大垣山岳協会

松尾から大神宮、そして高時山西峰 2021.02.13

高時山(加子母)

 長い尾根に連なる無名の三角点を2つ踏んで、なんとか目標寸前の高時山西峰に着いた。想定時間を大きく超えて、あっさり目標の高時山をあきらめた。少し心残りだったが、うれしい知識を得た。点名大神宮の小さな峰には昔、小さな神社があり、加子母の里人が登拝していたという。村人たちの大切な信仰の場がここにあった。私は何も見つけられなかったが、その真相に分け入って見たい。新たな目標との遭遇に胸が踊る。

【 個人山行 】
点名 松尾(1113m Ⅲ△)、点名 大神宮(1316m Ⅳ△)、高時山西峰(1434m Ⅳ△)
鈴木 正昭

  • 日程:2021年2月13日(土)
  • 参加者:単独
  • 行程:自宅6:15⇒中央道・中津川IC⇒国道256号⇒付知峡口⇒県道486号⇒大起(おごせ)⇒8:00大起林道駐車地8:25(標高790m)→大起林道→9:30松尾へ尾根取付き→10:00点名松尾(Ⅲ△)10:20→北尾根筋→10:50猪谷林道出合→12:35点名大神宮(Ⅳ△)12:40→2:35主稜1434mP・2:50→3:45大神宮→4:40猪谷林道出合→以後すべて林道経由→5:05松尾尾根取付き点→5:45駐車地
  • 地理院地図 2.5万図:加子母

 3年前に登った付知川左岸側の山域の伊勢戸薙(823mⅢ△)から松尾(1113m)の山行記録を見ているうちに、さらに北に向って尾根を登りつくして山域の盟主、高時山に登りたくなった。林道駐車地から約6㎞。長い尾根歩きで樹林や薮道の不思議や未知なる姿に出合えるかもしれない。やや気負って伊勢戸薙下の駐車地から林道を歩き出した。

 しばらくして北東側が開けた伐採地からまばらな雪面を抱いた高樽山(1672m 写真①中央)、その左側に高時山の黒い頂(写真①左側)が見えた。目標は遠すぎるなあ、とため息。幅の広い砂利林道には車も人の陰もない。前回は伐採作業の人が賑やかにチェーンソウの音を響かせていたことを思い出す。吹く風に木の葉が鳴らす音だけの静寂の中を足早に進む。

写真① 中央:高樽山(1672m) 左側:高時山の黒い頂

 両側の樹林はすべてヒノキばかりである。総じて30~50年生の人工林。林道を約1時間歩いてからクマザサが広がる尾根の背を歩き始める。ササは最初膝下の高さ。やがて腰高となるが、足元には踏み跡が続き、迷うことはない。歩き固めてくれた獣たちに感謝。平らな低いササ原の中に地理院の三角点掲示杭が立ちササの下に隠れた松尾の点石を見つけた(写真②=ササを刈り払いして写す)。

写真② 松尾の点石

 松尾からは西麓を通る林道を通らず、尾根筋を行く。ササ原上に雪田が出だすが、歩みを乱すほどではない。猪谷林道を突っ切って真北に延びる尾根を進む。雪の降る気配もなく、微風が時折吹く好条件。想定時間を上回る快調ペースだった。

 そこに油断があった。点名大神宮の直前の尾根分岐で行路ミス発生。あれこれ思案の末、正しい行路に戻り、やがて大神宮の三角点標柱を見つけた(写真③)。山頂台地は積雪30cmほど。点石は雪とササの下にあり、掘り出そうとしたが、無理だった。点名がなぜ「大神宮」なのか。37年前に設置されたこの三角点の「点の記」にはこの地の「俗称は大神宮」とある当時、山麓の加子母地域の人々はそう呼んでいたのか。この山行を計画した動機の一つがその点名由来を知ることだった。山頂に神社の祠があったのか。周りを探ってみたが、ササ原斜面にも何もなかった。

写真③ 点名大神宮。点石は雪の下。地理院標柱が立つのみ。

 大神宮から幅の広いなだらかな尾根を進んだ後、急斜面に取り付く。高度が上がるに連れてササ原の半分ほどは雪に覆われる。ササ原と雪田を交互に乗り越える。足の筋肉が悲鳴を上げる。周りは貧弱な細いヒノキ林が繁り、見渡せない。各所に赤テープを付けながら急斜面を登り切り、登山道の通る1434Pに到着した(写真④)。想定より1時間余遅れてしまった。木間に見える高時山の山頂を見納めてから、往路を戻る。下山では猪谷林道出合から終始林道を下って暗闇が迫る直前に駐車地に戻った。

写真④

 帰宅後、中津川市の加子母総合事務所のNT氏から貴重な情報をいただいた。地元の人たちはしばしば山上の祠を訪れ、お参りしていたそうだ。ただ、具体的な事実は消えかけているようだ。この山域の西隣一帯には加子母裏木曽国有林が広がり、その中に伊勢神宮の式年遷宮用材を切り出す神宮備林(木曽ヒノキ備林730ha)がある。大切なヒノキ山の護持を神宮にお願いする。でも伊勢は遠い。代役の神宮を地元の裏山に開創したのだろう。下山中にヒノキの人工林のなかに残るわずかな天然木の姿に引き込まれる(写真右)。そっと幹にわが耳を押しつける。ピーィ・ピーィという音が幹の内部から聞こえた。ような気がした。 完

<ルート図>

発信:2/20

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