大垣山岳協会

ブナの回廊・扇谷周回 2021.11.21

点名・寺尾

【 個人山行 】 点名・寺尾( 689.34m )、扇谷周回 丹生統司

 4年ほど前のブナの芽吹き頃に当会のI君とたまたま駐車地が一緒になったが目的の山は違った。その後I君が辿った尾根に興味があって昨年秋にS君と周回した。悩ましい尾根の分岐が3ヶ所ほど有って地形図講習の適地と思った。入会の浅い方たちを誘えば読図力アップは間違いない。なによりブナ林の綺麗なこと、これも紹介したかった。

<ルート図>
  • 日程:2021年11月21日(日) 晴れ
  • 参加者:L.丹生統、PL.藤野一、田中恵、中田英、成瀬弘
  • 行程:櫨原望郷広場8:00-点名・寺尾8:55-日本庭園9:25-823m峰11:00~40-林道着13:55-扇谷渡渉14:35-櫨原望郷広場15:35
  • 地理院地図 2.5万図:美濃徳山

 今日は藤野PL、田中、成瀬のリードでルート選択や休憩などを行うことを約束ごととする。丹生と中田は見守り隊でルートを外しても15mほど通過するまで危険でなければ手出し無用を約束した。朝のダム湖は風が湖面上の水蒸気を揺らしており幽玄で神秘的だった。

 今日は三角点の有る頂は点名・寺尾のみ、先ず周回前に記念写真を撮って出発した。

 周回を開始するや早々に樹幹が縦に凸凹が有る木を見つけた。木肌はブナに似ていた。右の木にはフジツルが大蛇のように巻き付いていた。

 紅葉の並木路ならぬ並木尾根を行く。

 カルスト地形の丘、標高580m付近を日本庭園1号、標高660mは2号庭園と名付けたがいかがだろう。ケヤキの大木が石灰岩の大岩の上で根上がりになっていた。

 標高660mで尾根は北に方向を変える。リード担当者3人寄れば文殊の・・・検討中。GPSはお守りでザックの中である。

 ブナの美形に思わず立ち止まり観察する。このような美林が続くのが此の尾根の特徴。

 尾根の細い個所が2ヶ所ほど有ったが雪が着けば雪稜歩きが面白いだろう。

 横倒しのミズナラ、こういった倒木によくナメコが出るのだが気配もなかった。

 大木の中が空洞になっているブナの老木、幹の中央に穴が開いており向こうが見通せた。

 所々に紅葉したモミジが残っておりブナとの共演に気持ちのよい尾根が続く。

 周回の途中で逆回りに来る単独行者に出会いビックリした。このようなマニアックなルートで人に遭遇するとは思ってもいない。標高800mの峰辺りで熊を見たと言っていた。標高777m辺りの台地でブナの大木に登り下りした真新しいクマの爪痕を見つけた。

 爪痕のブナの大木を見上げればクマダナが三つもあった。

 登りは気楽に歩けるが下降に入るや地形図とコンパスから目が離せない。自信がなければパーティーを一旦待機させて、15mほど下って確認すれば正解かルートを外しているかの判断をしやすい。まずいのはパーティーを引き連れあっちこっち引き回すことだ。

 先日杉倉でも見たが「とぐろを巻いたブナ」がここにも有った。

 素晴らしい紅葉を見上げる。

 扇谷林道へ急下降が始まる。藤野PLは支尾根に入り込まぬよう確認に余念がない。トップを歩く者は全員の生命を預かっている。緊張で紅葉をじっくり鑑賞するゆとりはない。

 尾根の南側植林帯から下降の予定であったが通り過ぎた。気付いた所から灌木の斜面の真下に廃棄された軽トラックが見えてブッシュを掴んで降りられそうだ。藤野PLは下れると判断したが止めた。そこからでは林道の法面がどうなっているか分からない。こういう時に事故は起きやすい。ここは北側の昨年利用した杉の植林帯を下降するのが最も安全だ。

 最後の障害、扇谷の渡渉、スパッツを着けて早足で渡ればこの程度の深みなら靴下を濡らさずに済む。後はのんびり林道歩き1時間ほどで駐車地である。

 今回、周回の尾根末端付近と取付きに真新しい目印が残されていた。そのままにしておいたが出来れば奥美濃の山に目印など人工物を放置しないでいただきたい。このルートは目印が皆無で人跡も目立たぬ奥美濃らしさが残った数少ない尾根である。出来る限り人の香りを残してほしくない。目印を使用したら必ず回収して欲しい、尾根をいつまでも自然のままで残して欲しいのである。

 この頃連日といっていいほど低山での遭難事故がマスコミを賑わしている。登山道や道標が整備されて誰でも登れる山が多くなったことが遭難の一因と考えられないか。近距離での道標や目印の多用は登山技術や地形図等の知識が必須でなくなり、GPS使用で技術軽視に拍車がかかっている。それが安易な俄登山家育成に手を貸している気がしてならない。

 登山技術や読図などの基本技術は繰り返すことで身体に沁み込み反応するようになる。場数を踏むことで五官も鍛えられて敏感に働くようになる。ルート選択やルートの踏み外しなどで勘が働きベストの判断が早くなる。

 今山行の当初計画は3班に分け責任範囲を決めて行う予定であった。しかし、前日にハードな会の山行が組まれておりキャンセルが何人か出た。補充も含めて何人かに声を掛けたが既に予定が入っていた。

 当初計画を変更し全行程のリードを3人に務めてもらった。これが大正解だったようで長い行程を歩くうちに読図の要領を得て終盤の難解ルートを次々にクリアした。メンバーが多くなると参加するだけの人が出やすいが今回は少人数の為に手抜きが出来ず全て実になったようだ。次回からは指導者を任せられるほどの成果を得て大満足の一日で有った。完

コメント

  1. ヒビノナオキ より:

    いや~ 皆さん 健脚ですね

    ブナ林のある尾根は 歩きやすい(昔からの踏み跡?が残っている場合が多い) きれいですね

    春の新緑もいいかなと思います

    扇谷は 釣りで通いましたが 尾根の巡回も 楽しそうだなと思いました