大垣山岳協会

奥美濃 金糞岳北尾根山スキー(テレマーク) 2021.02.28

金糞岳

金糞岳 ( 1,317m △なし ) 平木 勤

  • 日程:2021年2月28日(日)晴れ
  • 参加者:単独
  • 行程:鳥越林道入口7:00ー尾根取付き8:00-688m三角点9:25-主稜線11:10-山頂12:30-休憩13:00~13:40-林道15:50-林道入口16:15
  • 地理院地図 2.5万図:美濃川合

 ここのところ、山協ではスキーでの山行記録を見ない。かつてはあった会としてのスキー山行企画もなくなって久しい。やっている方も見えるのかもしれないが表に出てないようだ。そんな中でたまにはスキーの記録も良いのではないかと思い今回投稿させていただく事にした。興味を持っていただく方はいかほどかと思うがスキー以外の方にも参考になると思うで一読をお願いしたい。

 今回選んだ金糞岳北尾根は10年前に、現在は北海道に在住されている古林さんにせがんで連れていっていただいた。最初の頃は良い顔をしなかった古林さんではあったがあまりのしつこさに最後は哀れに思ったのだろう、行こうと声をかけて下さった。

 この時のパーティは異色と言えば異色で、古林さんと僕のスキーにワカンの丹生副理事長(現理事長)と柴田さんという組合わせだった。しかし、この頃は割合にワカンとスキーの同行山行が行われており、僕自身も度々会の山行にスキーで同行していて珍しい編成という感じはしなかった。今ではほとんどそういう事もなくなってしまったが。

 多雪だったこの冬だったが高温の期間も多く融雪も早い。奥美濃の山々はスキーにはすでに賞味期限が近くなったようだ。まだまだ行きたい山は幾つもあるのに残念だ。残り少ない機会、是非もう一度行きたかった金糞岳に向かった。

 テレマークをするようになって山へ向かう事が減っている。ましてや単独の山スキーは回数が少なくなった。スキルダウンした上に、コロナ禍をはじめ諸般の事情で体力も落ちている今、難しい急登があるルートを果たして完登出来るのか、一抹の不安を感じながらの出発となった。

 坂内広瀬を越えて鳥越林道の起点に辿り着くと工事のための車止がされていた。冬期で工事は行われていないようだが除雪もされておらず車を乗り入れる事ができない。仕方なくR303を挟んだ旧道の橋の袂に駐車した。

 準備をしていると後から一台、同じように鳥越林道に入れず隣に停まった。単独のスキーヤーで今回のルートの更に奥から渡渉をするルートを取るようだ。ゆっくり用意している僕を尻目にさっさと出発していった。

 出発からシール歩行を始めたがすぐに雪が三ヶ所で切れて、その度にスキーを着脱した。これは2月13日に行った高尾山の二の舞か、と思いきやそれ以降は問題なく快適なシール歩行ができた。


 雪上には昨日のものだろうか、スキー痕とワカンらしい跡が残る。スキーヤーに意外と人気のある山で前日には僕の知合いもスキー山行をしていた。

 浅又川は雪融け水が流れ込んでいるせいかとても澄んでいて取水堰堤の底も丸見えだった。谷間の開けた所からは朝陽を浴びて輝く金糞岳が顔をのぞかせていた。まだまだ遥か先だ。

 標高430mの谷出合で脇に林道が入っている尾根が取付きとなる。雪に半分埋まった車止脇からわずかに入った堰堤横の斜面を登り始めた。堅雪の急斜面にクトーを装着した。それでも肝の冷えるトラバースが続いた。前もこんなに厳しかったのかなあと、帰ってから過去の記録を見ると鳥越林道をもう少し先に行ったカーブミラーの所から取り付くのが正解だったようだ。

 尾根上にあがれば穏やかな樹林帯が続き、気持ちのいいスノーハイクとなる。その中に、何時のものだろうか、スキートレースが残る。

 ピークを幾つか越えると冬枯れの樹林の向こうに真っ白な金糞岳が見えた。随分歩いたつもりだったがまだまだ近づかない。

 688m三角点から主稜線に繋がる痩せ尾根に下りる。その先には核心部といえる急斜面が立ちはだかる。10年前に古林さんが「本当にこんな所登ったのかなあ?」と呟いて不安になった所だ。ところどころ地肌を見せる斜面にあの時と同じ不安がよぎる。

 痩せ尾根を難なく渡って急斜面の取付きに辿り着くと沢側が雪がつまり細い尾根側より登高向きに見えた。雪質は安定しているようで崩れる事はなさそうだ。適度な緩みもありシールのグリップが利いて安定した歩行ができる。それでも斜度はきつく、緊張の登高が続く。もう止めようか、スキーを担ごうか、などと弱気の虫が湧いてくる。その分、時間をかけゆっくりと登ることになった。アイゼン、ピッケルならガシガシ行ける所だろう。

