【個人山行】御在所岳前尾根 三重県菰野町 NH
- 日程:2025年6月7日(土) 曇時
- 参加者:NH SD ST NH
こんにちは!
今回は、2025年6月7日に挑戦した御在所岳前尾根での初マルチピッチクライミングの体験を、じっくりと振り返ってみたいと思います。
初めてのマルチピッチー期待と不安が入り混じる朝
この日、三重県にある名峰・御在所岳の登山口に立った私は、これから始まる未知の体験に胸を高鳴らせながらも、正直かなり緊張していました。
というのも、これまで登ってきたのは、ジムや近場のシングルピッチの岩場。いわゆる「マルチピッチ」と呼ばれる、複数のピッチ(区切られた登攀セクション)を繋いで登るクライミングは今回が初めてだったからです。

壁と向き合う時間-集中と緊張の連続
最初のピッチに取りついたとき、すでに岩壁は私にその存在感を見せつけてきました。
触れると少し湿った花崗岩の感触。手がかりはあるけれど、一つ一つのムーブには集中力が必要で、「ただ登る」だけでは済まされない、マルチピッチ特有の緊張感がそこにはありました。

ピッチを重ねるごとに、景色が変わっていきます。
振り返れば眼下に広がる鈴鹿の山並み、少し開けた岩棚で仲間とロープのやりとりをする瞬間、風の音、鳥のさえずり……。一つ一つの要素が、クライミングをただの「スポーツ」ではなく、「自然との対話」にしてくれるようでした。

気がつけば、「今、何ピッチ目だったっけ?」と分からなくなるほど、私の意識は「登ること」そのものに没頭していました。高度が増すにつれて足元がスカスカになる恐怖もありましたが、それ以上に「もっと上に行きたい」という気持ちが勝っていたのです。

目の前に現れた「ヤグラ」ー最大の難所
5ピッチ登りきった先に、ついにその姿が現れました。
御在所岳前尾根ルートの象徴的な岩塔**「ヤグラ」**です。

その姿は圧巻でした。
まるで空に向かって突き出すように立つヤグラは、自然が何万年もかけて創り出した彫刻のようで、登る者に最後の試練を与えるようにそびえ立っていました。
「これ、本当に登れるのか…?」
思わず呟いた言葉に、自分自身が最も驚いていたと思います。
でも、その時後ろから仲間が放ってくれたひと言。「大丈夫、いけるよ。」
その声と、しっかりとテンションがかかったロープの感触が、私の背中を押してくれました。

ヤグラの登攀は、まさにこの日のクライマックスでした。
指先でわずかなホールドを探し、慎重に足場を決め、そして、最後の一歩を踏み込む。手足は震え、息は上がり、心臓の鼓動が耳に響くほど…でも、その一歩の先にあったのは、見たことのない景色でした。
頂上で味わった達成感と感謝
ヤグラの頂に立った瞬間、言葉にならない感情が一気にあふれてきました。
澄み切った空、遠くに霞む山々、眼下に見えるクライミングルート。そして何より、隣に立つ仲間の笑顔。
「やりきった」という達成感と、「ここまで来られた」という感謝が、体中を満たしていきました。
この経験を通して強く感じたのは、「一緒に登ってくれる人の存在の大きさ」です。
的確なビレイ、タイミングよくかけてくれる声かけ、不安なときのアイコンタクト。クライミングは個人の力も必要だけれど、やっぱりチームで登るスポーツなんだと、改めて実感しました。

御在所岳で得たもの??自然と向き合う時間の尊さ
今回の挑戦は、私にとって本当に大きな一歩でした。
自然の厳しさと美しさ、クライミングの奥深さ、そして人とのつながりの温かさ。
そのすべてが凝縮された一日だったと思います。
次はもっと余裕をもって、景色もゆっくり楽しめるようになりたい。
登るだけで精一杯だった今日から、次は周りを見渡す余裕を持てる自分へ。そんなステップアップを目指して、また岩に向き合っていきたいと思います。
最後に
御在所岳の岩場は、想像を遥かに超える魅力に満ちていました。
もし、これからマルチピッチに挑戦してみたいと思っている方がいたら、ぜひ一度この地を訪れてみてください。きっと、新たな自分と出会えるはずです。
それではまた、次の山行で!
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