【 個人山行 】 ブンゲン( 射能山 1259.7m Ⅲ等△ 点名・大岩谷 ) 揖斐川町春日美束字品又 NT
当初計画では日越峠から主稜線経由で県境の1230m峰を経てブンゲンを目指す予定だった。しかし現地を見て日越峠へ至る谷の左岸尾根に残る廃道から1230m峰を目指すことにした。標高1100mから先に道はないが本格的な芽吹き前でヤブは薄いと判断したが思わぬ苦戦を強いられた。シャクナゲのヤブは手強かったが久方ぶりのお花見は見応えが有った。

- 日程:2025年5月3日(土) 天候 晴れ
- 参加者:NT(単独)
- 行程:品又林道貝月山登山口ゲート9:21-日越峠主尾根合流11:38-県境1230m峰11:45-品又峠スキーコース合流12:07-ブンゲン山頂12:45~13:20-品又峠14:23-品又林道貝月山登山口ゲート15:13
- 地理院地図 2.5万図:横山
駐車地で地形図に記載の有る尾根道を確認して気が変わった。バンガロー村跡から日越峠へ続く舗装道路は何度か歩いており興味は薄かった。尾根は真っ直ぐ南の県境へ延びており距離も短くて済む、何より未知の尾根への期待が強かった。

道はほとんど廃道状態で今冬の雪で押さえられた樹木や枯枝が道を塞いでいた。木階段は所々腐食しているが歩行に支障はなかった。バンガロー村の遊歩道だったのだろう。

今年のシャクナゲの花は裏年のようで何処の山でも花芽を見ることが稀であった。尾根で赤い花を遠目に見た時はシャクナゲ・・・?近くで見るまで疑っていた。

花ビラが開いて未だ日が浅いようで赤色が濃くて綺麗であった。登り出してまだ20分ほどだが周辺は花見が出来るほどシャクナゲが群生していた。バンガロー村利用者のシャクナゲお花見コースの遊歩道だったのかもしれない。

シャクナゲの群落を抜けると廃道脇に大きなブナが現れ腐食した木階段が上へ導く、東面の対岸には貝月山が終始見えており整備すれば貝月への登路となるだろう。

高度を稼ぐ毎に木々が細くなり枯れ木と共に冬の雪に倒されて起き上がれず登路を塞ぐ個所が多くなった。見通しが利くので樹木の隙間を縫うように歩いた。

廃歩道は標高1050m辺りで日越峠へのトラバース分岐を過ぎても未だ尾根上へ続いた。
このまま日越峠から来る主稜線まで行くかと思う間なく道は消えて藪漕ぎとなった。芽出し前なので見通しは利くが腰の剣ナタやカメラの紐、ストック、ザックが引っかかり辛かった。
大きなブナが有る平地に着くとヤブが消えたのでザックを投げ出し休憩した。

ブナの幹を確認すると熊が上り下りした爪痕がびっしり残されており爆竹を鳴らした。

ブナの高木は4~5本程度でそれを過ぎると直ぐに低木株の立木帯となった。行く手にシャクナゲが現れたが顔より低かったので薄い所を狙って突っ込んだ。しかしヤブは直ぐに背丈を越えて株立ちの幹を足場にする等して越えた。久方ぶりの本格藪漕ぎは体力を奪った。

それでもこのようなご褒美に出遭えると疲れと時を忘れてシャッターを押すのだった。

ヤブはシャクナゲとイヌツゲ、リョウブ等の低木で根曲がり竹が無い分ソコソコ見通しが利いた。灌木に根曲がり竹が混成すると濃密な激藪となって最悪だがそれは免れた。

シャクナゲのジャングルでお花見となった。これは少し赤みが薄いようだ。残念だがあっちこっち動き回れず目の前の花しか撮影できない。

今冬は積雪が多くて獣の餌事情が悪かったようだ。シカと思われるが食害にあって骨だけになったシャクナゲ、なりふり構っておられなかったのか葉が全て食べられていた。

行く手にブナに覆われた日越峠からの主稜線が近くなって来た。高木のブナ林の林床は日光不足で低木が育ちにくくヤブは薄いはずだ。シャクナゲの密林は既に突破して少し楽になっていた。あそこまで行けば藪漕ぎから解放される、気合を入れて芽出し前の枝を分けた。

標高1170mで日越峠からの主稜線に合流した。合流点付近は立ち木が大きくなってヤブは消え此処で赤い目印を見付けた。踏み跡が北の日越峠の方から来ており県境の1230m峰の斜面に続いていた。これまでなかった笹が出て来たが斜面は笹枯れでヤブは消えた。

朝の取り付きから対岸に絶えず貝月山を見て稼いだ高度の目当てにしていた。県境に着いて振り返ると日越峠を挟んで見る貝月は大きくて格好いい山だと気付かされた。

揖斐の山々はすっかり雪が消え芽吹き前の山肌が黒い。北の能郷白山は未だ雪を残すが黒い班が日に日に大きくなっているようだ。それでも白山は5月というのに未だ冬と変わらぬほど白い衣を纏っていた。

1230m峰から県境はS字にカーブして西に向かった。地形が非常に複雑で尾根の峰を外さぬよう用心して片手の地形図が仕舞えなかった。ブナ林の中は低木が少なくヤブは気にならぬほど薄く歩きやすかったが太い幹には熊の爪痕も多く油断は出来なかった。

品又峠から来るスキー場コースに合流した。歩行中の高みからリフト終点の塔が見えていたがそちらに誘われると遠回りとなる。浅い谷が入り込むと複雑な県境尾根は読図練習に最適なフィールドだった。県境着が12時を過ぎていたが此処まで来れば山頂は近い。

スキー場施設から来ている2本目のリフト終点を横目に見て尾根を下ると西へ降りるスキーコースと別れた。よく踏まれた県境稜線上の登山道をブンゲン山頂目指して南へ進むと伊吹山が北尾根を従えて大きな山容で霞んでいた。

山頂に立つとスキーシーズンを終えてモーターパークに衣替えした施設からエンジン音が聞こえて来た。ゴールデンウィークの最中、若者で賑わっているのだろう。三角点石柱から少し離れたリョウブの幹に真新しい山名板が括られていた。奥美濃の山も愛好者が増えた証だ。乾いた枯れすすきに尻を下ろすと風が消え5月の陽光が降り注いだ。景色を眺め長閑なランチタイムを過ごした。既にエンジン音は耳から消えて静かな山頂を満喫した。

当会のゴールデンウィーク山行は南アの鳳凰三山であるが若者との体力差に迷惑をかけてはと断念した。彼等の登山を気にしつつ久方ぶりに連休を家で過した。しかし晴天に家に居ると落ち着かず体力の低下も気になって近場の山に足が向く。ブンゲンは今回で7度目だ。能郷白山や伊吹、冠ならともかく地形図に山名も記載されてもいない地味な山で特段の思い入れもないのだが・・・とはいえ今日のルート、藪漕ぎは辛かったが予期せぬシャクナゲの花見に興奮した。奥美濃の人の目に触れぬ尾根では時にこういう発見が有る。完
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