 10年前、古林さんはここをクトーなしでさっさと登っていった。その姿に凄い!と思ったものだが今回改めてそう感じた。自分の力のなさが情けなかった。

 広くジグを切りながらなんとか左手尾根上に出る事ができた。核心部を越えてほっと一息。木立の少ない尾根からは山頂へと伸びる主稜線の長くうねったラインがのぞめた。あそこへ辿り着くためにはまだまだ続く急登を登りきらなければならない。

 下から見た時、地肌が現われて通過が困難なのではと不安にさせたところは尾根の南斜面の雪が崩れたものが尾根上が崩れているように見えたもので、実際には雪が残り通過にそれほど問題はなかった。

 主稜線に近づくとブナ主体の樹林になり楽しい気分にさせてくれる。主稜線に出ると更にすばらしいブナ林が出迎えてくれた。ヒヤヒヤの核心部を越えた後だけにまるで天国のように思えた。

 ブナに覆われた広い尾根を歩いていく。しばらくすると広々とした雪原に出た。振り返れば江越美の山々のパノラマが広がる。空には雲がかかって遠方はのぞめないがそれでも十分だ。

 雪上には今日のものらしい先行者のトレースが残る。登ってきた尾根よりも更に北から続いていた。それを追いながらのスノートレッキングは実に爽快だ。

 長大な尾根の向こうに奥美濃の山並みが広がり始めた。その中に一際目立つのは蕎麦粒山のとんがったピーク。コソムギのとんがりと合せて、まるで山々の中心のように見える。そんな景色を背にしての楽しいスキー歩行が続く。雪はしっかりとしまっている。

 山頂が近づいてくると樹林は疎らになる。そのかわりうねるような尾根が雪庇を作り恐ろしげだ。崩れた跡を見ると三層から四層の明確な層が確認できる。大雪が降っては高温、という繰り返しが作ったものだろうか。

 幾つかの小ピークを越えて雪原の向こうに見えたのはボリューム感のある金糞岳山頂。何人かが休憩しているのが見える。後一息だ。難しいか、と思われた登高だったが無事にここまで辿り着けた事で全身に喜びが沸き立つ。

 山頂からは既に下りてくるスキーヤーがあった。服装から今朝隣に駐車した車の主だとわかった。かなりやられている方だとは思っていたが流石に早い。因みに渡渉は膝下ぐらいだったらしい。

 右手には金糞岳とは対照的に険しい表情を見せる白倉岳。吊り尾根にトレースが確認できた。

 広々とした山腹をシールを利かせてしっかり登っていく。見られているのがわかるのでみっともない登り方はしたくなかった。

 山頂では三人のスキーヤーが出発する所だった。追ったトレースの主達だった。話を聞くと八草トンネル東側の尾根から取り付いたらしい。距離がありアップダウンも多いと思うがタフな方達だ。

 赤く大きな山名板の立つ山頂は樹木がなく広々としていて360度の展望がある。そこをスキーを履いたまま歩き回ってみた。奥美濃の山並みは比較的よく見えるが滋賀県側はあいにく雲がかかって琵琶湖も沈みがちだ。比良の峰々や伊吹山はガスの下だった。しかし、10年前は全面が乳白色の幕に覆われていた事を思えば感慨もひとしおだ。

 山頂付近は常に風が吹き寒いので場所を移す事にした。荷物も下ろさずにシールをはずし滑降開始。滑り出しが何時も不安なテレマークだが板がうまくずらせる雪質で気持ちよく滑る事ができた。

 風が少ない場所を探して1220m辺りまで下り休憩。温かな日差しと奥美濃の山並みを楽しみながら腹ごしらえをし身体を休めた。時折、奥伊吹スキー場のBGMが聴こえたのには驚いた。

 下降は細かいアップダウンがあるものの雪質とテレマークという道具のせいかあまり気にならなかった。やや細く急な尾根部分もあったがずらしながら下りる事が可能だった。広い場所ではへたくそながらテレマークもできて楽しい。

 登りで不安だらけだった支尾根の急斜面も調度いい具合に雪が緩んでいて上手く板をずらしながら難なく下る事ができた。

 痩せ尾根を渡った所からはシールを装着した。主稜線よりもアップダウンが大きいが雪質のおかげで下降もシールのままで問題なかった。

 不安だらけの山行だったが終わってみれば楽しいものとなった。山行中は10年前の事を所々で思い出して懐かしかった。ワカンとの混合だったが行動時間は今回よりも早かった。僕以外の3人は今の僕より年齢が上だったはずだが足取りは確実だった。その点でも改めて感心させられた山行となった。

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