月報「わっぱ」 2013年6月(No.379)
【 春山合宿 】 針ノ木岳 ( 2820m Ⅲ△ )、蓮華岳 ( 2798m Ⅱ△ ) 藤森 ふじ子
- 日程:2013年5月3日(金)~ 5日(日)
- 参加者:L.佐竹良、竹森せ、杉本眞、林旬子、後藤正、藤森ふ
- 行程:
- 5月3日(金) 大垣4:25=大垣IC=中央道=長野道・安曇野IC8:05=扇沢駐車場9:00~50-大沢小屋11:00-テント場11:10
- 5月4日(土) テント場5:10-針ノ木峠8:25-針の木岳10:35~11:10-針ノ木峠12:05~15-蓮華岳13:40~50-針ノ木峠15:00-テント場16:30
- 5月5日(日) テント場9:00-扇沢駐車場9:40~10:15=大垣
- 地理院地図 2.5万図:黒部湖
5月3日(金)
大垣4:25=大垣IC=中央道=長野道・安曇野IC8:05=扇沢駐車場9:00~50-大沢小屋11:00-テント場11:10
黒部ダム観光の出発点である扇沢駅の駐車場に着くと、多くの観光客で賑わっていた。時間も遅いこともあるが登山者は私たちのみである。共同装備を分配しザックに詰めていると、登山指導センターの職員がやって来た。「白馬大雪渓は警察から自粛するよう言われている、ここもそうして欲しい」と言う。数日前の白馬大雪渓での雪崩事故が頭をよぎった。雪渓の登山は落石・雪崩による危険と隣合わせであることは知っている。当初、針ノ木峠にテントを張る予定だったが、気温の上昇で針ノ木大雪渓で雪崩の危険が増すと判断し、テント場は大沢小屋に変更となった。
登山計画書を登山センターに出し、重いザックを担ぎ登山口のゲートを通過した。そこはもう雪である。傾斜はなだらかだが、荷の重さと木枝が邪魔してバランスを崩し転びそうになる。
やがて小さなこいのぼりが点々と泳いでいるのが見えた、こいのぼりに導かれて大沢小屋に到着した。「山を想えば人恋し、人を想えば山恋し」と言う名句を残した近代登山者の先駆者百瀬慎太郎氏の碑の横を通り200mほど進んだ所をテント場とした。テント場から、東方向に爺が岳の三角形の頂が真っ白な雪に包まれ太陽に照らされキラキラ輝いていた。
テント場近くの斜面で雪面でのキックステップの訓練をした。まず佐竹さんから登り下り、ターンの方法のデモンストレーションと説明を受けた後、個人練習。下りでは「もっと前傾姿勢にして、軸足の膝をもっと曲げよ」とアドバイスを受ける。私は腰が引けてしまい軸足の膝を曲げる姿勢がうまくできない。練習を重ねる内に、少し上達したように思った。
5月4日(土)
テント場5:10-針ノ木峠8:25-針の木岳10:35~11:10-針ノ木峠12:05~15-蓮華岳13:40~50-針ノ木峠15:00-テント場16:30
朝日で白く輝いている雪渓は垂直の壁のように見えた。萎えそうな気持を奮い立たせ足を踏みだした。雪はしっかり固まっている。テント場から500mほどは傾斜も緩やかで登りやすかった。鳥の鳴き声も聞く余裕があった。しかし標高1850mから2050mの急斜面では昨日練習したことを思い出し、一歩一歩アイゼンを蹴り込んで進んだ。登り切って、雪面がゆるやかになり振り返る。息をのむような高度感に足が震えたので下を見ないようにした。
さらに上部の急斜面で樹林帯方向へトラバースした。谷側の足はやや下向きに山側の足は進行方向にと教えてもらったが、とにかく斜面がきつすぎる。なんとか木に辿り着き、ザックをピッケルでしっかり留めて木につかまって休憩。最後の急登を経て、厳冬期に戦国の武将佐々成政が18名の家来と共に越えた針ノ木峠に着いた。
峠から針ノ木岳を目指す。300mほど進むと垂直の3mほどの高さの岩場に出た。岩に雪が積もっている。アイゼンを付けてはいるが滑る。ホールド点も見つからず悪戦苦闘。「ピッケルを使え」の指示が飛び何とかクリアできた。シャフトを握りピックを打ち込み登ったのは初めて。稜線に出ると風が強く雪も舞い上がり足元がふらつく。汗ばんだ体も一気に冷えた。
その先は痩せ尾根を避けトラバースとなった。ウインドクラスト状態の斜面。私はトラバースが苦手である。真っ直ぐに立てず体を山側に近づけてしまい、足が滑る。「体を真っ直ぐ」との声は聞こえるが思うようにゆかず。杉本さん、佐竹さんの助言で乗り切り無事登頂できた。
頂上からは爺が岳、鹿島槍ヶ岳、下には黒部ダムなど四方が見渡せた。昼食を取っていると、真っ白な山肌に雲が影絵のようにゆっくりと流れていた。きれいだなと思っているといつの間にか頭上の黒い雲から雪がちらつき始めた。低気圧の通過らしい。先ほどまで太陽が照り輝いていた天候が冬に様変わり。帰りは夏道をトラバースして針ノ木峠へ下った。
針ノ木峠に着くと雪が強風と共に舞っていた。佐竹さん達はすぐ、雪渓を下る予定であったが、私たち女性は『今しか蓮華岳に登ることができない、もう二度と来ることがない』の思いが強いと訴え、蓮華岳へ向かうことになった。
針ノ木峠からいきなり50mほどの急登。その後、砂礫の緩やかな道になる。ガスが濃くなりホワイトアウトの状態。立ち止まり様子を見ていると一瞬頂上が見えた。やがて、小高い所に若一王子神社奥社が祀られていた。さらに下りぎみに10分ほど進むと三角点があった。帰りに『ライチョウがいる』の声。白い冬羽に黒の羽毛が混ざったライチョウが砂礫の上を歩いている。風は強く吹き雪も積もる地で、何を食べているのか丸々太っていた。
針ノ木雪渓の下りでは、前日の指導を思い出しながら下った。降っていた雪は下の方では雨に変わった。雨が降ると雪崩が怖い。スピードを出したいが、足が思うように出ない。でも、長時間の雪山歩行を無事終えてテント場に着いた。
テントでの食事はおいしい。話も弾んだ。「明日は帰るだけだから、ゆっくり寝ていましょう」と皆で決めて寝た。
5月5日(日)
テント場9:00-扇沢駐車場9:40~10:15=大垣
快晴の朝、5時前には外が明るくなり、小鳥がさえずりだしゆっくり眠ることはできなかった。テントを撤収し、共同装備を各々ザックに詰め出発。途中フキノトウを採りながらゆっくりと扇沢駐車場へと歩いた。
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