【 個人山行 】 貝月山( 1234m 点名・品又 Ⅱ等△ ) 揖斐川町坂内坂本字品又 NT
養老山、霊仙山に続き今冬3度目の雪山レッスンを貝月山で行った。今回は傾斜地でのアイゼン歩行とピッケルワークの練習が目的で行った。天気に恵まれ上々の成果であった。

- 日程:2025年3月10日(月) 天候 快晴
- 参加者:NT、HT、WY
- 行程:キャンプ場駐車地7:35-小貝月10:20-貝月山11:02~48-駐車地14:06
- 地理院地図2.5万図:横山
スキー場跡の斜面は今朝方の冷え込みでカチカチに凍っていた。程よい斜面と堅い雪はアイゼンワークの練習に最適だ。アイゼンは山側に向かって着ける基本を必ず守る。

林道終点の避難小屋経由の道との合流点で最初の休憩、地形図で現在地を確認する。言わずとも地形図とコンパスで進行方向を確認するWY女史、上達のコツは吸収しようとする気持ちである。スキー場斜面で単独行者がGPSにコースを外れていると警告され不安になって近寄って来た。「冬山に道はなく自ら拓く、最短で登るのが基本です」と答えたが地形図を持たず続図の基本を知らない人への返答ではなかったと後で反省した。

このコースで唯一大量の降雪時に雪崩の危険が有る斜面をトラバースする。周りの立ち木がこの大きさに成長するまでは雪崩が起きた可能性は低いが油断してはならない。日中、斜面の樹々に纏わり成長したキノコ雪がブロック雪崩となることも有るのでトラバースは周辺をよく見て迅速に通過する。

トラバースの斜面は立ち木が小さくて北と東の展望が開け奥美濃の山々が見えた。傾斜が落ちて安全と思われる所でシャッターを押した。先ず小津権現山、白バラの花房山と雷倉の小津三山が目を引いて北に蕎麦粒山、能郷白山、奥に純白の白山が目を虜にした。

朝の冷え込みは昨日の日中に緩んだ雪をアイスバーンにしてアイゼンの爪が小気味よく効いた。二人のアイゼンの爪が雪を噛む「キュッキュッ」という乾いた音が私の耳に安全を届けてくれている。

雪稜帯に出た。雪は多いが雪庇の張り出しは小さい。しかし、油断してはならない。必ず風上側の立ち木の位置を意識して風下側の雪庇には近付かない。踏み跡が有るからといって決して100%安全ではない。

左斜面に雪庇崩壊跡が、おそらく昨日の日中の気温の緩みで崩壊したと思われる。雪庇の張り出しとしては大きくはないし斜面の規模も小さいが油断してはならない。誤って踏み抜き落下の途中でブロックの下敷きになり圧死する事故は多い。

老いて気付いたが時に振り返り景色を眺めるゆとりが人を育てる。若い時代に目的のみに没頭し時に自己的で「思いやり」を置いてきぼりにした。一ツ岩を終えると次の目的地迄夜でも行動、景色を振り返る時間も惜しかった。当然着いて来る者は限られ組織は先細りとなった。今思えば「ひもじい登山」だったと反省しきり、振り返り景色を眺めよう。

小貝月山頂に到達すると360度の展望が開けてWY女史今冬3度目の雪山登山感動の声が聞こえて来た。御嶽山から北に乗鞍、穂高と北ア、純白の白山に魅せられたようだ。

小貝月から西に貝月山山頂の展望台が見えるが遠くて挫けそうになるが尾根歩きは遠くに見えても近い。小貝月の下りが少し急だがアイゼンをフラットに効かせて前傾姿勢で下る。気温の上昇で緩んで来た雪稜を辿り山頂を目指した。

国見峠から県境稜線を経て伊吹山がドカンと大きく存在感がある。山頂台地下の中腹を日本刀で横に払って出来たような白筋がドライブウェイである。伊吹北尾根登山道はドライブウェイ建設よりも歴史が古い。名鉄の経営時は登山者と意思が共有出来ていたのだが、現経営会社の登山者軽視の看板を見るたびに気分を害する。

