大垣山岳協会

山考雑記 美林・迷走・掘削帯 神崎尾根歩きに学ぶ 2022.08.22

点名・神崎

 勘違いから2時間も道間違い。尾根と沢をさまよい、苦労の末に正コース戻った。山中で不確かな光景を見て勝手な解釈をして迷走。過去にも何度もある勘違いミス。原理原則をおろそかにしたためだ。岐阜県山県市の神崎─伊往戸の尾根歩き。でも有益な寄り道であった。加えて樹林の美景にも恵まれた。

【 個人山行 】 神崎尾根 点名・神崎( 581m Ⅲ△ ) 鈴木 正昭

  • 日程:2022年8月22日(月)
  • 参加者:鈴木正(単独)
  • 行程:自宅6:00⇒中央道小牧東IC⇒東海環状道⇒東海北陸道美濃IC⇒国道418号⇒谷合⇒県道200号⇒7:30神崎・禰宜橋たもとの空地で駐車(岐阜県山県市神崎)
    駐車地発(標高約200m)7:50→8:05神崎白髭神社→9:50点名神崎(Ⅲ△581m)10:20→11:25大倒木帯→12:00・P612m→12:10南西尾根降下開始(コースミス)→小さな沢→引き返し→14:10正コースに復帰→14:25・P541m→14:35石灰掘削現場最上部→工事道路→15:10伊往戸(いおど)⇒15:40駐車地
  • 地理院地図 2.5万図:谷合

 武儀川の支流、神崎川は神崎の中心部からそのまた支流、円原川を分ける。その二つの川の間の尾根を忠実に伝い二つの三角点、点名神崎と一ツ石(684mⅢ△)を極めようと、神原・白髭神社(写真①)の裏のスギ林を登り始めた。神社までの神崎中心部は古い家屋がぎっしり軒を連ねるが、ほとんど無住らしい。尾根道の様子を聞こうとしたが聞く人は皆無だった。

写真① 神原・白髭神社

 神社裏の急斜面は樹齢60年以上のスギの人工林。手入れがよく、明るい日差しが嬉しいが、間伐木が散在している。明確な踏み跡が続く。少しして、苔むした石垣が現れその上に小振りな石壁造りの穴が現れた。炭焼きなのか資材置き場なのか。かつて山仕事の盛んな時代の遺物だろう。

 石垣から少し北でスギ林は消えてカシ類の照葉樹林やアカマツの大木の下、荒れた低木帯を潜り抜けて、突然茶色の腐葉土が広がるピークに達した。真ん中に点名神崎の標石が座っていた(写真②)。セミの鳴き声がうるさい程。腰を下ろして小休止するうち、左足ふくらはぎに痛がゆさ。ズボンをまくると丸いヒル君が食い込んでいる。持参のディート液スプレーをかけるとポトリと地面に落ちた。結局右足も含めて4匹に献血していた。

写真② 点名・神崎 標石

 慌てて歩き出す。シイ、カシ類の大木が青い葉を満載して空を覆う。踏み跡の全くない広い尾根筋。茶色の地肌と緑葉の色合いを楽しみながら進む(写真③)。林内の足元に小さな白い花をつけたマツカゼソウ(ミカン科)の枝葉が微風にそよいでいた。高度を100mほど上げると、広い丘上にスギの倒木が累々と折り重なる難場に踏み込んでしまった。苦労して脱出し、方向を西に変える。小さなコルを過ぎて、スギの壮齢林の薄暗い尾根を進むと、幹に白色の?マークが記されたスギが薄い踏み跡沿いに続いている。マークの下に「江川」「うの」などの名前のある木もあった(写真④)。きっと人工林の所有者の名だろう。

写真③ 踏み跡の全くない広い尾根筋
写真④ 白色の?マークが記されたスギ

 白ペンキマークのスギはP612mを過ぎても続いた。これらは、目指す主稜尾根上に並んでいるもと私は推量した。山林所有境界は主尾根にあるはずだと。なんの根拠もない勘違いだった。ペンキマークはP612mから200mほど北に進んだ位置から南東側の枝尾根を下りだし、私もそれに従った(写真⑤=下り初めて20分後。白ペンキ以外に黄色ペンキ印も加わる)ここで、コンパスで方位確認すればミスを防げた。マークを追って高度を130mほど下げた枝沢でやっとミスに気付く。急な泥斜面を登り、下った枝尾根に戻り正コースに戻った。

写真⑤

 全身汗びっしょり。点名神崎以降、断続的に雨が降り雨具を着けたり外したりした。順調に主尾根を下り、P541mを過ぎると前方から大型重機が土石を削るような轟音が聞こえ、尾根の東側に茶色の土砂むき出しの沢がちらちら見える。やがてスギ林の尾根筋は消えて広大な掘削現場に出た。巨大な掘削重機が1台動いていた。

 実は地理院地図には尾根西側下部に石灰鉱山の記載がある。かつて下部を走る県道から何度も巨大な掘削斜面を目にしていた。ただ、地図を見ると標高約600mのこの位置まで掘り上げていることは予想できなかった。

 重機の東側の尾根を登れば30分ほどでもう一つの目標、点名一ツ石に達するだろう(写真⑥=樹林から採掘場に出た位置から。右尾根上に一ツ石)。重機に近づいて、道の様子を聞こうとした。そこへ、下から小型作業車が上がって来た。若い運転手はここは危険だから進入禁止だ、下まで乗せてゆくから乗れとおっしゃる。迷った。断って一ツ石に登ることも出来た。時間的な余裕もあった。ただ、雨が降る心配は強かった。大事を取って結局、求めに応じて同乗することにした。採掘現場は新鉱工業(本社東京)の美山鉱山。ガラスやセメント原料のドロマイトを50年以上前から採掘している。

写真⑥

 赤茶けた工事道路をうねうねと下って鉱山事務所前についた。ここ伊往戸地区には知り合いのNKさんが住んでいる。2016年にここから奥のクラソ明神(1023m)に登った際にお世話になった。是非、氏を訪ねたかった。運転手に尋ねるとすぐそこだと自宅を案内してくれた。ひと時の歓談の後、氏の好意に甘えて車で駐車地まで送っていただいた。

 氏は伊往戸から派生する白岩谷を4㎞上がった白岩集落に住んでいた。当時16戸あった。1970年に過疎地の集落再編事業により集団離村し、伊往戸に移住した。その伊往戸も当時30戸あったが、今は4戸に減った。一方神崎の中心集落は120~130戸あったが、今30余戸に減ったと氏は嘆く。生活を支えていた仕事がなくなり、下流市部に転居したという。

 歩いた尾根筋には立派なスギの大木が林立していた。豊富な森林資源が放置された姿を目にして、これらを出材する事業を創出できないのだろうか。山間地の人々の生活を維持するためにも妙案良策を求めたい。

 一方でスギの幹の白ペンキに騙されたのはなぜだろう。単なる樹木の所有を示す符号。それが主稜線を示すものと勘違いした。勘違いの発生原は何か。人工的なものが皆無な環境のなかに人工物を見つけるとそれに引き込まれ、自分に都合の良い印と解釈してしまう深層心理が働くのだろうか。いずれにせよ、間違いに気が付くのが遅すぎた。でも今後の活動に有益な体験であったと考えよう。完

<ルート図>

発信:8/26

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