大垣山岳協会

飛騨アルプスを眺める・輝山 2025.03.23

輝山

【 一般山行 】 輝山 ( 2063.4m 点名・貝塩Ⅱ等△ ) 高山市重ヶ根字カイシオ NT

 当会3月の一般山行はスキー班とワカン歩行班を編成して平湯峠北の輝山で行われた。当日は暖かく穏やかな天候に恵まれ乗鞍、穂高、笠ヶ岳等の飛騨のアルプスを眺めた。

  • 日程:2025年3月23日(日) 天候 晴れ
  • 参加者:ワカン班 L.NT、IK、OS、KM、KT、TS、TK、MY、EY
    スキー班 L.HT、ST、NH
  • 行程:ワカン班 スカイライン口7:00-平湯峠8:10-輝山10:49~11:49-P1975m南西尾根分岐12:42-スカイライン一の谷橋13:45-スカイライン口14:08
  • 地理院地図2.5万図:焼岳

 国道158号乗鞍スカイライン分岐の膨らみに駐車、ワカンを装着しスカイラインの厚い雪の上を歩いたが国道の上部進入口から上が除雪されており慌ててワカンを外した。

 計画ではP1975m南西尾根を登る予定で有ったがスカイラインが除雪されており、平湯峠から北の輝山山頂へ延びる尾根へ計画を変更し雪壁を越えた。

(写真 NY 提供)

 峠で道路から斜面へ上がりワカンを再装着し乗鞍を眺めて休憩しているとスキー班が尾根の上からエール送って来た。ちっとも来ないと思っていたが道路のカーブをショートカットし下の斜面から取り付いたのだろう、先を越されていた。

 尾根に上がるとダケカンバの10㎝ほどの幹が林立する雪面に先行したスキー班のシール登行の跡を見つけた。オオシラビソとコメツガの林の中で休憩中の彼等と合流した。

 スキー班はP1975mを東面から捲いて1940mのコルを目指すと言い先行した。我々ワカン班も彼等の後を追った。ダケカンバの斜面でアイスバーンだった雪はオオシラビソ等針葉樹の林に入ると柔らかい雪に変わっていた。

 P1975mの上部斜面は近くなると傾斜を増して東側斜面中腹に雪崩後のデブリが確認出来た。スキー班に技術も体力も劣る我々は後を追うのを止めた。左上に主尾根のラインが見えたので緩傾斜を求めてラッセルを交代した。

 P1975mが近くなるといよいよ傾斜が増し山頂への抜け出しは新雪の下に亀裂が走っていた。最後尾から追いかけると弱点を求めて左へトラバースして緩傾斜へ逃げていた。上手なルート選択に成長の証を見て安心した。本日一番しんどい斜面に背後の乗鞍へ続く峰の絶景を振り返るゆとりがなかった。

 P1975m山頂手前で当初予定していた南西尾根から登って来ているトレースと出合った。帰りはスカイライン歩行を最短にしようと南西尾根を下ると決めた。

(写真 NY 提供)

 白谷山から焼岳、穂高の峰が重なって見える。天気は上々なのだが気温の上昇で春霞が湧いて焼岳奥の山名の特定を難しくしていた。

 大木場ノ辻から笠ヶ岳、抜戸岳、弓折岳から槍ヶ岳への主稜線と蒲田川左俣のカールが見える。槍ヶ岳は春霞が邪魔をしてか確認出来なかった。

 ダケカンバの林からオオシラビソの林の斜面を登る。陽射しを受け雪が柔らかくなっており時折ワカンが埋まる。山頂へ最後の登りと言い聞かせて気合を入れた。

 スキー班が先に到着し待っていてくれた。オオシラビソの木々に囲まれて展望の効かない山頂は陽射しが届いていない。三角点は深い雪の下で山名板が二つ幹に括られていた。

(写真 NY 提供)

 陽当たりを求めて山頂から南西に5分ほど歩くと南の展望が開けて乗鞍が正面に見えた。乗鞍岳の大きな山体と雪山に魅了されしばし見とれた。

 スキー場のゲレンデのような春の陽光が降り注ぐ陽だまりの斜面は最高のランチタイム場所を提供した。乗鞍の山座同定に花が咲き丸黒山が特定出来るとNH達と往復した千町尾根の景色が甦った。昼なお暗い原生林や雪原に点在する大シラビソ、雪解けで顔を出した石仏、一夜を過ごした避難小屋等々懐かしく思い出した。

 実は我々が腰を下ろしてランチタイムを過ごした場所は2017年9月に私的に取り組んだ「岐阜県のⅠ等、Ⅱ等三角点調査」でルートにした尾根であった。当時の写真を見ると草原の趣だが実際は背丈を越える深い笹薮で中々手強かった。それが全て雪原の下であった。

 北に飛騨アルプスの名峰笠ヶ岳が臨める場所で集合写真を撮った。笠ヶ岳は他県と境界を有しない岐阜県の最高峰で先日1m標高が縮んだと新聞で知った。

 山頂でスキー班にP1975mからは南西尾根を下ると知らせ別かれた。1時間遅れて出ても駐車地へは彼等が早く着くと思われた。南西尾根のトレースは明瞭でそれを追った。

 地形図によれば急斜面下降が2ヶ所ほど予測されたが樹林帯で有り大丈夫と思われた。だが踏み跡は自分達が予測した所へ100%向かうとは限らずコンパスでの方向確認と尾根芯(峰)を外さぬ用心が必要だ。そして土地勘のない山の下山ではパーティーがバラバラ(離れ離れ)に絶対にならない。事故のほとんどは下山に起きていると申し合わせた。

 下降中の不安は道路への降り口であった。除雪された道路の雪壁は高い所だと3mを越えていた。地形図では判断できず道路を下に見て安全な下降場所を捜すと谷へ向かって緩斜面が続き、その先の雪壁もガードレールほどの高さでヤレヤレこれで終わった。

 のんびり春の陽射しを浴びて開通前のスカイラインを歩き駐車地に着いた。スキー班は当然先に着いており待ちあぐねただろう。

 今回、P1975mの下降から南西尾根のトレースを追って支障なく下山したのだが注意点を述べておきたい。

  1. トレースの主の技術と知識が自分達と同じレベルとは限らない。彼等が通過出来たからと言って我々が通過できるとは限らないことを先ず自覚する。
  2. トレースや目印が自分達の目指す所と100%一緒とは限らず鵜呑みにして突っ走らない。要所で必ず地形図、コンパスで確認する。
  3. 尾根では藪や岩、大木など障害物で尾根芯(峰)を外さざるを得ない場合も有るが、絶えず尾根の峰を意識し障害物を越したら速やかに尾根芯へ復帰する。
  4. 尾根の側面は急傾斜地となっていることが多く事故はトラバース中が多い、出来る限り尾根芯を歩く。
  5. 支尾根に迷い込む失敗は尾根芯を外している時に発生しやすい。支尾根はやがて急傾斜や岩壁となって谷へ消える場合が多いことを知る。
  6. 事故は下降中が多い。土地勘のない山では先走りは絶対にしない(パーティー行動を遵守し離れ離れにならない)

**上記の事を絶えず自覚して安全な登山を心がけましょう。完


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