大丈夫だろうと体験希望者1名と入会の浅い方を対象に読図と目印付けを目的に実施した。

 昨夜からの降雪で塚の駐車場は10㎝ほどの新雪が有った。天気は回復傾向で有ると信じ、新雪は山頂付近でも30㎝以下で雪質は軽いと判断しワカンは置きツボ足で行くことにした。取り付きから尾根芯までの高度差200mは雪下の腐葉土が滑りロープを掴み登った。

 主尾根まで上がりきると傾斜が落ちて心にゆとりが出来た。S、S、Nに目印付けをお願いし、体験参加者には等高線による尾根と谷の説明、プレート付きコンパスの回転盤を回し磁北線と目標進行方向を合わせる説明をした。尾根でブナとナラと思われる合体木(連理)を見つけ我が家もこのくらい仲睦まじく有らねばと気付かされた。

 標高800mを過ぎると新雪が吹き溜まりでは膝のあたりまであったが根雪は全く無くツボ足で問題なかった。雪床に林立したブナの林にはいつも感動させられる。

 標高880m梨ヶ平とのジャンクションに9時27分に着き良いペースだと思っていた。此処からの下りは岩交じりでヒン谷側へ急傾斜で落ちており気の抜けないところである。ストックを仕舞いアイゼン着用を指示した。ところがDちゃんが持っていない。Nが要らないと言ったという。確かにこれまでアイゼンを履いた記憶はないが今日は氷点下で吹雪状態である。西穂高行きを悪天で中止し急遽参加した彼には計画書も渡していなかった。「申し訳ないと平謝り」以前何処かの沢登りで沢靴を忘れた彼はサンダル履きで登り切った記憶がある。君のバランスなら大丈夫、だが慎重にとお願いした。

 急下降が終わると緩い尾根通しの安全地帯となるのだが時に倒木が出て来ると越すのが大変だった。年寄りは身体が硬くなっており足が上がらず難儀をして越えた。

 雪は高度を稼ぐ毎に深くなってラッセルをしている若者に着いて行けず置いて行かれる。此の付近まで来ると根雪が残っている所も有って時折踏み抜いて大きな穴が開いていた。彼等には言わなかったがワカンは持ってきた方が良かったかと自問していた。

 尾根には大きなブナが残されており千手観音のように沢山の枝をつけてくねらせていた。虚になっており窮屈だがビバークが出来るほどのものも有った。

 虚になった大きな老ブナの根っ子付近に白マイタケが黒く干からびて凍っていた。マイタケはミズナラ以外のブナの根元周辺にも出来るとは聞いてはいたが初めて見た。

 リョウブの大きな株立ちの根っ子などが出てくると笹が混じり出しヤブの様相となって来た。ユズリハが混成して来ると根雪が薄く不安定で何度か落とし穴にはまった。

 灌木が多くなり密度が濃くなってきた。残雪が例年通りなら灌木もそれほど邪魔にならないが右に左に迂回して真っ直ぐ進めず時間の消費が早く感じた。

 先を行く若者たちは11時40分に標高1072mのピークに着いた。ここまで来れば何とか山頂へ届きそうだ。だが、この先に短いが岩交じりの急な下りが有って注意が必要、シャクナゲも邪魔をした記憶が甦る。それでも山頂は近い、急斜面から尾根へ這い上がるのだ。

 1072mのピークから山頂へ通ずる尾根の斜面を見上げて唖然とした。尾根の出口付近まで灌木のヤブで覆われている。実は新雪雪崩を警戒していたがその心配は全く無く安堵した。だが急な斜面上部は岩とシャクナゲに覆われているはずで急傾斜のラッセルは非常にきついはずだ。斜面へ続くピークからの下りも濃いヤブに遮られてヒン谷側を捲かねばならず時間が無常に過ぎて行った。

 下の写真は2017年の4月1日の山頂へ通ずる尾根へ出た付近の斜面で有る。この根雪に今日の新雪が載っていることを想定していた。雪崩の危険を予知しルートファイディング訓練の良い機会と思っていたが今季の異常な雪不足は勉強の機会を奪ってしまった。

 新雪のヤブ山急登のラッセルは大変である。右に左に岩やシャクナゲを避け、時に雪穴に嵌り体力を消耗する。折しも降雪が強くなりタイムリミットの13時が近くなって止む無く撤退を告げた。標高1175m、あと山頂まで110mである。トップで奮闘中のNがもう出口が見えていると残念がる。だが天候回復の見込みが全くなく会員外の体験参加者もいる。

 山は撤退の判断が難しい、潔い撤退などなく実力不足を素直に認めよう。我々の力ではこれ以上進めば下山は暗くなる。風で消されたトレースをヘッデンの灯りでは見失うのが明白である。100mほど下降した平地で食事タイムを30分とり、ここで集合写真を撮った。

 食事中に薄日が射して見上げるとブナが小枝の先に透明な氷をつけて反射し見事なほど綺麗であった。素人カメラマンでレンズでは旨く捉えられず残念であるが肉眼では本当に綺麗であった。今日の労働に対して山の神からのご褒美であろうか。

 青空が帰って来そうな雰囲気は何度かあったが断続的に春の嵐は続いた。帰りは木の根などが厄介で歩き辛くアイゼンは外した。2ヶ所の岩場は登りとなるので問題ないと判断した。トレースは消えかかっていたが標高880mのジャンクションまで順調に帰って来た。それ以降も尾根の広い所が有ったが登りで付けた赤布目印が有効で時間短縮に貢献した。最後の200mの激下りはトラロープのフィックスに助けられ新雪のお陰で滑っても尻を汚すことは避けられた。17時、ヘッデンの世話にならず駐車地に着きやれやれ今日の山行は終わった。
 2015年、17年の記録を見れば出発時間は今回と大差ない7時頃で山頂到着時間はほぼ午前11時である。駐車場には14時半には帰っている。雪の状況が今回の降雪直後とは全く異なるが堅い残雪との違いなのか、もしかして小生のスローペースが原因ではないかと気にしている。
 若丸山は当会指定の美濃百山C級である。来年の2月に年次計画が組まれているのでリベンジである。完

コメント

  1. 西岡 輝穂 より:

    素晴らしい山行を見せて頂きありがとうございます。
    私も登りたかった若丸山です。