大垣山岳協会

白山を背に登る残雪の山・銀杏峯 2024.03.24

銀杏峯

【 一般山行 】 銀杏峯( 1440.61m 点名・北大雲 三等△ )福井県大野市宝慶寺 NT

 菜種梅雨最中の山行は決行か否かヤキモキさせられる。NHリーダー他メンバー日頃の善行よろしくほんの一日だけ北陸は雨を逃れた。残雪を踏んで白山を眺めた報告である。

<ルート図>
  • 日程:2024年3月24日(日)曇り
  • 参加者:L.NH、OH、OT、KM、ST、TM、TS、TK、NT、MY、YH、YC
  • 行程:駐車地7:11-登山口7:26-仁王松8:33-前山9:43-銀杏峯山頂11:04~53-前山12:28-登山口13:59-駐車地14:03
  • 地理院地図2.5万図:寶慶寺

 嘗て「いこいの森」登山口まで除雪をしていたのだが宝慶寺参道手前の分岐で車を降りた。昨日降ったばかり、水分を多く含んだ10㎝ほどの雪を踏んで先ずは登山口を目指した。

 名松新道登山口まで15分ほど車道を歩くと汗が噴き出てここで一枚脱いだ。今日は風もなく暖かくて登山口の急登は雪が溶け泥土が出ており帰りの靴の汚れが気になった。

 小葉谷から延びて来た林道に出合った所で最初の休憩を取った。太陽は出ていないが暖かく素手でも指が冷たくない。ここから本格的な雪道となった。

 若者の早足に着いて行くのが辛くなった頃に2度目の休憩合図が有りヤレヤレアゴを出さずに済んだとザックを降ろした。此処でも一枚脱いで薄着で山頂を目指すメンバー。

 少し下に「羽衣の松」と書かれた看板が有ったが既に枯れていた。この「仁王の松」と書かれた立派な松は太い幹をくねらせ左右に枝を広げて伸ばしていた。東大寺南大門運慶作の「吽形」のような迫力と威厳を感じ上手い名付けと感心した。

 水分を多く含んだ春の雪は先行者に踏まれて堅かった。斜面の踏み跡を忠実に辿るとツボ足でも踏み抜きはなかったが時折右に左に蛇行して距離の無駄が多いとぼやいた。しかし、最初にトレースをつけた苦労に文句を言ったら罰が当たる。

 ブナの森を抜け急斜面を息を切らして登る。時折、踏み抜きで高くなった足場に体力を奪われ辛い時間帯であった。周りの木々が小さくなって見通しが利くようになると前山が近いと自分に奮起を促した。

 振り返ると大野盆地を雲海が包んでいた。背後の荒島岳から別山、白山、赤兎、経ヶ岳へと続く銀嶺が屏風のように大野の盆地を囲んでいた。前山は最高の見晴らし台だ。

 ツボ足だとトレースを忠実に辿らねばならず、急斜面の踏み抜きは足場が高く股関節が固くなった老人には辛かった。蛇行の多いトレースにもウンザリしていたので前山山頂でワカンを履いた。これで最短コースを自分達で拓ける。

 時々晴れ間が覗き陽射しを期待したのだが直ぐに雲に覆われた。それでも気温は高めのようで素手でいても冷たくない。肌着にTシャツ4月の山に居るような温かさであった。

 例年の降雪なら此の付近は雪庇が発達して残っていそうだが今年は異常な寡雪、既に落ちて変化の乏しい普通の雪尾根であった。

 前山で荒島岳の右奥に白い山塊が見えていたが特定できなかった。高度を稼ぐとその右に御嶽山が見えて乗鞍岳と判断が出来た。と、いうことは荒島の左奥のギザギザの山は穂高である。雪尾根両脇のブナの芽が赤く色づいて膨らんでいた。

 疲れて立ち休憩の合間に振り返ると大野の盆地を隠していた雲海が消えていた。三ノ峰から別山、白山が一つの山塊となって広い裾野を東と西に延ばしている。絶景がしばし疲れを忘れさせてくれた。

 傾斜が落ちて木々がまばらになり雪が締まってきた。斜面のザラメ雪とは全く違って雪が軽い、今日は無風だが普段は風が抜けているのであろう。山頂は近い、最後の一頑張りと気合を入れた。

 風が雪煙を舞い上げて通った跡が浅い紋様の雪面を造っていた。その先に部子山が真っ白い山頂を天に向けている。今日の計画では部子山には行かないがいい山だ。

 荒島岳、白山をバックに集合写真を撮った。奥美濃の山々は反対方向の南に白い帯となっていた。普段我々が岐阜から見るのとは逆方向で山名を特定するのが難しい、だが屏風山だけは反対の福井側からでも三角錐の山容で目立っていた。

 山頂北側の平地で約50分のランチタイムを和やかに過ごした。気が付けば輪の中にリーダーがいない、彼は食事を短縮して下山予定の小葉谷ルートを偵察に行っており帰って来ると下山計画を変更し名松新道を引き返すと告げた。これまで2度、部子山まで足を延ばした折に小葉谷左岸尾根を1294m峰から下っているが350mの急下降が有り雪のクラストによってはピッケル、アイゼンなしで下れない傾斜であった。地形図を見れば右岸尾根には夏道があるがやはり200mほど急下降があって当然道は雪の下である。今日のメンバーは軽アイゼンにストックでピッケルは持っていない。彼等の装備と技術を鑑みればリーダーの判断は賢明であろう。白山を眺めて各々往路を引き返した。

 報道によれば相変わらず山の事故が絶えない。伊吹山の事故などは「登山禁止区域」内の事故で「それ見たことか」と言われそうで山屋として肩身が狭い。安易に山に行く者等いるわけはないが基礎知識や登山技術の習得は登山者の義務と努めていただきたい。

 この3月から今年度の計画がスタートしたが遠距離の山行が多い。早朝の集合や出発となるが安全運転と安全登山を心がけよう。完


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