【初級冬山講習】 白尾山 ( 1612m Ⅲ△ ) 丹生 統司
郡上市白鳥町、鷲ヶ岳の南端の白尾山はリーダーを務めることでその山名を初めて知った。会での記録が少ないせいか当初は20名もの参加申し込みが有りSLを2名の方にお願いして班別行動を計画したが各々事情があって結果的に14名の参加者となった。
白尾山への尾根歩きでは苔むした老ブナの幹肌の手触りを楽しみ、山頂では白山の素晴らしい眺望に感嘆の声が途切れなかった。当初は深雪を想定して旧スキー場のリフト乗り場から計画をしたが道路が進入禁止で急遽計画を変更した。スキー場北側の谷を挟んだ本来の登山道を使用することとなった。牛道川沿いに林道を遡ってスキー場上部の峠に至る道も有るがこれだと山頂まで距離が短すぎて登山が半減するので予定になかった。
- 日程:2021年3月14日(日)晴れ
- 参加者:L.丹生統、SL.後藤正、SL.中田英、記録.田中恵、大谷早、小栗敦、清水克、名和妙、林旬、藤井利、藤野一、堀義、村田美、宮澤健、平木勤(スキー)
- 行程:登山口7:15-旧スキー場リフト終点8:50-林道・夏登山口9:03-国有林看板9:40-白尾山頂10:50~12:10-登山口14:50
- 地理院地図 2.5万図:那留
スキー場への道が閉鎖されておりアタフタしたが清水克さんが昨年来ており付近の事情に詳しく登山口まで案内してくれた。集落沿いの道に入った迄は良かったが直ぐに道幅が狭くなり荒れて道路脇の小枝が伸びておりバシバシ車の車体を擦る。車の持ち主に気の毒で押し黙ったが今度は展開場所が有るのかハラハラであった。登山口の標柱が有ると膨らみが有り駐車出来てほっとした。降車して先ずGPSと地形図で現在地を確認した。
登山口を出るや大きな岩場に遮られ岩下を迂回し急な尾根に取り付くと倒木が邪魔をした。
雪は中々出て来ない。麓では昨夜から今朝にかけて雨だったが尾根に白く化粧を残した。
植林帯を抜けると白山から野伏ヶ岳、小白山と続く県境稜線が一際白く見えて、その手前に大日ヶ岳と毘沙門岳が黒い裾野で繋がって見えた。
スキー場のリフト終点に到着した。スキー場は3年ほど前から閉鎖されているようだ。
鷲見~白鳥林道が尾根を横断していた。駐車場が整備され無雪期は此処が登り口となっているようだ。
この付近はカワズ洞国有林と呼ばれているようである。
標高1400mを過ぎると雪が途切れなくなった。今朝方の冷え込みで雪は堅く締まっていた。
尾根には肌が爆ぜたように荒れた幹を苔が覆った老ブナを幾本か見た。千手観音のように枝を延ばしてくねらせており自然の美形に魅入った。
山頂下の斜面まで来ると日差しで雪が柔らかくなり靴が潜るようになった。ワカンの装着が初めての方もいたので早速講習会となった。
白い大地にブナが林立し青空に梢を延ばしている。西から山頂に合流する尾根が行く手に見えて頂が近いことを知らせてくれた。やがて歓声が聞こえる、トップは到着したようだ。
山頂に着くと会員の平木君が「ドッキリ!の待ち伏せ」思わぬ歓迎のサプライズに盛り上がった。快晴に恵まれて白山と御嶽山の大展望に参加者全員大満足で「万歳」を叫んだ。
今回は名和さんが雪山デビューとなった。この美しい景色のすばらしさを仲間に伝えていただき雪山愛好家を増やしたい。
これからゴールデンウィーク期間まで春山シーズンである。春山は天候に恵まれれば最高に楽しい思い出となるが一旦荒れると直ぐ冬に逆戻りする。注意が必要だ。
帰りの車中で「乗鞍岳の雪崩遭難」のニュースを聞いた。前々日から昨夜まで雨が続いていたが3000mの高所では雪だったのだろう。堅雪の上に春の湿気を多分に含んだ新雪が急斜面に積もれば表層雪崩が起きやすい。近頃は大半の方がGPSを使用して登山をしている。GPS指示の夏道にこだわると雪の急斜面をトラバースして雪崩を誘発する等の危険もあるので注意が必要だ。雪山はルートファイディングが重要である。
プロ野球の野村元監督は「野球には偶然の勝ちが有る」という、相手が勝手に自滅して勝ちを拾う場合があると。しかし、「負けに偶然はなく必ず原因がある」と説いた。
これは登山も同じである。天気に恵まれ、仲間に恵まれ、他人のトレースに導かれて実力以上の山に登ることがある。現代はそれをGPSが更にホローしている。しかし天気がいいのも、仲間に恵まれたのも、トレースも偶然の産物と思えば更なる努力や研鑽、経験が必要だ。GPSも極寒では電池寿命が短い。
100%安全が保障されれば登山とは言えないが「事故は偶然起きるものではなく必ず原因が有る」ことを肝に銘じよう。完
ルート図
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