【 冬山山行 】 甲斐駒ヶ岳( 2965.5m Ⅰ△ ) 後藤 正雄
- 日程:2015年12月30日(水)~ 2016年1月2日(土)
- 参加者: L.西村洋、杉本眞、北川洋、後藤正
- 行程:
- 12月30日(水) 大垣・岐建駐車場13:00=大垣西IC=伊那IC=仙流荘バス停駐車場17:30
- 12月31日(木) 仙流荘バス停6:20=戸台駐車場6:30~7:10-丹渓山荘跡10:20-大平山荘12:40-北沢峠13:00-長衛小屋テント場13:20~14:30(テント設営)
- 1月1日(金) テント場7:00-仙水小屋7:40-仙水峠8:15-駒津峰10:10-甲斐駒ヶ岳山頂11:45~55-駒津峰13:10-仙水峠14:20-仙水小屋14:50-テント場15:10
- 1月2日(土) テント場9:30-北沢峠9:45-大平山荘10:05-丹渓山荘跡11:20-戸台駐車場13:55=高遠さくらの湯=伊那IC=大垣西IC=19:30岐建駐車場
- 地理院地図 2.5万図: 仙丈ヶ岳・甲斐駒ヶ岳
30日
今冬の越年冬山は近年では久々の南アルプスとなった。記録的な暖冬なので、雪があるのか心配しつつ、昼過ぎ大垣をたった。伊那ICから高遠の街を通り抜け、秋葉街道を南下、仙流荘のバス停駐車場に到着。夏は林道バスにのる人で一杯だが、車は1台もいない。バス利用者用の仮眠小屋を利用させていただく。明日からの無事を願い軽く乾杯し夕食。共同装備のSOTOのストーブはあまり習熟していないので、着火実験をする。青白い炎があがり、消火も問題なくできた。この時に故障が起きていれば、後の悲劇は起らなかったのだが。
31日
朝、戸台駐車場には50台ほど車が駐車。かなりの入山者だ。久しぶりに重いザックを背負い出発。戸台川の堰堤3つを超えると河原歩きが短調に続く。前方に甲斐駒ヶ岳が見える。左手には鋸岳も見えてくる。角兵衛沢分岐、熊穴沢分岐を過ぎ、丸太橋を渡ったところで大休止。ここまで全く雪はない。
丹渓山荘跡のすぐ横を通り最後の渡渉を過ぎると、八丁坂の急登だ。樹林帯の中ではまったく厳冬期登山とは思えない汗ばむ暖かさ。標高1800mあたりから雪が出てきた。キャンプ指定地(南アルプス市営長衛小屋前)に着くと、テント場には30から40張のテントが並んでいた。水場の近くにテントを設営した。雪は5cmほどだ。
ガソリンストーブはMSRのドラゴンフライとSOTOのMUKAの2セットを用意。テント内でまず、SOTOのストーブで湯を沸かす。昨晩と同様、問題なく短時間で沸騰し、湯を各自のテルモスへ入れる。同時にご飯を炊くためにMSRも点火しコッヘルを載せる。ところが、SOTOを再点火したら30cmほどの火柱が立ったまま。すぐに緊急消火しダイヤル位置を確認する。もう一度、手順を確認しながら着火。やはり炎は安定しない。さらに本体の吸気孔あたりからガソリンが漏れ出す。大慌てで消火し防火シートをかぶせる。ガソリンがボタボタと漏れるようではSOTOは使えない。仕方がないので、MSRのストーブ1台の運用とし、お米を炊き始める。しばらくすると強いガソリン臭が広がる。SOTOはテント室外にある。よく見るとMSRのポンプのパッキン部分からガソリンがポト、ポトと漏れている。消火換気後に再点火する。
漏れ出るガソリンをティッシュでぬぐい、防火シートを構えつつなんとかお米を炊き終え、牛丼を作り終えた。大晦日の晩御飯は、なんとか暖かい食事にありつけた。
