大垣山岳協会

古い記憶を訪ねて・湧谷山西尾根 2025.03.14

湧谷山

【 個人山行 】 湧谷山( 1079,6m 点名・湧谷 Ⅲ等△ ) 揖斐川町坂内川上 NT

 湧谷山への登路といえば東面の広瀬集落からが一般的である。当会3月2日の計画もそうであったが天候不良で中止となった。15年ほど前に単独で西の川上から登ったが記録を残しておらず紹介の意味を兼ねて再登した報告である。

<ルート図>
  • 日程:2025年3月14日(金) 天候 曇り後晴れ
  • 参加者:NT(単独)
  • 行程:夜叉龍神社駐車地7:27-P518m8:23-P1020mジャンクション10:43-湧谷山山頂11:31(標高1000mランチタイム60分)-夜叉龍神社駐車地15:39
  • 地理院地図2.5万図:美濃広瀬

 15年ほど前の時は国道沿いの空き地に許可を戴き駐車、集落上の要塞のような大堰堤脇の右岸に取り付き登った。現在その空き地は車庫が並んでおりやり過ごして夜叉龍神社の駐車場に止めた。坂内川の橋から仰ぐ西尾根末端は急傾斜でアイゼンが必要と思われた。

 アイゼンは持参していない。以前登った大堰堤横から登る予定だったが地形図を見て集落上の寺裏斜面が緩いと判断した。寺横の地蔵様に今日の安全を祈って手を合わせ出発した。

 尾根芯まではツボ足で登ったが時折埋まった。ワカンを履いて歩きだして直ぐに古い足跡を見つけた。昔登った時には全くそれらしい痕跡がなかった、この15年で奥美濃の精通者や雪山登山者が増えたのだろう。

 川上浅又川と坂内川を分けるトガス、南尾根の発電施設への導水管を見て稼いだ高度の目安としたが遥か下になった。変わって椀戸谷の最奥に高丸から烏帽子山へ続く吊り尾根が白く輝きだした。今日は天候異変なのか福井側の空が青く岐阜側の方が曇っていた。

 スゴッ!思わず声を発したコブコブの老ブナ、童話の絵本に出て来そうで森の精が宿っていそうな気がする。話しかけると二股に分かれた幹が手のように動くと窪みが歪んで開きスローな声が返って来そうな気がした。

 この尾根では熊が上り下りして残した爪痕のブナを何本か見た。揖斐川町坂内と滋賀県余呉が私の感覚では熊の生息数が特に多いイメージがある。

 寺の裏山からブナ林が尾根と南斜面に1020mのジャンクションまで続き大きいものは1mも有りそうだった。雪の反射熱と太陽照射を受けてブナの根元の温度が上昇し幹回りから雪解けが始まる。根開きとか根明けと言うようで春山のブナ林の美しい景色の1つだ。

 初めてみた山屋のものと思われる目印、その先が細尾根となっており川上浅又川側が雪庇状で不安定に堅い雪が載っていた。ピッケルを使用しワカンのツメを効かせて慎重に越えた。

 北に大ダワと高丸から烏帽子山の吊り尾根が絶えず見えていたが、その奥に岐阜・福井の県境主稜の山並みが高度を稼ぐ毎に明瞭に確認出来るようになった。

 1020mのジャンクションピークへ向かって緩やかな雪稜が導く、川上浅又川の右俣側が急傾斜となっていたが雪庇はほぼほぼ落ちていた。だが古い踏み跡が幾つかの亀裂を発生させており慎重に立ち木の傍を通過した。

 1020mジャンクションに到達して初めて湧谷山山頂が確認出来た。山頂からホハレ峠へ続く尾根の上に蕎麦粒山と小ソムギの山頂部が覗いている。積雪は多く雪庇は南側に出来ているがほぼ落ちていた。それでも亀裂は所々に派生して残っていた。

 丁子山の奥に右から小津権現山、天狗山と花房山が重なるように見えている。写真右端の三角形は飯盛山である。

 金糞岳は長大な北尾根を坂内川上まで延ばし登山中は大きな山容を終始南に見ていた。だが登っている西尾根の南側はブナ林が続きカメラアングルに恵まれなかった。やっと梢に邪魔されずにシャッターが押せた。

 山腹の中央にこの10日に行ったばかり貝月山が見える。山腹の白く目立つ斑が揖斐高原スキー場だ、右の凹みは品又峠、そのまた右の高みがブンゲンである。貝月山と鍋倉山の日坂越えの背後は高天神919mと思われる。写真左端の小さなピラミッドは飯盛山である。

 1020mジャンクションから湧谷までの吊り尾根は眺望に恵まれている。中央の烏帽子山と高丸の左、県境稜線の中腹が所々黒い、おそらく夜叉壁で直ぐ隣の高みは夜叉丸、離れて南北に長い山容は三国岳であろう。烏帽子山より右の山は山頂写真で紹介する。

 右より夜叉壁から夜叉丸、三国山と続いた手前の山は大ダワで左へ辿った先の高みが土蔵岳で背後に覗いている高い山は横山岳である。

 前回15年ほど前に来たのは2月と思われるが雪が柔らかく吊り尾根から山頂へはそれなりにラッセルが厳しかった記憶が甦った。ジャンクションより下の細尾根や傾斜地は記憶にないが、この雪壁を見てキノコ雪帯の通過を思い出した。

 頂上斜面へは堅い雪をワカンのツメを効かせて登った。北からの風雪にさらされたブナの枝先の芽はまだ堅く麓の木々とは全く違っていた。

 山頂には広瀬から登って来た登山者が一人居たが直ぐ下って行った。古い山名板がブナの幹に括られていた。幹は細いが黒く爆ぜて荒れた肌に厳しい自然界の摂理を教えられた。正面に蕎麦粒山が存在感のあるピラミダルな山容で見えて格好良かった。

 山頂から北のホハレ峠、蕎麦粒山へ続く稜線の奥に奥美濃の絶景が展開していた。左の高丸と烏帽子山の右は県境稜線の1288mPと笹ヶ峰、その右は不動山と千回沢山、右端に黒いのが冠山である。烏帽子山の左肩に美濃俣丸が白い山頂部をチョコンと覗かせていた。

 蕎麦粒山は屏風山と並ぶ奥美濃の鋭鋒である。小ソムギと五蛇池山の奥は能郷白山で、蕎麦粒山の左肩から若丸山と冠山と続き、その背後に銀杏峰と部子山が見えていた。

 風が有ったので撮影を済ますと吊り尾根の鞍部まで引き返し金糞岳を正面に見て南斜面を削り風除けとして腰を下ろした。風を避けると春の陽気で時間を忘れすっかり長居をしてしまった。今日もいい山行が出来た。湧谷山は広瀬からのルートが一般的であるがこの西尾根はブナ林が見応えがありもっと登られていい。だが冬季の山間集落は何処も雪で道が狭くなっており車の乗り入れ等で地元民に迷惑を掛けてはならない。西尾根の場合は国道から進入し夜叉龍神社の駐車地を利用願いたい。完

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