大垣山岳協会

2G+2Bの御在所山・本谷ルート(一の谷) 2025.10.09

御在所岳

【個人山行】鈴鹿・御在所山本谷ルート(一の谷)  三重県菰野町 NT

 50年前、青春時代の週末は籐内壁通い三昧の日々を過ごしていた。しかし、一の谷へ足を向けたことは無く本谷ルートの存在すら知らなかった。今年一般山行で9月20日に本谷ルートが計画されたが雨で流れた。週日に暇を持て余す2爺と2美女が9月30日に挑んだが上部でルートを踏み外した。小生は一の谷を遡行した、既存ルートのトレースより価値が有るとしてOKと判断したのだが他のメンバーは本谷を「大黒岩迄トレース」せねば登ったと言えずと不満タラタラ、止む無く再チャレンジした報告である。

<ルート図>
  • 日程:2025年9月30日(火)、10月9日(木)  天候 両日共晴れ
  • 参加者:L.NT、OS、MT、WY
  • 行程:(10/9) 一の谷山荘8:25 一の谷入渓8:30 不動滝9:01 ジョーズ岩10:22 大黒岩11:03~40 一の谷山荘13:26
  • 地理院地図2.5万図:御在所山


 一の谷山荘裏の廃屋前を通り過ぎると山道への入口に「危険」「自己責任」の看板が有り、山登りが自己責任であるのは当たり前だと自身に言い聞かせ、全員納得して入渓した。

 入渓するや次々に現れる大石を格好のテスト岩に見立てフリークライム、乾いた岩が身体のほぐしとバランスの練習に最適だった。

 沢靴を持参していたなら登りたくなるような手頃な滝が次々に現れる。水量も多くないので夏の盛りに沢芯を登れば気持ちの良い初級沢登りが楽しめるだろう。

 滝の右壁に斜上するクラックにルートを求める。滑って外傾したスタンスに神経を集中する、クラック沿いの小さなホールドに指先をかけて越すと滝上に出た。

 階段状の滝の上に綺麗な滑滝が現れた。沢芯を流れる谷水が伸ばした腕ではねシャワーとなり顔や衣服を濡らす、暑い盛りの沢登りのワンシーンを想像するだけで楽しい。この谷の下部は沢靴、カラ谷となって以降は登山靴で登れば楽しさは倍加するだろう。

 谷が狭くなって捲き道を登っていると先行者が谷からトラバースして来た。「不動滝」と呼ばれる見事な滝が有るというので谷へ下りて見物することに、チェックストーンが詰まった20mほどの見事な滝、水量が多ければ豪快な滝が見られたはずだ。ルートに出来そうな弱点を目で追い残置ハーケンを捜したが発見できなかった。

 大岩が並列した凹角からスラブに移りフリクションを効かせて登る。見事なバランスで登り切るW嬢、安心してみていられる。この分だと今日はザイルは不要だろう。

 標高780m辺りで先日直登して間違えた谷をやり過ごした。ルートらしくない狭く小さい谷へ入り休憩中の先行者を抜いた。濡れた岩を敬遠し踏み跡を追っていると先ほど抜いた後続者から本谷ならルートから外れると指摘された。敬遠した濡れ岩が正規ルートだった。

 前回、鷹見岩へ抜けたルートには大岩の穴潜りがなく本谷を登ったことにはならぬと1G+2Bのクレームとなった。それに「垂壁の梯子」もあるはずと・・・それで再登となったのだが、潜り穴が有るのは此の大岩のことらしくネットでは「ジョーズ岩」と紹介されていた。既存ルート、他人の軌跡の追跡は好きではないが前回の失敗に少しは事前勉強をした。

 大岩の下に潜り穴が有るようだが右側のフェースがすっきりしており此れを登った。3mほどの垂壁の階段状のスタンスを追うと傾斜が落ちてスラブ状の一枚岩となった。高度感は有るがバランスクライミングで越えた。

 どうやらあれが最後の障壁のようだ。ジョーズ岩の潜り岩穴を確認するのを忘れたが此の大岩の下は潜れそうになかった。やはり先ほどの大岩がジョーズ岩に間違いない。

 尾根を抜ける強風が谷まで届き暑さは感じなかったが、急傾斜のガラ場の登高は辛くヘロヘロだ。味気ない花崗岩の谷を飾るダイモンジソウの白い小花が可憐で気を紛らわせた。

 振り返るとV字谷の眼下にロープウェイの鉄塔と菰野町から続く四日市市街、その先のコンビナート群と伊勢湾が眺められた。

 見上げると山上公園駅と山頂台地東面の岩壁群が青い空に浮かんでいる。今日は強風が吹き抜けておりロープウェイが休業らしくゴンドラは動いていなかった。

 山上公園駅舎の100mほど下で休憩した。足元にはロープウェイのパーツが転がっていた。岩場からは水が滲み出ており清水を四角い器に溜めているようだったが駅舎の生活水で汚染されていそうなイメージが湧いて飲む気は起きなかった。

 休憩地点はロープウェイの点検道と山上公園への直登道、大黒岩へ続く道への三叉路分岐で有った。左手尾根の急な岩斜面に30㎜ほどの太いロープがセットされており追った。

 休憩場所からものの5分で「大黒岩」に出た。3mほど岩を登って東側に回り込み進むと御在所山上公園から四日市市街、伊勢湾を見下ろす絶景の展望台だった。ところでMとOが本谷ルート上に有ると主張した「垂壁の梯子」はついに出て来なかった。おそらくロープウェイの点検道に在るものを勘違いしたと思われる。

 南に鎌ヶ岳が槍のような鋭い穂先で天を指し、西に琵琶湖と伊勢湾の分水嶺となる稜線が雨乞岳へと続いていた。絶景を独占する贅沢な岩棚で最高のランチタイムを過ごした。

 本谷の再登は一向に苦にならなかったが「一の谷新道」の下山路を二度も歩くのは気が重かった。花崗岩独特の風化した急傾斜の荒れ道とむき出しの木の根、高齢者に罠を仕掛ける冷淡な悪魔の道に思えた。木の根に足を取られぬ用心で始終気が抜けない疲れる道だった。

 先日、下山路に使用してコリゴリ、二度と歩きたくないと思った「一の谷新道」で有るが2回目となると割とスムーズに早く感じた。やはり慣れと気持ちの持ちようだ。「松茸岩」を過ぎるとスカイラインを走る車のエンジン音が聞こえて駐車地の山荘は直ぐだった。山が早く終えたので「日暮れまで畑仕事でもするか」帰りの車中では軽口に花が咲いた。完

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