小貝月が遠くなって斜面を40m上がるとヒノキとシャクナゲ群生地がある。そこから一旦少し下ると緩やかな登りのブナ林となる。踏み跡は高みを目指すが山頂下のコルを目指して堅い雪をトラバースし小さな雪庇を右に見て山頂へ上がった。

山頂の展望台デッキ前で記念写真を撮った。本日お付き合い願ったHT女史は両手の指では足らないほど登って見た景色であるがWY女史の歓びの声が嬉しい。

写真では旨く映っていなかったが恵那山から北に中央アの白い帯、御嶽山、乗鞍岳、穂高から北アが白い帯で少し離れた三角形は笠ヶ岳であろう。手前は小津権現山、花房山、雷倉の小津三山そこから離れてタンポ、西台山が確認出来た。

白山と別山が東の三方崩と南の石徹白への尾根を重複させ白い帯を延ばす、少し離れて白いのは人形山、三ヶ辻山、猿ヶ馬場山、御前岳、栗ヶ岳などが重なり見えているのだろう。白山の手前に能郷白山から岐福県境の山並み、若丸や冠は蕎麦粒山、五蛇池、天狗山が邪魔をして見えない。写真右手前は小津権現山、花房山、雷倉の小津三山である。

蕎麦粒山の背後に白く西に延びるのは冠山峠から金草岳の県境稜線で隣は釈迦嶺、少し離れ千回沢山と不動山、烏帽子山と高丸を結ぶ吊り尾根の背後にチョコンと美濃又丸山頂が頭を出している。高丸の左背後に三周ヶ岳、三国岳、上谷山と奥美濃の名山が続く、

ブンゲンからトラス、国見峠の先に国見山、御座峰と続く伊吹北尾根、お椀を伏せたような山容の伊吹山が王者の風格である。鈴鹿最北の霊仙山は伊吹に隠れて見えないが御池岳と藤原岳が黒く霞み養老山系と隣り合っていた。

山頂の高みから移動し南斜面をピッケルで削ってスノーベンチを作り日溜りの中でランチタイムを過ごした。ダウンは必要なく素手でも寒くなかった。背後のブッシュに邪魔されているが金糞岳が近くて大きく見えた。その南の品又峠越しに琵琶湖の湖岸線と対岸の高島トレイルの山並みが白く雪を載せて南へ延びていた。

実はWY女史とは2月17日に鈴鹿の霊仙山でワカン歩行訓練と無雪期と積雪期のルート取りの違いの実践レッスンを行った。積雪期は一歩でもラッセルの負担を軽減するため最短距離での直登(ルート図参照)が基本であることを実践した。生憎の天候で山頂は地吹雪状態で旨く写真が撮れなかった。貝月山の報告に合わせて掲載することにした。

養鱒場の駐車場ではポツポツ雨粒が落ちていたが止むのを待って出発した。5合目からは雪が切れ目なく続いたので林の中を最短距離で直登した。登って来た樹林が真下に見える。傾斜に負けない気力も大事だが急傾斜に慣れる為時折立ち止まって下を見た。

最短で山頂を目指し尾根へ取り付いたがホワイトアウトとなる。頼みは地形図とコンパスのみ、山頂手前のコブで「今ここですね」と地形図を見て指差した彼女の成長の証に大満足した。霊仙はいつ来ても風が強いがこの日は地吹雪で最悪だった。しかしGPSに頼らずとも地形図とコンパスを使いこなせば頂上に立てることを実証して見せた。小柄な彼女が飛ばされそうなほど吹き荒れる中での山頂撮影はこれが精一杯であった。

養老山、霊仙山、貝月山と着実に成長しており頼もしい。この23日は飛騨の輝山であるのでもしかして本格的なラッセル訓練となるかも。今季は残雪が豊富な様なので雪も遅くまであるだろう。成長した姿が楽しみだ。完
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