使えるMSRの不調を考えるとテント内でのストーブ使用は諦めるほかない。湯わかしと食事つくりが思うようにできず、暖がとれない以上、当初の行程計画は縮小せざるを得ない。明日朝食は火を使わない行動食ですませ、甲斐駒ヶ岳に登る。戻ってからテント外でMSRストーブで晩御飯を作り、明後日下山とし、仙丈ヶ岳登頂は断念するという行程変更を決め、早々とシュラフに入った。
1日
朝、快晴のため冷え込みは厳しいものの絶好の登頂日和。小屋の従業員の方から、雪はほとんどなく夏道を歩くことになると聞く。輪かんは置いて行く。行動食を朝食とし、手短に準備を整える。仙水小屋でアイゼンを付けたが、仙水峠まではアイゼン無しで十分であった。
仙水峠で振り返ると仙丈ケ岳の雄姿が見える。雪煙があがっており、登れば登るほど風がきつくなりそうだ。樹林帯では雪は吹き溜まりでも10㎝あるかないかで、途中地面が見えるところもある。
高度を上げるにつれさらに雪が薄くなる。森林限界を超えたあたりから駒津峰まではうっすらと雪化粧はしているものの、ほとんど茶色い地面が見えている。
駒津峰で小休止。雲一つない天気に恵まれ、北岳、間ノ岳や、地蔵岳のオリベスクも確認できる。富士山の雪景色もまだら模様だ。北アルプスの山々も見える。駒津峰から六方岩まで一旦下り、岩稜の直登ルートを行く。岩には雪はなくアイゼンの爪を岩に引っ掛けて登っていく。岩稜を越え、間もなく山頂到着。
雲一つない快晴のもと絶景を堪能する。風は少しあるものの日差しがある。それでもじっとしていると冷えてくる。長居はせず直登ルートで下山開始。駒津峰との鞍部手前の日当たりがよく風の当たらない岩場で大休止。駒津峰に登り返し、写真をとってもらった女性の山岳ガイドら3人のパーティーと声を交わす。
駒津峰でアイゼンを外す。雪不足でアイゼンがあると返って歩きにくいのだ。我々は、登るスピードはゆったりペースだが、下りとなると滅法早い。いくつかのパーティーを追い越した。
テント場に戻り、真っ先にストーブ燃焼確認をする。テントの外でSOTOのストーブの点火試験。やはり、豪快な炎をあげまくり、本体からガソリンが漏れ出す。MSRの方も昨晩より滲み具合が増している。危ないので野外調理を決める。お湯は時間はかかったが、なんとか湯をテルモス4本に入れる。温度は風呂の湯程度だが致し方ない。次に主食の八宝菜を作る。私の調理がまずかったせいで、激辛の八宝菜となった。鮭雑炊の方はおいしい味付けで完成。MSRの火力が弱くしかも屋外での調理。時間はかかったが、ともかく暖かい晩御飯がいただけた。火なしの寒さに耐えながらも少し遅くまで新年の宴を楽しんだ。
2日
2日の朝食は暖かいラーメン。湯が沸くのにやたら時間がかかる。ガス漏れで圧力も低下しポンピングに四苦八苦。大半のパーティーが出発し始める中、我々は煮え切らぬコッヘルを取り囲む。朝食作りに2時間近くかかる。それでも冷え切った体を十分温めることができた。
下りは北沢峠から大平山荘までは登山道が凍結のため下山利用禁止との看板があったため林道を利用した。長い河原歩きの末、戸台にたどり着いた。今回の山行は、ストーブが2台とも故障という惨事に見舞われ、即下山も考えた。しかし、仙丈ヶ岳は断念せざるをえなかったものの甲斐駒ヶ岳に登頂することができたのは不幸中の幸いだった。
テント内でのストーブの炎の噴出は危うくテント火災になるところであった。反省点としては何より、出発前のストーブの丁寧な作動チェックを怠ったこと。故障原因は経年劣化によるゆがみや変形などが考えられる。故障原因を解明しておくことが再発防止に必要なことだろう。
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