【 初級冬山講習 】 鷲ヶ岳 ( 1671.49m Ⅲ△ ) 丹生 統司
当会2月の初級冬山講習は鷲ヶ岳で行われた。鷲ヶ岳は郡上市高鷲町・白鳥町と高山市荘川町に跨る山で大鷲退治の伝説が山名の由来だという。山頂手前のいっぷく平にはそれを顕彰する社がある。立石林道から見た鷲ヶ岳である。
- 日程:2022年2月13日(日) 晴れ
- 参加者:L.西村洋、大谷早、加藤美、後藤正、清水満、田中恵、丹生統、藤野一、宮沢健、村田美、山本知
- 行程:鷲ヶ岳スキー場第2駐車場7:00-点名・桑ヶ洞9:10-立石林道10:00-鷲ヶ岳山頂11:25~12:15 -桑ヶ洞14:10-鷲ヶ岳スキー場第2駐車場15:30
- 地理院地図 2.5万図:大鷲
鷲ヶ岳スキー場・第2駐車場に駐車、料金は¥1000、雪山は駐車地の確保に難儀するがこの値段なら良心的だろう。スキー場といっても客はスノーボードが95%以上に感じた。早朝で客は少なかったが邪魔にならぬようにコースの際や樹林帯を歩いた。
休憩中に林の中でカモシカがこちらを見ているのに気付いた。安全な距離を保ちつつ派手なウェアの人間に興味があるのかしばらくこちらを観察していた。
スキー場のゲレンデは点名・桑ヶ洞手前でやっと終わった。地形図を見れば全ルートの半分がゲレンデ沿いの歩行である。ゲレンデの音楽から逃れて尾根歩きが始まった。
尾根は小さな上り下りを3度繰り返して東方向へ延びていた。多人数に踏まれたトレースが残されていたが落葉樹の隙間から見える鷲ヶ岳山頂が遥か遠くに感じた。
周りに樹木が少なくなって上部に立石林道が横切っているのが見える。ということは、これを詰めた頂が点名・いっぷく平(14604mⅣ等△)である。この頂には大鷲退治の藤原頼保公の顕彰堂があるはずである。
立石林道に出ると北と西の展望が開けて三ノ峰から別山、白山、三方崩山、猿ヶ馬場山が眺められた。
西方遠くに伊吹山がお椀を伏せた山容で、能郷白山は前山が特徴的で山座同定の要となる。中央に一際目立つピラミダルな山は荒島岳でその右に小白山が有り野伏ヶ岳と銚子ヶ峰が白い山塊となって白山へ続いていた。
トップを行く藤野さんはいっぷく平を経由する「起伏の有る尾根ルート」を敬遠して平坦な立石林道のルートを選択した。尾根はこの先標高1390mで林道に消えて再び合流するのだが地形図を読んで承知しているのだ。ルートを事前に先読みしている彼を頼もしく思った。前方に山頂が手招きしている。
鷲ヶ岳は2度登った記憶が有る。一度は県民スポーツ大会で随分昔、2度目は当会のHとGとで阿多岐川からと記憶している。谷の抜け出しの濃い根曲り竹の藪と登山道に出てから急で狭い木階段が記憶に残っている。林道から傾斜地を登ったが木階段は雪の下だった。
標高1500mの傾斜が強くなる辺りでトレースが消えた。足跡の主は此処で登山を諦めたのではない、おそらく強風が消したのであろう。後藤君のリードで樹木の中にルートを求めて直登した。雪崩を意識して避ける賢明なルートだ。しかし、かなりの傾斜で先行者のワカンの裏が見える。最初それほど長く続くと思わなかった急斜面は100mも続いた。夏道の木階段が急であったことを思い出した。メンバーの実力と安全を考えれば帰りにこのルートは使えない別ルートを捜して下ろうと思った。
標高1600mまで急斜面を100m登りきると緩い尾根が東の山頂に向かっていた。村田さん、加藤さんの二人のリードで標高差70mを登り切った。逞しくなったと感心した。
山頂は360度遮るものは無かった。北西方向に三方崩山から白山、別山と三ノ峰、銚子ヶ峰から石徹白の山並みが能郷白山、伊吹山まで連なって見えた。
東に中央アルプスと御嶽山が見えて野麦峠を経て乗鞍岳と続いて北アルプスの白い山並みへと連なっていた。
奥穂と前穂の吊り尾根が確認出来て北穂がキレットで南岳と結ばれている。南岳の南面壁が黒く見える。中岳、大喰岳は白い塊でその左に槍ヶ岳の黒い穂先が確認出来た。さらに笠ヶ岳、黒部五郎、薬師岳、立山、剱岳の黒い三角錐まで北アルプスの名山が一望できた。
風を避けて東側の斜面で北アを眺めながらランチタイム、北方向には3月に後藤君リーダーで山行予定の猿ヶ馬場山が見えている。猿ヶ馬場山はより北アに近いのでの眺望は抜群で天候に恵まれれば絶景が楽しめるはずである。
下山は伊吹山から石徹白の山々まで奥美濃の山並みを眺めての贅沢な尾根の散歩である。標高1600mから100mの急斜面は尾根筋にルートを取って問題なく下降した。
初級冬山講習と銘うった山行であった。各々ワカン歩行を長時間経験して要領は掴んでいただいた。今回は全員が交代で先頭に立ちリードを経験した。山で最も大事なのはルートファイディングである。トップを歩く人の力量でメンバーを危険に晒すことはよく有る。より安全で効率よくメンバーを導くことを常に考え行動する習慣を身に付ける。地形図で先読みをしてメンバーの実力や体力を鑑みてルートを決める判断は重要なことである。今回は斜面の雪が柔らかであったが3月になると昼間に溶けた雪が夜半の冷え込みでアイスバーンとなる。雪が固くなると傾斜への恐怖感が倍増することを忘れてはならずピッケル、アイゼンは必携となる。完
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